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第四百九十三話:人の立ち入らぬ場所

 本日二話投稿です。前話を読んでいない方はご注意ください。

 出発してから約二週間。俺達はアイランドタートルだと思われる島までやってきた。

 途中、海の上を【ドラゴンウィング】で飛んできたわけだが、ほとんど目印もなくて本当にこの方角で合っているのかと不安になることが何度かあった。

 まあ、海を移動する時は目印がないのはある意味当然だから仕方ないんだけど、下手をすると同じ場所をぐるぐるさまよっていつまで経っても着かないなんてことにもなりそうだったから心配していた。

 結局、迷わずに着くことはできたんだけどね。方向感覚はそれなりに養われているらしい。


「これが、アイランドタートル?」


「どう見てもただの島にしか見えねぇが」


 目の前にあるのは、ぱっと見ただの孤島である。

 結構大きく、空から見てもぎりぎり全貌がわかるくらいの大きさではあるが、これが間違いなくアイランドタートルだ。

 その証拠に、【ライフサーチ】で見てみれば、大きな反応が一つあるのがわかる。

 なんだってこんなバカでかい生物が生まれたのかわからないけど、流石ファンタジーな世界と言ったところかな。


「これ、島には誰か住んでるの?」


「住んでるらしいの。友好的ではなかったため、詳しいことはわからないけど、獣人らしき部族が暮らしてるとかなんとか」


「へぇ」


 一応、ログレスの人達も、自力でどうにか回収できないかと考えたことはあったらしい。

 長年の調査で、この島がアイランドタートルであることは突き止めたようだが、上陸しようとしても、交渉の余地なく突っぱねられてしまうのだという。

 もしかしたら、何か秘密があって、それを意図的に隠す目的でやってるんじゃないかとも考えたようだが、島外から調査する限りでは、そんな兆候は何一つなかったようだ。

 一応、目的としては、アイランドタートルの甲羅を調べることによって、どれくらいの間隔で脱皮が起きるのか、それを調べるのが目的だったわけだが、現地民の理解が得られなかったこともあり、しばらくしてこの調査からは撤退したようである。

 まあ、島に住む人達を助ける目的なのに、その人達から拒絶されちゃったらどうしようもないよね。


「獣人って言うと、今探してるグレンって言う奴も獣人かもしれないんだろ? この島にいる可能性はないか?」


「まあ、どう考えても閉鎖的な環境だし、可能性としてはそれなりにあるとは思うの」


 グレンさんが本当に獣人で、なおかつ獣人の中で暮らしているかはわからないが、もしそうなら、ここはそれなりに隠れやすい環境だろう。

 今更、三千年前の罪に問われることはないと思うが、当時は逃げていたようだし、そこでこの島に辿り着いてそのまま永住している、って可能性はなくはない。

 もしそうなら、ぜひとも話を聞いてみたいけど、聞いてくれるだろうか。


「どうする? 話を聞いてみるんだったら先に行ってみるか?」


「んー、まあ、今は甲羅の捜索を優先するの。低い可能性を当てにしてもしょうがないの」


 もちろん、元々低い可能性しかないんだから、それに縋るのはありかもしれないが、今回の目的は甲羅の方である。

 まずはそちらを入手して、それからこっちの用を済ませる方がいいだろう。

 いくら期限はないとはいえ、早い方がいいに越したことはないだろうし。


「んじゃ、海底捜索だな。着替えるか」


「着替えるのはいいけど、こっち見ないでね?」


「見ねぇよ」


 着替えると言っても、すでにいつもの装備の下に水着を着ているから、脱ぐだけなんだけどね。

 こんな空の上で着替えるのはちょっとあれだけど、別に何かを見られるというわけじゃない。

 気持ちはわかるけどね。


「ほんとに大丈夫かな」


「心配なら、浅いところで試せばいいの」


「……いや、大丈夫、このままいくよ」


 着替えを終え、水面に近づく。

 足でチャプチャプと水面を掻いていたサクラだったが、意を決したように飛び込んだ。

 それを見て、俺達も続く。

 本来、水中は深く潜るほど日の光が届かなくなり、暗くなるが、今回は防具に【暗視】をつけているので普通に見渡すことができる。

 水中でも普通に視界が良好なのに慣れないのか、しばらくは辺りをきょろきょろとしていたカイン達だったけど、すぐに辺りを泳ぎ始めた。


「凄い、ほんとに水の中で息ができる」


「そういう風に作ったもの、当然なの」


 水中呼吸の影響か、水の中でも普通に会話することができる。

 水中では意思の疎通も大変なんじゃないかと思っていたけど、これは嬉しい誤算だった。

 ある程度水に慣れるためにそこらを泳ぎ回り、問題なさそうと判断したところで深海に向かって泳ぎ始める。

 果たして、海の底には何があるのか。


「結構深いの……」


 しばらく沈んでいったが、なかなか海底につかない。どうやら、結構な深さがあるようだった。

 これじゃ、普通の方法で潜るのは不可能だろうな。

 潜水艦でもあれば別だけど、この世界でそれは望めないだろうし。

 そんなことを考えながら沈んでいくことしばし、ようやく海底に足がつく。

 どこまでも広がる青の世界。凸凹としたその地形に、一瞬心を奪われた。


「なんか、人が居てはいけない場所に来ている感覚がするの」


 別に焦燥感があるわけではないし、海底に来てはいけないなんて法律があるわけでもない。でもなんだか、ここにはあまり立ち入ってはいけないのではないかという感覚がした。


「早いところ甲羅を見つけて上がるの」


 そう思って、辺りをきょろきょろと確認する。

 一目見てわかったのは、この辺り、沈没船がやたら多い。

 船体が真っ二つに折れていたり、ひっくり返っていたり、その形は様々だが、大小様々な船が沈んでいた。

 確かに、この世界は海にも魔物がたくさんいて、彼らに攻撃されたら沈んでしまうことも多々あるけど、そもそもこの方角に主立った大陸はないはず。だから、そもそも船が行き来することはほとんどなさそうな気がするけど。

 この島を目的に来たんだろうか? それとも潮の流れに流されて?

 よくわからないけど、この場所はあまり船が立ち入っていい場所ではないのかもしれない。


「なんか、お宝探しでもできそうだな」


「金銀財宝があったりして?」


「まあ、積み荷は残ってるかもしれませんね」


 シリウス達は船の周りを色々調べて回っている。

 見た感じ、商船だろうか。船の歴史に詳しいわけではないから、大きさから推測するくらいしかできないけど、これだけ大きいなら客船とか商船な気がする。

 探せば確かにお宝でも眠っていそうな雰囲気ではあるけど、個人的にはここにはあまり長居したくない。

 みんなには悪いけど、俺はさっさと甲羅を見つけたいかな。


「と言っても、甲羅なんてどこにあるの?」


 ぱっと見で甲羅だと思われるものは見当たらない。

 沈没船の他には、ごつごつとした岩が目立つくらいである。

 もっと別の場所にあるんだろうか? でも、アイランドタートルはここにいるわけだし、ここにあるのが自然ではある。

 いや、生き物なんだし、滅多に動かないとは言っても移動している可能性はあるか。

 だったら、もう少し離れた場所にある可能性もなくはない。

 うーん、あんまり捜索範囲を広げたくないんだけど、見当たらないし、そうせざるを得ないか。

 俺はふっとため息を吐きながら、辺りの捜索を続けた。

 感想ありがとうございます。

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