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第五百六話:思わぬチャンス?

「何か勘違いしているようだが、私は別にこれを君から奪おうとしているわけではないぞ?」


「え?」


 こちらの視線に気が付いたのか、グレンは手にしたスターコアをちらりと見ながらそう言った。

 ならなぜここに来たんだろうか。

 恐らく、グレンがここに来たのは、ここにスターコアがあったからだろう。

 その先で俺と話をしたかったというのはあるかもしれないが、いくら俺がスターコアを探しているからといって、スターコアの場所でいつまでも待っているなんてことできるわけない。

 仮にそうだとしても、このスターコアはどうやらドラゴンが守っていたようだし、やるとしてもドラゴンの相手は俺達に任せて、倒したタイミングで奪うなりした方が手っ取り早かったはずだ。

 それなのに、わざわざ危険を冒してドラゴンと戦い、スターコアを手にしておきながら、奪う気はない? なら、くれるって言うのか?

 狙いがよくわからない。こいつは何をしようとしているんだ?


「私がここに来たのは、そろそろ頃合いだと思ったからだ。君達の持っているスターコアの個数を考えると、残りは二つ。しかし、その二つを手に入れるのにどれだけの時間がかかるかわからない。だからこそ、少しお膳立てをしてやろうかと思ったのさ」


「……私達が手に入れるのが遅いから、さっさと手に入れて魔王を復活させろって言いたいの?」


「そんなことは言ってない。ただ、この世界に長居することは、君も望むところではないだろう?」


 確かに、この世界に来てからすでに五年は経過している。

 元の世界に帰ることを目標とはしているが、五年も失踪していたら世間的にどう見られるかなんてたかが知れている。

 両親だって、もしかしたら自分のことなど忘れているかもしれない。帰ったところで、もう居場所なんてないのかもしれない。

 この世界にいる期間が長くなればなるほど、元の世界での居場所がなくなっていく可能性が上がる。であるなら、できるだけ早く帰るのが一番手っ取り早い。

 この世界での居心地もそこまで悪くはないが、あくまで俺の居場所は元の世界だ。

 いくら相手が戦うことが想定されてないような化け物だったとしても、戦わなくては帰れない以上は早く戦わなければならない。


「なにも、これをタダで君に渡そうなどとは考えていない。流石に、そこまでしたら感づかれそうだしね」


「感づかれる?」


「いや、何でもない。だが、君にこれを得る機会を与えようというのは確かだ」


「はっきりしないの。何をするつもりなのかさっさと吐くの」


 どうにも、こいつと話しているとペースを崩される。

 魔王の復活が目的なんじゃないかとは思うけど、それならさっさと渡せばいいだけの話だし、そこで意地悪をする必要はないだろう。

 それとも、狙いは魔王の復活じゃないのか? 何か別の狙いがあるのか?


