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第四百九十四話:得体のしれない感覚

 それからしばらく探索を続けてみたが、アイランドタートルの甲羅は見つからなかった。

 あれだけ巨大なのだから、たとえ一部でも落ちていたらすぐに気が付きそうなものだけど、見つかるのは沈没船ばかり。

 わかったことは、その沈没船のほとんどが海賊船だったということくらいだろうか。

 普通の船も確かに混ざっていたが、海賊旗らしきものが確認できる船が複数あり、船内からは大砲やカットラス、マスケット銃なんかが見つかった。

 火薬が使われていたりしているから、それなりに新しいのかとも思ったけど、よくよく考えれば『スターダストファンタジー』の世界でも火薬を使った砲弾や銃弾は普通にあった。

 恐らく、『スターダストファンタジー』の世界と同じような世界だった三千年前からそうなのだとすると、年代の特定は難しい。

 いや、詳しく見れば、形式の違いとかを見て判断できるかもしれないけど、流石にそこまでの知識はない。

 鑑定で調べてみても、出るのは古びたものである、くらいだし。

 そこらへん曖昧だよな。たまーにちゃんと年代が書かれているものもある気がするけど、こうやって曖昧に濁しているものもあるし。

 フレーバーテキストを書いているのが神様だとするなら、担当した神様の違いなのだろうか? そもそも担当がいるのか知らないけど。


「息は続くし、夜目も利くとはいえ、あんまり遅くなるのはまずいの」


 海の底にいると詳しい時間がわからなくなるが、多分夕方くらいじゃないだろうか。

 せいぜいあと一時間とか二時間したら帰らないと怒られる。

 海賊が残したお宝とかは見つかってるけど、肝心のものが見つからないのはなぁ。


「どうしますか? 日を改めます?」


「そうしたいのは山々だけど、できればこの探索で終わらせたいの」


 ここに来た当初から感じている、ここにいてはいけないのではないかという感覚。

 最初は、海底という非現実的な場所にいるから感じているのかとも思ったけど、今なお感じているということは、本当に何かある可能性もある。

 冒険者の勘は油断ならない。フラグとは違うかもしれないが、そうした感覚は簡単に捨てきっていいものじゃない。

 だけど、それが何なのかわからない。

 例えば、人避けの結界のようなものが張られているのなら、この感覚にも説明がつくが、【エレメンタルアイ】を持っている俺でも、結界らしきものを見つけることはできなかった。

 そもそも、そんなものがあるなら、俺よりシリウスの方が敏感だし、真っ先に報告してきてもおかしくない。それがないってことは、結界はないってことなんだろう。

 そうなると、もっと原初の感覚。危険な生物が近くにいるから離れろと本能的に警鐘を鳴らしているパターンかとも思うけど、別に焦燥感のようなものは感じない。

 それに、それならばみんなが感じていてもおかしくないだろうに、他のみんながそれを感じている様子はないし、【ライフサーチ】で見てみても、近くに敵性生物らしきものはいない。

 ただ単に、沈没船がたくさんあるってだけの、幻想的な風景が広がる海底なのである。

 いったいこの感覚は何なのか。ちょっと気持ち悪いな……。


「まさに金銀財宝はあったが、肝心のものは見つからないよな」


「ほんとにねぇ。もしここら辺にあるなら、すぐにでも気づきそうなものだけど」


 これがただの冒険なら、沈没船のお宝を見つけられてラッキーって感じになるんだろうけど、今回の目的はそれではない。

 それなりに大きいもののはずなんだけど、なぜこんなにも見つからないのか。


「もしかして、埋まっているという可能性は?」


「ああ、なるほど……」


 確かに、甲羅が落ちてから数百年とか経っているなら、地面に埋まっている可能性もなくはない。

 まあ、それだったら沈没船も埋まっててもおかしくない気はするけど、比較的最近沈没したと考えれば一応説明はつく。

 ここまでかなり深く潜っているが、そこからさらに地面を掘るってなると相当難しい。

 一応、アイランドタートルの甲羅はレア度的にはかなり高いはず。以前に使った、【トレジャーセンサー】を使えば、見つけられる可能性もある。

 ただ、周りにある沈没船に眠っているお宝もそれなりの価値があるだろうから、そっちに反応してしまう可能性が高い。

 全部回収すればいいんだろうけど、見渡す限り結構な量があるし、そもそも【トレジャーセンサー】はまだ取得はしていない。以前使ったのは、防具に【スキルスロット】をつけることによって、疑似的に発動させていただけだしね。

 俺なら、今からでも取れるっちゃ取れるけど、可能性の低いものをわざわざ取る気にはなれない。

 それだったら、このあたり一帯を範囲魔法で吹き飛ばしてもらった方が圧倒的に楽な気がする。


「反応するかわかりませんが、鑑定してみては?」


「流石に地面に鑑定しても出ないと思うけど……」


 鑑定は基本的に、目に映っているものの情報を得るものだと思っている。

 まあ、これはスキルではなく、ゲームマスターとしての知識のようなものだから、見ないことには知っているものなのか、そうでないのかわからないんだし当たり前ではあるんだけど。

 都合よく露出してくれていたらわかるかもしれないけど、流石にないよね?


「んー……?」


 そう思って、辺りを鑑定してみたら、気になる表記を見つけた。

 見間違いでなければ、アイランドタートルの甲羅って書かれていた気がするんだけど……。


「……え、これ甲羅なの?」


 もう一度鑑定してみたが、やはり間違いないようだ。

 ただ、今目の前にあるのは、ただの岩である。そこら中に広がっている、ごつごつとした岩。

 これがアイランドタートルの甲羅だとしたら、今まで目の前にあったのにスルーしていたってことになるんだけど……。


「ま、まあ、見つかってよかったの」


 ともあれ、目的のものが見つかったのなら何よりである。

 そう思って、【収納】しようとそれに触れた時、なんとも言えない感覚が体の中を駆け巡った。


「ひゃっ!? な、なに?」


 何事かととっさに手を離すと、その感覚は消えていった。

 え、なに? 何が起きた?

 触った瞬間に感じた得体のしれない感覚。感覚的には、体の中に冷たい水が駆け巡ったような、ヒヤッとした感じだろうか。

 うまく言葉にできないけど、ひとまず何かに乗っ取られそうとかそんな感じはなかったような気がする。

 バフとかデバフでもかかった? とっさにキャラシを確認してみたが、特にそれらしい症状は書いていなかった。

 触ってる間だけなのかな。何となく、悪いものではない気はするけど……。


「もう一回鑑定してみるの」


 俺はもう一度鑑定をして、これが何なのかを改めて確認してみることにした。

 感想ありがとうございます。

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[一言] 得体の知れない何か……こわっ
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