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第五百四十七話:謎の鍵

 ひとまず、封印されていた場所から、ありそうな場所を探ってみた。

 力が封印されていた場所は、この大陸だけではなかった。時には別大陸にあったこともあったし、この大陸だけにあるとは限らない。

 だから、何か傾向がないかと探ってみたんだけど、そんなものはなかった。

 偏っているところはめちゃくちゃ偏っていたし、全然ないところは全くと言っていいほどない、そんな感じである。

 これがゲームだとしたら、バランスを考えろと言われそうな配置だ。適当に打ち上げて、落ちた場所を封印の場所にした、と言われても納得してしまいそうである。

 仮にも俺の力なのだから、俺の行ったことのある場所にあるんじゃないかと色々回ってみたが、それらしい場所にもなにもなし。

 こうも見つからないとモヤモヤする。あるならある、ないならないとはっきりわかれば、もう少しやりようがあるんだが。


「ないですねぇ……」


『ほんとにそんな力あるんですか?』


「そのはずなんですけどね。どうにも、何かに隠されているような気がします」


 今まで雑に封印を置いていただけなのに、今更隠すのかと思わないでもないが、それほど重要な能力だったってことなんだろうか?

 ここまで見つからないとなると、隠されていると考えた方が自然だし、何か条件がないと辿り着けない場所にあるのかもしれない。


『なんだかやばそうなことになってるし、早く戻りたいんだけど……』


 俺はふと、画面の方を見る。

 画面には、なぜだか戦っているアリスの姿があった。

 経緯はよくわからないけど、不可侵条約を結んだはずの周辺諸国がまた攻めてきたらしい。

 堂々と条約破るとか頭どうかしてんじゃないかと思うけど、まあ、ヘスティア王国はそれだけのことをしてきたと言えばそうだし、仕方のないことなのかもしれない。

 俺でもない、ファーラーでもない謎の人格であるアリスは、何が何でも相手を倒したくないのか、直接当てることはせず、威嚇射撃ばかりを繰り返している。

 一応、それでも相手は退いてくれるが、しばらくすればまた攻めてくるので、行ったり来たりを繰り返している感じだ。

 恐らく、他の戦場でも同じような状態なのだろう。ヘスティア王国が今更相手を助けようとするとは思えないけど、多分、カインとかの指示なのかな?

 それでも、それだけ脅せば普通は退くと思うんだけど、もう結構な時間経っているはずなのに、一向に退く様子がない。

 このままだと、いずれ兵糧が尽きたり、武器が壊れたりして瓦解していくことになるだろう。

 俺が戻ったところで、この戦いを止められるかどうかはわからないけど、アリスのことだからこそ自分で何とかしないといけない気がする。

 だから、一刻も早く戻らなければならないのだ。


「アリス、何か思い至ることはないんですか? 自分の力でしょう?」


『そんなこと言われても……』


 自分の力とは言っても、所詮は借り物の力である。

 ゲームマスターと言う、そのシナリオにおいては神にも等しい力を借りているだけで、俺自身に何か力があるわけではない。

 そもそも、ゲームマスターの力は解釈によって色々変わる。人によっては、キャラ作成に色々口を出す人もいるだろうし、ルートの誘導が露骨な人だっているだろう。

 大本になる力は変わらないが、それをどう解釈するかは人に寄るのだ。

 そのあたりがどこまで採用されているのかわからない。俺の考えるものがそのまま採用されているのか、それとも公式が定めているものなのか、あるいは、世間一般でそうだと言われているものなのか。

 だから、今まで使ってきたような、基本的な能力は別として、この力はあるはずだ、なんて断言はできないのである。


「ふーむ、ちょっと体を調べてもいいですか? 何かわかるかも」


『調べるって、何するんですか?』


「ちょっとしたボディチェックですよ。大丈夫です、痛いことはしませんから」


『え、ちょっ……』


 そう言って、クーリャは俺の体を撫でまわしてくる。

 光の玉となっている部分は主に心臓に近いのか、胸やらお腹やらを重点的に触られている気分だった。

 思わず逃げたくなったけど、クーリャは抱きしめるようにして逃がしてくれなかった。

 ほ、ほんとにボディチェックなんだよな? クーリャの姿が姿だけに、ちょっとドキドキしてくる。


「おや、これは……」


『な、何か見つかりましたか?』


「はい。これは、鍵、ですかね?」


 そう言って、クーリャは手に取った鍵を見せてくれた。

 銀色の小さな鍵。その鍵は、どこかで見覚えがある。

 確か、そう、霊峰ミストルから大穴に入った際に、みんなに合流する前に拾った鍵だ。

 誰かが落としていった謎の鍵。それがなぜ、こんなところにあるんだろう?


「見覚えはありますか?」


『一応……確か、心の扉を開く鍵、とかなんとか』


「なるほど?」


 クーリャはよくわかっていなさそうな顔で首を傾げている。

 まあ、俺にもなんのこっちゃではあるんだが。

 心の扉を開くってことは、人の前で捻ったりすればいいのか? そうすると、その人の心の内を覗けるとか?

 試しに、鍵を手に取って、鍵を開けるように捻ってみる。すると、ガチャリ、という音がした。


『え、ほんとに開いた?』


「うーん? あ、反応が増えてますね。場所も特定できます」


『どういうことですか?』


「よくわかりませんが、その鍵のおかげで隠されたベールが解かれたってことなんじゃないですか?」


 それはつまり、この異空間の隠された扉を開いたってことなんだろうか。

 心の扉を開くとは何だったのかと思わなくもないけど、この空間はファーラーが作ったものらしいし、ファーラーの心証を反映していると言っても過言ではない。

 であるなら、ファーラーの心を開いた結果、隠されたものが出てきたってことになるんだろうか?

 まあ、よくわからないけど、見つかったというなら行くだけである。

 俺はクーリャと共にその場所に向かう。しばらくして辿り着いたのは、最初に降り立った草原だった。


『またここに戻ってくることになるとは』


「なにやら階段ができてますね。あそこにあるんでしょうか?」


 草原には、一部が大きくくぼみ、その部分に下へと続く階段が出来上がっていた。

 雰囲気としては、ダンジョンの入り口と言う風にも見えなくはないが、魔物とか出てこないよな?

 一応、今ならクーリャが力を取り戻しているし、戦ってくれるなら戦闘になっても大丈夫そうではあるけど、なるべく戦いは避けたい。


「ひとまず、行くだけ行ってみましょうか?」


『まあ、せっかくここまで来たんだし、確認くらいはしましょうか』


 無駄かもしれないが、一応警戒しながら階段を降りていく。

 さて、変なものがなければいいのだが。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >今まで使ってきたような、基本的な能力は別として、この力はあるはずだ、なんて断言はできないのである  現実改変能力や創造力がありそうですけどねぇ。  ファンブルやクリティカル効果だってシナ…
[一言] いったい何なんだ……
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