「結論を急いではいけないよ。ただ、そうだな、ここは悪役らしく、簡潔に言おう。これが欲しければ、霊峰ミストルの山頂に来い」


「霊峰ミストル……」


 確か、マスカニア大陸にある山の一つだったか。

 常に霧がかかっていて、普通に登ろうとすると遭難必至の場所。噂では、竜人達が住処にしているとかなんとか聞いたことがある。

 なんでそんな場所を選んだのかはわからないけど、簡単に手に入れられたらつまらない、と言う風に考えるなら、あそこは試練に最適な場所ではあるだろう。

 常に霧がかかっているということは、恐らく暗闇状態と同じような状態になると思う。

 暗闇状態は、攻撃の際に判定をし、失敗すると攻撃できなくなるという状態異常である。

 これは目潰しされていたり、視界が著しく悪い時にかかるもので、場合によっては【暗視】や明かりを使うことで無効化できるが、今回の場合は多分意味がないだろう。

 どんなに命中率が高くても、そもそも攻撃できなければ何の意味もない。暗闇状態はかなり面倒な状態異常なのだ。

 まあ、以前に行った霊峰スタルのスキル封印よりはよっぽどましだが。

 出てくる魔物のレベル帯を考えると、こちらの方が高いから、まあ今のレベルなら多分何とかなるだろう。


「ちなみに、期限は一か月だ。それを過ぎれば、私はこれを破壊してしまうだろう」


「なっ、い、一か月!?」


「そうだ。期限を設けないと、どうせレベルが足りないとか、まだ準備ができてないからとかで引き延ばすだろう? それではここまでした意味がないからね」


「ぐぬぬ……」


 確かに、期限がなかったら、レベル上げに勤しむのはもちろん、その他にもあれもしたいこれもしたいといつまで経っても行かないのは明白だ。

 集めきったら魔王が復活するかもしれない以上、準備は大事だからね。

 ただ、それでは急かしに来た意味がないから、期限を設けたってことなんだろう。

 一か月くれただけましなのかもしれないけど、マスカニア大陸に行くだけでも結構な時間がかかるはず。全速力で飛んでいったとしても、二週間近くはかかるだろう。

 そうなると、準備に充てられる時間はせいぜい二週間くらい。どう考えても、そんな短時間じゃ普通の方法ではレベル上げは間に合わない。


「それが嫌なら、これは諦めてもらおう。元々、私が手に入れたものだ、私がどう使おうが勝手だろうしね」


 一応、このスターコアは諦めて、別のスターコアを探すというのも手だが、ただでさえ見つからないスターコアを見逃すのは正直もったいない。

 下手をしたら、これ以降全く見つからないってことにもなりそうだし、できることなら手に入れておきたい。

 それに、ここであのスターコアを手に入れたとしても、合計は六つ。七つには一つ足りない。

 それなら仮にこれを取ったとしても魔王は復活しないはずだし、ここでひとまず取っておいて、最後の一つをゆっくり探すという風にすれば、問題はないだろう。


「わ、わかったの。行けばいいんでしょ!」


「ああ、それでいい」


 なんだかうまく乗せられている気がしないでもないけど、スターコアを手に入れるためなら仕方ない。

 まだオールドさんと戦う覚悟はできていないけど、準備を進めることは大事だし、いつまでも先延ばしにしていられるような状況でもない。

 この二週間でなるべくレベル上げして、それから向かうとしよう。


「……さて、そろそろきつくなってきたようだし、私はこれで失礼するとしよう。最後に一つ、聞いてもいいかな?」


「なんなの?」


「君は、神をどう思う?」


 神様をどう思うかって、また妙な質問を。

 この世界の神様に関しては、確かに色々思うところはある。

 俺達を無理矢理連れてきたのも神様だし、オールドさんを魔王にしたのも神様だ。さらに言うなら、その尻拭いを俺達にさせようとしている。

 結果だけを見れば、なんて迷惑な奴だと思うだろう。神様が余計なことをしなければ、俺達はこの世界に来る必要もなかったわけだし。

 でも、神様と人とじゃ考え方も全然違うだろうし、神様だって一応人のために頑張ってきた結果、今の状態になっているわけだから、むかつきはするけど、その考え自体は悪いとは思わない。

 俺だって、ゲームマスターをする時にミスをすることはあるし、そのしわ寄せがキャラに及ぶこともある。でも、基本的に巻き戻しはできないし、みんなになんとか納得してもらって進めることがほとんどだ。

 神様はそれをリアルな世界でやっているわけで、その結果多くの人の人生が狂わされてしまうのはしょうがないことだと思う。

 まあ、一番いいのは何のミスもせず、平穏に過ごしていけることだと思うけどね。


「強いて言うなら、ちょっと迷惑だけど、世界のために頑張ってる存在、だと思うの」


「そうか」


 グレンはそれだけ聞くと、瞬きのうちに姿を消していた。

 今更ながら思うけど、無理矢理奪ってもよかったかな? いや、そんなことしたら話す前に消えられちゃうか。

 最後の質問の意図はわからないけど、グレンにも、オールドさんにも、それぞれに神様に対する考え方と言うのがあるのかもしれない。

 と言うか、オールドさんからしたら神様は復讐対象なわけだし、もしかしてそれに賛同してほしかったんだろうか?

 だとしたら、ちょっと返答を誤ったかもしれない。まあ、仕方のないことではあるけど。

 グレンが消え、滝の音だけが響く中、俺は次にやるべきことを頭に思い描いていた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] でもそもそも先に見つけたのはこちらだから文句くらい言っても良かったのでは
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