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第五百九話:イベント階層

 ランダムダンジョンは地形はランダムとは言ったけど、一応そのダンジョンのコンセプトと言うか、雰囲気は決まっている。

 例えば、遺跡風とか、城風とか、そんな感じにね。

 このダンジョンの場合は、何と言えばいいんだろうか。森風? 多分そんな感じだと思う。

 ただの森ではなくて、その中に遺跡というか、廃墟と言うか、崩れた建物があったり、苔むした道が続いていたりする感じ。

 俺達は今、そんな道を歩きながら、ランダムダンジョンがどのように生成されているのかを目の当たりにしていた。


「ふむ、全然違和感ないですね。初めからこうだったと言われても納得してしまいます」


「テクスチャの隙間とかあるのかと思ったけど、そういうわけでもなさそうだな」


「ただの森にしか見えないよね」


 1階層降りて最初の部屋。

 ランダムダンジョンによる地形生成は最初の部屋から行われるはずだから、この部屋も多分それによって作られたものなんだろうけど、全然違和感はない。

 まるで初めからこんな地形だったかのように、道や部屋ができている。

 この場所に来る前に、【トラップサーチ】や【ライフサーチ】をしても何も反応なかったけど、この部屋に入ってからやってみると、【ライフサーチ】の方には反応があった。

 つまり、この部屋ができたことによって、魔物も出現したってことだ。

 いくら『スターダストファンタジー』の世界の元となった世界とはいえ、リアル寄りな世界観なのにこういう場所はゲームっぽいんだなと思わないこともないけど、今回はこの仕様通りで助かったと言える。


「魔物は……雑魚っぽいな」


「まあ、まだ1階だからそんなもんなの」


 【ライフサーチ】に反応してたのはどうやらゴブリンらしい。

 こちらを見つけるなり走り寄ってきたが、面倒なのでさっさと矢で倒してしまった。

 一応、スキルもなにも乗せなければ爆散することはないけれど、それでも一撃である。

 今は【手加減】を切っているけれど、当たった部分が抉られるようになくなっているので、相当な威力なのは間違いない。

 ここでは対した経験値にならないので、さっさと先を目指すことにする。


「ダンジョンレベルはどのくらいでしょうかね」


「多分、そんなに高くはないの。1階とはいえ、最低レベルの魔物が二体程度しか出てこないんだから、初心者用のダンジョンって感じなの」


「それだと、経験値稼ぎには向かないのでは?」


「満足に稼げるようにするなら、もっと奥に進まなきゃ無理そうなの。まあ、奥に進んでもダメな時もあるかもしれないけど」


 経験値の効率を考えると、できるだけ奥に進んでから稼ぎを開始した方が都合がいい。

 ただ、ダンジョンの階層にある部屋数は決まっている。なので、その階層を狩りつくしてしまったら、奥に進まざるを得ない。

 例えば、このダンジョンが30階層とかあるんだったら話は別だけど、一般的な10階層とかのダンジョンだったとしたら、奥に進んでから稼げる経験値はたかが知れている。

 最悪、10階まで進んでも、ろくに経験値を稼げない可能性もある。

 罠だけ凶悪になって、経験値はまずいなんてことになったら、ここを利用するメリットは何もない。せいぜい、素材がたくさん手に入るってくらいである。

 それならば、場所を選ばず戦える、ゴーレム式経験値稼ぎを行った方がましだ。

 まあ、それ調べるという意味でも、調査は必要なわけだけど。


「うまい具合に稼げればいいんだがな」


「ここがダメだったら、素直にゴーレムで稼ぐの」


 まあ、その場合俺はゴーレムを作るので戦闘に参加できなさそうだし、めちゃくちゃ時間かかりそうだけど。

 素材はともかく、核となる魔石を作るのが大変だからね。一つや二つならいいけど、大量に作るとなったらそれだけで何日も使ってしまいそうだ。


「……と、これで10階か? すんなり降りてこれたな」


「すんなり過ぎるの」


 それから階段を見つける度にどんどん奥に進んでいったが、あっという間に10階まで到達してしまった。

 ダンジョン最深部にはダンジョンコアがあって、それを入手するとダンジョンの所有権を得られるが、ここにはダンジョンコアらしきものはないので一応10階で終わりってわけではないんだろう。

