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第四百九十話:欲しいものリスト

 翌日。再び研究所に赴くと、ショコラさんが出迎えてくれた。

 昨日と同じ部屋へと案内され、座るように促される。

 レキサイトさんはいないが、話は済んだんだろうか?


「やあ、よく来てくれた。早速だが、取って来てほしい素材が決まったよ」


「それはなんなの?」


「これがリストだ。まあ、全部見つけろとは言わないが、半分以上は集めてほしいとのことだ」


 そう言って見せてきたのは、一枚の紙だった。

 書かれているものは様々で、植物や鉱石、果ては魔物の卵と言ったものまで、本当に色々なものが書かれていた。

 それが、A4くらいのサイズの紙にびっしりと書き連ねられている。

 いや、流石に多すぎでしょ。


「……これ、みんな貴重なものなの?」


「まあ、簡単には手に入らない代物だな。生息域が未開の地過ぎて入れないだとか、海底にあるだとか、火山にあるだとか、行くだけでも一苦労な場所にあるものが大多数を占める」


「それをこんなにたくさん集めて来いって、普通は無理だと思うんだけど」


「まあ、それほどスターコアは貴重なものってことだ。全部取ってこられるとは思っていないが、さっきも言った通り、半分以上持ってくることができれば、スターコアを渡してもいいと言っている」


 まあ、スターコアは幻のアイテムと言われるくらい貴重なものだし、それを考えればこの要求は当然なのか?

 詳しいことは知らないが、多分これだけあれば一財産どころか十財産くらい築けると思うんだけど。


「どうだね? やめるなら無理強いはしないが」


「いや、まあ、やると言った以上はやるの。今の時点で、それなりに持ってるのもあるし」


「ほう、それは興味深い」


 植物とか鉱物に関しては、すでに【収納】にしまっているものがいくつかある。

 というのも、幻獣の島に行った時に、採取していたものの余りなのだが、あそこは誰も立ち入らないのと四季が重なる環境なせいか、珍しい植物が多く生成されているようだった。

 取りすぎるのもどうかと思って数はそこまでないが、鑑定してみれば、リストに書かれているものと同じ名前のものはいくつかあったし、これを納品すれば一部は揃いそうである。

 まあ、それでも半分はいかないけど。


「はは、幻獣の島か。いつか行ってみたいものだね」


「行ったら帰ってこられないからやめた方がいいの」


「冗談だよ。しかし凄いな。一つだけでも、相当入手が難しいというのに、それをすでに複数持っているとは」


 幻獣の島が異常なのがよくわかる。もし、あそこに自由に行けたら、貴重な薬草とかが取り放題だろう。

 まあ、入るには幻獣の助けが必要な上に、あんまり長居すると幻獣にされてしまうから簡単には行けないが。

 あそこに行ったのは計算外ではあったけど、こうして貴重な薬草などを手に入れられたのなら一応行った意味はあったのかな。


「これ、残りの素材はどこにあるとかはわかってるの?」


「ある程度は。中には仮説の域を出ないものもあるが、概ねここだろうという目星はついている。それに関しては、裏面に書いておいた」


「ああ、ほんとなの」


 よく見れば、裏面にもいくつか文字が書かれている。

 流石に、こっちには場所だけしか書かれておらず、さらに素材を、ということではない様子。

 表面だけでも相当な数なのに、これ以上要求されなくてよかった。


「期限は設けないので、気ままに探すといい。私は君達ならやると思っているが、管理者達はそうは思っていないようなのでね」


「要は無理難題を吹っかけて諦めさせに来たってことなの?」


「そういうことになる。まあ、君達にとってはそうでもないようだが」


「まあ、難題ではあるけど、無理ではないの」


 素材の中にはいくつか知らない名前も混じっているが、多分大丈夫だろうという自信がある。

 一日で探せって言われたらちょっと厳しいかもしれないが、なんならスターコア捜索に回している人材をいくつか持ってきてもいいし、その場所に行けばあるというなら、魔物が蔓延る森の中だろうが、海の中だろうが、火山の中だろうが、どこだって取りに行ける。

