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第五百十一話:最深部に待つのは

 その後も順調に進むことができた。

 出現する魔物は、普通に『スターダストファンタジー』をプレイしていたら相当やばい奴ばかりだったけど、今の俺達の敵ではない。

 たまに一撃で落とせない奴が出てきても、その時はカインが守ってくれるし、多少ダメージを受けてもシリウスが即座に回復してくれる。

 削られるリソースとしてはMPがあるけど、それもそこまで気にならないレベルだし、いざとなれば【ポーションクリエイト】でMPポーションを作ればいいだけだから何の問題もない。

 経験値のことだけを考えるなら、十分に育っているキャラならかなり美味しいダンジョンである。

 ただ、それは罠がなかったらの話だけどね。


「よし、解除できたの」


「お疲れさん。それにしても、罠多すぎないか?」


「仮に今の魔物のレベル帯が出てくる難易度だったとしても、多すぎるとは思うの」


 基本的に、罠はダンジョンの難易度によって設置される数が大体決まっている。

 簡単な罠とかならともかく、下手したら一撃死したり、重要な装備をロストしたりする可能性のある罠が大量にあったら、わざわざランダムダンジョンなんてする意味ないしね。

 一応、それを含めてシナリオにするという手もないわけではないけど、このTRPGの醍醐味は戦闘である。罠はあくまで添え物であり、それがメインになるようなことがあってはならないと思う。

 まあ、ダンジョンの罠で一気に窮地に陥るって言うのは確かにダンジョンらしいと言えばらしいけど、少なくとも俺はそれで全滅されたら興ざめなので、そんな危険な罠は配置したことはない。