 ただ、この10階は今までの雰囲気とは異なり、怪しげな魔法陣が床に刻まれた、大部屋だった。


「ここ、雰囲気違うけど、最深部?」


「いや、多分イベント部屋なの」


 ランダムダンジョンには、一定の階層ごとにイベント部屋というものが存在する場合がある。

 単純にランダムダンジョンを遊ぶだけなら、ランダムに地形を生成し、ランダムなイベントをこなしつつ、最深部を目指すってだけになるけど、これにシナリオを組み込む場合、一定の階層ごとにイベントが発生し、シナリオが進行していく形になる。

 その都合上、特定の階層では地形はランダムではなく、そのイベントで設定していた地形がそのまま形成される。要は固定階層ってことだね。

 ただ、これはあくまでシナリオが絡んでいたらって話である。

 この世界で、シナリオと言う概念が存在するのかがまず疑問だ。

 以前取得した【ウェポンプロダクト】と言うスキル。これは、シナリオ開始時にお金を得るというスキルだけど、今までにそれでお金を得られたことはない。

 まあ、フレーバーテキスト的に、自分で作った武器を売って、と言う話だから、そもそも売りに出していない時点でお金が入ってこないのは当たり前なんだけど、でも逆に言えば、シナリオ開始時と言うタイミングが訪れなかったからと言う解釈もできる。

 すでに始まっているシナリオだからなのか、それともこの世界にはシナリオと言う概念がないのか、それはよくわからないけど、今までの状況的には、シナリオなんてないって考える方が自然だ。

 しかし、グレンのボス的な行動や、ここにあるあからさまなイベント階層を考えると、もしかしたらシナリオと言う概念があるのではないかとも思えてしまう。

 ここで何かしらイベントらしいことが起これば、それなりに信憑性は増すだろう。

 果たして、この部屋には何かあるんだろうか?


「とりあえず、調べてみるの」


 調べられそうなのは、この魔法陣だろうか。

 周りには机が置いてあり、その上には乱雑に並べられた紙切れが置かれているから、それも何かわかるかもしれない。

 ひとまず、手分けしてみてみるとしよう。


「魔法陣は……複製の魔法陣?」


 鑑定で調べてみると、そう出た。

 複製の魔法陣は、その名の通りアイテムを複製することができる魔法陣である。

 必要なのは複製するアイテムと、MP。アイテムによって消費するMPは異なるが、大抵のものは複製することができる。

 まあ、生きているものは複製できないから、そこまで万能と言うわけでもないけど。

 こんなものがここにあるってことは、このダンジョンで何か複製しようとしてたのかな?


「おーい、アリス。こっちも色々わかったぞ」


「今行くの」


 机の上を調べていたシリウス達に呼ばれ、俺も置かれていた紙きれを見る。

 これを見る限り、どうやら複製しようとしていたのは動物のようだ。

 もちろん、さっきも言ったけど、生きているものは複製できない。だから、死体を複製して増やそうとしたようだった。


「なんかいろんな動物を複製してたみたいだな。みんな死体だが」


「死体なんて複製して何するつもりだったのかな?」


「さあ? 剝製にでもして高く売ろうと考えてたとか?」


 一応、動物の素材も売れることは売れるので、お金稼ぎ目的と言う可能性もなくはない。

 しかし、複製の魔法陣は、複製するものが大きければ大きいほど多くのMPを消費する。動物を丸々複製しようとしたら、かなりの量のMPが必要になったことだろう。

 ただ売るのが目的なら、その動物の高く売れる部分だけを複製した方がよっぽど楽だし、何ならお金自体を複製したって構わないだろう。

 わざわざどこで手に入れたかもわからない素材を売るリスクを冒さなくても、簡単に大金持ちになれる。

 だから、多分金儲けのためにやったわけではないと思う。

 しかし、ではどうして動物を複製したのかがよくわからない。

 俺は不可解な記述に思わず首を傾げた。

 感想ありがとうございます。

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[一言] 死体を複製して死人の数を誤魔化して生き残ったとか?
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