 絶対無理だと思っているんだろうけど、鼻を明かすのはそう難しいことじゃない。

 まあ、流石に少し時間はかかるかもしれないけど。


「では、集まるのを楽しみにしておこう」


「今更だけど、そんなさらっとスターコアを渡していいの?」


 確かに、ショコラさんは俺達のことを信用しているし、魔王を倒すためにスターコアが必要なのではないかと理解しているだろうけど、だからと言って町の財産であろうスターコアを渡してしまっていいのだろうか。

 ショコラさんはこの町の創設者だし、多少の我儘は通ると思うけど、あんまり言いすぎれば立場も悪くなるだろうし、ここでスターコアを渡すことはショコラさんにとってあまりいいことには思えない。

 それほどまでに俺達のことを信用してくれているってことでいいんだろうか? 多少の悪口は許容するってことなんだろうか。


「町の代表として言うなら、安易に渡していいものではない。スターコアは、数あるアイテムの中でもかなり貴重なものだし、これを手に入れるために色々と手も回してきた。町の象徴、とまでは言わないが、それと同じくらいの価値を持っていると言っていい」


「じゃあ、なんで?」


「あくまでこれは町の代表としての言葉だ。研究者として言わせてもらうなら、これを渡すだけで大量の貴重な素材が手に入るなら、渡してしまっても何ら問題はないと思っている」


「えー?」


 町としては渡したくないけど、研究者としては貴重な素材との交換なら問題はないと。

 いったいなんでそんなことになるんだ?


「スターコアは、願えばどんな願いでも叶えてくれる幻のアイテムだ。その叶い方が歪んだものであれ、それに変わりはない。だが、研究目的とはいえ、それを安易に確かめることはできないのだよ」


「どうして?」


「君なら知っていると思うが、願いを叶えたスターコアは消滅する。力を使い果たしてただの石ころになるというわけでもなく、綺麗さっぱりなくなる。こうなってくると、使ってしまったら、それ以上の研究ができないだろう?」


「ああ、言われてみれば」


 元々、スターコアは消耗アイテムであり、一回使ったらなくなる代物である。

 神様との交信で内部の魔力は使っていたけど、それも使い切らないくらいに調整していて、だからこそ今も形として残っている状態だ。

 つまり、願いを叶える石として使ってしまったら、もうそれ以上の研究はできないというわけだ。


「私達にできるのは、せいぜいこんな願い事をしたらこう言う叶い方をするだろう、という考察くらい。実際に実験して、というのはなかなかに難しい。つまり、面白みに欠けるのだよ」


「それで、渡してもいいと?」


「その通り。スターコアが大量に手に入るというならともかく、現状はただ貴重な標本として飾っておくくらいしか用途がない今、その研究に携わる者は非常につまらない思いをしている。今回、無理難題を押し付けたのは、町としてのメンツがあるからだ。本当なら、こんな大量にではなく、貴重な素材一つと交換でも喜んで渡していただろう」


「なんか、研究者も大変なの」


 自由に研究できないことがストレスになるって言うのはなかなかないと思う。貴重な素材を研究するって大変なんだね。

 でも、そういうことなら大丈夫そうだ。ショコラさんとしても、管理者としても、表面上はスターコアのことを大事に思っているけど、研究対象としては飽き飽きしているということだから、この難題を突破できれば、禍根なくもらい受けることができるだろう。

 ただ闇雲にスターコアがあるかもしれない場所を探すよりは、場所もはっきりしている素材を探す方がよっぽど楽だ。

 これはお互いにとって、いい取引なのかもしれないね。

 とりあえず、ショコラさんの立場は大丈夫そうだなと思い、ほっと胸を撫でおろした。

 感想ありがとうございます。

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