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第四百七十八話:研究者の知り合い

 受付で、自分がヘスティア王国の王様だと告げると、かなり驚かれたが、結局閲覧を許可はしてくれなかった。

 ヘスティアという国のせいかはわからないが、たとえ王族でも、直接手に取って見るのは遠慮していただきたいと突っぱねられてしまった。

 粘ろうかとも思ったけど、こんなところで心証を悪くするのもどうかと思ったので、その場はしぶしぶ諦め、普通に読める本をいくつか読んだ後、図書館を去ることにした。


「ま、そんなうまくはいかないわな」


「大事な資料なんだし、これはしょうがないの」


 逆に言えば、それだけ大事な資料なら、重要なことが書かれているかもしれないという期待が高まる。

 そこら辺の研究者を捕まえて読ませてもらうか、何なら夜にでも忍び込んで見ればいいだけの話だし、ここで断られたこと自体は特に問題はない。


「どうする? アリスなら、ちゃちゃっと忍び込んで見れると思うが」


「んー、できればあんまり犯罪は犯したくないけど……研究者の知り合いがいるわけでもないし、明日一日探して見つからなかったら忍び込むことにするの」


 一応、正規手段で見れないかは試しておいた方がいいだろう。あんまり非合法な手段を最初に取り続けたら、それが普通になっちゃうかもしれないしね。

 そういうわけで、今日のところはもう遅いということもあり、ポータルで城へと戻り、それぞれ休むことにした。


 翌日。再びポータルでログレスの町へとやって来て、町で研究者を探すことにした。

 今回、調べたいのは歴史だから、歴史研究家が見つかれば一番いいんだけど、読む許可さえ下りれば、何か理由をつけて他の本を読むことも可能だと思う。

 だから、最悪歴史研究家でなくても、あのチェーンライブラリーにアクセスできるような人物なら誰でもいい。

 問題は、そんな都合よく見つかるかってことだけど。


「研究者を探すって、どこ探すんだ?」


「普通に考えれば、研究者なんだから研究所とかにいると思うけど」


 この町には研究施設はごまんとある。その中から歴史研究家達が居そうな場所を訪れて、事情を話して協力してもらうって言うのが多分一番手っ取り早い。


「そんな簡単に協力してくれますかね?」


「それな。自分の研究を自慢したい奴なら、話を聞いてやれば少しは仲良くなれるかもしれないが、俺達は別に研究者ってわけでもないし、同調するのは難しそうだが」


「うーん……」


 まあ、それは確かに。

 この町での研究がどういう風に評価されているのかはわからない。

 調べたことはどんどん発表して、周りに周知していくのがいいと思っているのか、それとも、自分だけがこんな秘密を知っているって秘匿することがいいとされているのか。

 いやまあ、学園都市なのだから、恐らくは前者な気はするけど、だからと言って見ず知らずの人に研究成果をぺらぺら話すかと言われたら微妙なところである。

 下手をしたら、自分の研究成果を横取りされる可能性だってあるわけだし、同じ研究者だったとしても、初対面ではかなり分が悪い。

 せめて、数ヶ月くらいは一緒に行動して、お互いの理解を深めていく必要があると思う。

 もちろん、そんなことやってられないので、今回狙いたいのは、自分の研究成果をぺらぺら話してくれて、あのチェーンライブラリーにホイホイ連れて行ってくれるようなちょろい人ってことになるけど。


「いや、いないだろ」


「やっぱりそう思うの?」


「思う」


「そっかぁ……」


 なんか、ちゃんと条件を羅列するととんでもない条件だな。

 そもそもの話、研究所にいきなり突撃して、研究のこと教えてくださいって言うのもかなり失礼だし、そこからさらにチェーンライブラリーを見せてほしいって言うのは無理があるかもしれない。

 せめて、知り合いの研究者がいればいいんだけどなぁ……。


「……ん? あれは」


 そんなことを考えていると、少し先の方になにやら怪しげな人物がいるのが見えた。

 つなぎのような服を着た男性で、壁際に向かってしゃがみこんでいる。

 何をしているんだろうと思ったら、壁側には小さな男の子がいて、なにやら話しているようだった。

 見た目には、おっさんが子供相手に詰め寄っているようにも見える。

 まさか、こんな白昼堂々誘拐なんてことはないだろうが、どうにも見過ごせない状況だ。


「はぁ、とりあえず話を聞いてみるの」


 何もなかったならそれでよし、もし、男の子に何かやろうとしているって言うなら注意してやらねばならないだろう。

 まあ、もしかしたら男の子の方がスリをした、とかかもしれないけどね。浮浪児とかがいる町では、そういうこともたまにあるようだし。


「そこのおじさん、何してるの?」


「うわ、びっくりした! ……って、おや、君達は」


「んー? 私のこと知ってるの?」


「いや、もちろん知ってるとも。というか、知り合いだと思っていたのだがね?」


「あ、レキサイトさん!」


 サクラが声を上げて、ようやく合点が行った。

 確か、最初のスターコアを見つけた時に、隕石の調査に来た研究員だったはず。

 いや、懐かしいな。あれから全然音沙汰なかったけど、まさかこんなところで会うとは思わなかった。


「ああ、久しぶりなの」


「サクラちゃんは覚えていたようだけど、君は忘れていたね? まあ、確かにそこまでの交流もなかったが……」


「それで? なにしてるの?」


 ここにレキサイトさんがいるのは不思議だけど、まだ男の子に何していたのかがわかっていない。

 男の子の方は、別に逃げることもなくその場に佇んでいたから、男の子の方が犯罪を犯して追い詰められていた、ってわけではなさそうだ。

 事の次第によっては、レキサイトさんを警備隊に突き出さなきゃいけなくなるけど。


「いや、実はあれから研究を重ね、オリハルコンの利用方法を模索していてね。それで研究結果がまとまったから、学会に提出してみたのだが、そしたら思った以上に反響があったらしく、このログレスで発表会をしないかと持ち掛けられてね」


「それで来たと」


「そういうことだ」


「じゃあ、ここで男の子と油売ってたのは何なの?」


「ただ単に道を聞いただけだよ。まあ、私に興味を持ってくれたようで、色々質問してくれてはいたけどね」


「ふーん」


 まあ、嘘を言っているようには聞こえないし、本当のことなんだろう。

 なんだ、修羅場かと思ったのに。いや、平和が一番だから別にそれでいいんだけども。

 それにしても、こんな冴えないおじさんに興味を持つとか、この子は何を思ってそんなことしたんだろうね?

 見てみると、茶髪に、青い瞳が特徴的な男の子だ。白衣を着ているけど、どこかの研究者の子供とかだったりするのかな?


「あ、初めまして。私はアリスって言うの。君は?」


「ふむ。レキサイト氏にこんな可愛らしい知り合いがいるとは想定外だが、聞かれたからには答えよう」


 なにやら落ち着いた様子でそう答えると、片手を差し出しながら名を名乗った。


「私はショコラだ。よろしく、アリス殿」


「え、あ、こちらこそ……」


 思わず握手をしたけど、何なんだろうか、この子は。

 思ったよりよっぽど大人な雰囲気の男の子を見て、心の中で困惑していた。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 子供に見える系の種族かな?
[一言] おや?のじゃロリならぬのじゃショタ系でしょうか? 身長に合わない白衣着て引きずっていると個人的にツボなのですが
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