 このダンジョンの所有者は、よっぽど先に進ませたくないんだろうな。そうでなきゃ、こんなに罠置かないだろう。


「経験値的には美味しいですが、これだと他のメンバーが動きにくいでしょうか?」


「うーん、【トラップサーチ】さえあれば大抵の罠は引っかかることはないと思うの。ただ、解除できるかは別だけど」


「罠解除できそうな奴って、誰がいる?」


「多分、クリーさん、センカさんあたりは行けそうな気がするの」


 罠解除判定は、器用と敏捷の値を参照する。だから、それらが高いキャラであれば、大抵は何とかなるだろう。

 ただ、判定を行う以上は、常にファンブルの可能性が付きまとう。確実に成功させたいなら、やっぱりお守りが必要になってくるだろうな。


「罠に関しては、後でクズハさんにお守りを作ってもらおうと思うの」


「それが一番確実か。ダイス振っているかはわからんが、振らないに越したことはないしな」


 一応、ファンブルするとわずかに経験値を得られるし、全く悪いことばかりでもないけどね。

 まあ、それでも失敗したら死ぬかもしれないってことを考えると、振って後悔するより、振らないで無難な選択を取った方がよっぽど堅実だと思うが。


「……と、ここが最深部か?」


「みたいなの」


 それから進むこと10階層ほど。入り口から数えて、20階層目に当たる部分で、道は途切れた。

 部屋の中央には、淡い輝きを放つ菱形の物体が宙に浮いている。

 恐らく、これがダンジョンコアなんだろう。

 周囲には本棚や机、ベッドなどがあり、何気に生活臭を感じることができるが、特に人は見当たらない様子。

 無人、いや、【ライフサーチ】には反応があるから、どこかに潜んでいるってことなんだろうな。

 状況的に考えて、多分このダンジョンコアを守るための最後の門番とか、そんな感じの奴がいるんだろう。

 別に、ダンジョンコアを破壊するつもりはないが、ここまで来てしまった以上、これ以上ダンジョンコアに近づけば、攻撃してくるのは目に見えている。

 どれ、ここは先手を打って見ようか。


「隠れてないで出てきたらどうなの?」


「……」


 返答はない。俺の言葉が聞こえていないのか、それとも警戒して出てこないのか。指摘されたからと言ってすぐに出てこないのは何となくプロ意識を感じる。

 まあ、門番だというなら、さっさと出てきてダンジョンコアの間に立ちはだかった方がいい気はするけどね。

 壊そうと思えば、ここから【ラピッドショット】で撃てば簡単に破壊できるだろうし。


「出て来たくないならそれでもいいけど、私達は別にダンジョンコアを破壊しに来たわけじゃないの。ただ、調査のために来ただけなの」


「……」


「このダンジョンの所有者がどういう意図でこのダンジョンを運営しているかは知らないけど、私達は今経験値が欲しいの。だから、ちょっとこの近くに来ることが多くなるかもしれないけど、あまり気にしないでほしいの」


 一応、ダンジョンコアを破壊しに来たわけではないということを告げておく。

 こういう場面で、話をしようとした瞬間に問答無用で襲い掛かってくるって言うのはお約束だからな。

 こうして先に言っておけば、いらぬ誤解で襲われることもないだろう。

 まあ、この部屋に入った時点で倒すべき相手だと見られているなら別だけど、別に入り口が閉じているわけではないし、いざとなればすぐに戻ることができる。

 あ、でも、ダンジョンから出るんだったら、最深部にはワープポータルがあるはず。使わせてくれるなら、そっち使いたいかな。

 いや、いざとなれば自分で作ればいいだけの話か。10階層とここにポータル作っておけば、時間短縮にもなるし。


「特に文句がないなら、帰らせてもらうけど」


『……待て』


 背を向けて入口に戻ろうとした時、背後から声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこにはいつの間にか、大きな蛇の顔があった。

 うぉ、びっくりした!

 とっさに周りを見てみると、どうやらこの部屋を囲むように大蛇がとぐろを巻いているような状態だったらしい。

 入り口だけ器用に開けて、それ以外はほぼ蛇が埋め尽くしている。

 門番的なものがいるとは思っていたけど、まさかこんなでかい蛇だとは思わなかった。


『貴様、ここまで来ておいて、本当にただ魔物を狩りたいだけなのか?』


「そう言ったはずなの。私の目的は、レベルを上げること。できれば素材も欲しいけど、だめだって言うならそれはいらないの。ただ、経験値稼ぎのために魔物を狩らせてくれるなら」


『変わった小娘だ。いや、レベルを上げるためというなら理に叶ってはいるのか? そのためだけにこんな危険を冒すのは馬鹿だと思うが』


 大蛇は舌をチロチロ出しながら、こちらを見定めるように睨みつけてくる。

 大蛇の魔物はいくつか知っているけど、こんな場所に置くような魔物ではないと思うんだけどな。

 いや、この部屋は確かに部屋っぽいけど、他の場所は森風な場所なんだし、ある意味では間違ってないのか?

 窮屈そうなのが気になるけど、ずっとここで待ってたんだろうか。そうだとしたら、なんか可哀そうな気がしてきた。


「今は時間がないの。雑魚でちまちま経験値稼ぎしてる場合じゃないの」


『ふむ。我の仕事は、ダンジョンコアを破壊しようとする者を排除することだ。これより前の階層は、いわば採取のために解放された坑道であり、そこの素材や魔物をいくら取ろうが特に問題はない。そんなに魔物を倒したいのなら好きにするがいい』


「話が早くて助かるの。あ、できればポータル繋ぎたいんだけど、それは構わないの?」


『この部屋に置くのはよせ。この一つ前なら問題はない』


「わかったの」


 案外話のわかる蛇である。

 と言うか、普通に話しているけど、何かのスキルだろうか?

 それとも、俺達が【アニマルセンス】を覚えているから話しているように聞こえているだけだろうか?

 まあ、見るからにボスっぽいし、特別仕様なだけかもしれないけどね。

 とにかく、許可も得たことだし、これで大っぴらに経験値稼ぎをすることができる。

 俺はほっと一息つくと、戻っていった。

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