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第四百五十二話:事が済んで

 その後の展開だけど、まあ、ある意味激しかったと言えるかな。

 ノクトさんは終始蹂躙されていて、悲鳴を上げまくっていたけど、シュエはそんなこと気にせずガンガン突き進んでいた。

 途中から、流石にこんな風にみんなで囲んでいたら可哀そうだと思って移動したのだけど、離れていても悲鳴は聞こえてきたので、大変だったのは間違いない。

 しばらくして悲鳴が止んだので、様子を見に行って見ると、ぐったりと仰向けに転がって痙攣しているノクトさんと、嬉しそうにはしゃいでいるシュエがいた。

 いくら記憶がないとはいえ、容赦がない。

 これ、記憶取り戻して大丈夫だよね? 傍から見たら黒歴史になりそうだけど。


〈ふふ、どうやら無事に子を成すことができたようね。偉いわよ〉


〈えへへー〉


 見た目にはよくわからないが、エキドナの目から見れば、きちんとシュエのお腹に新たな命が宿っているのがわかるらしい。

 そんな、さっきやったばかりで命が生まれているのかは疑問ではあるけど、まあ幻獣だしそう言うこともあるんだろう。もう気にしたら負けだと思う。

 リヴァイアサンの場合、卵から生まれるらしい。卵を産んでから、生まれるまでは親が暖め、半月ほどで生まれてくるようだ。

 かなり早いのかな? 卵の孵化速度なんて知らないからよくわからないけど。

 リヴァイアサンは、というより幻獣全般は生まれた時からそれなりに知能があるらしく、人間の赤ん坊とは全く違うらしい。

 だから、その気になれば生まれたばかりでも、教えてやれば狩りをして食料を確保することもできるようだ。

 代わりに、成獣扱いされるのはかなり時間が必要なようで、最低でも100年くらいは必要になるとのこと。

 人の世界に出る幻獣は、少なくとも成獣になってからということがあるようなので、幻獣としてはまだ10歳であるシュエやノクトさんは相当希少な存在のようだ。


〈後は卵を産んで、孵化するまで暖めてもらえれば、後はこちらで育てるわ〉


〈暖めるのも任せられないの?〉


〈それは親として最低限の責務だもの。流石にそれを奪うことはできないわ〉


 生まれたばかりの子供をおばあちゃんが奪っていくのもどうかと思うけど……まあ、エキドナにとってはすべての幻獣は自分の子供なのだし、育てるべきは自分だと思っているんだろう。

 実際、こんな風にイレギュラーな子作りをしない限り、親はエキドナになるはずだしね。むしろ、産んだのはそちらなのだから責任もって育てろと言われないだけましである。

 まあ、ちょっと心配なのは、シュエが子供に対して何か思うところがないかというところだけど……。

 母性本能が目覚めて子供を渡したくないとかならないよね? なったら引き離すのが辛くなるけど。


〈それじゃあ、一つ住処を与えましょう。子供が生まれるまでは、そこで生活するといいわ〉


〈まだ連れ帰っちゃダメなの?〉


〈それはそうよ。ここは安全なのに、わざわざ危険かもしれない場所に行かせてまで子供を産ませたくはないでしょう?〉


〈まあ、それは一理あるの〉


 この幻の島は、幻獣達にとって安全な拠点である。

 エキドナがいる限り、幻獣以外がこの島に辿り着くことはほぼないだろう。

 俺達のように、幻獣の協力者でもいない限りは。

 今回の子供は、今後のリヴァイアサンの復活を左右する重要な子供だし、なるべく安全なところで産んであげたいというのは当然の考えである。

 だから、それに関して文句はない。

 それだけこの島に滞在する時間が増えるのはあれだけど。


「ノクト、大丈夫なの?」


〈あ、え……? あ、ああ、だいじょぶ……〉


「全然大丈夫には見えないの」


 近くで転がっているノクトさんだが、一体何をされたらこうなるんだろうか。

 いやまあ、激しく愛されたのはわかる。シュエは記憶はないけれど、エキドナによる命令と、わずかに残っていたノクトさんへの想いが重なった結果、こんなしおしおになるまで絞りつくしてしまったんだろう。

 ノクトさんならその気になれば体を炎に変じて逃げることもできそうだけど、それをしなかったのは焦っていて忘れていたのか、それともシュエを傷つけないためにあえてなのか。

 どちらにしても、こんな腰砕けな状態なフェニックスなんてそうそう見れないだろう。


〈俺、初めてだったのに……〉


「それに関しては本当に申し訳ないの」


 まあ、シュエの記憶を消させないためとはいえ、無理矢理やらせたのは申し訳なかった。

 いくら両想いだったとしても、シュエは記憶をなくしていた状態だったし、ノクトさんだってこんな姿でやりたくはなかっただろう。

 解決できたとは言っても、無事に解決したとは言い難いかもしれない。

 せめて、しばらくは優しくしてあげよう。生贄になってくれたノクトさんに敬礼。


〈ふふ、子供には刺激が強かったかしらね?〉


〈子供でも容赦なく子作りさせようとしてた奴がよく言うの〉


〈それはそうよ。幻獣は生まれた時からしっかりしているし、足りないのは経験だけ。種を復活させるためなら、多少早いくらいは仕方ないことよ〉


〈そう〉


 適性年齢というか、もう少し大人になったらとか言う縛りがあったなら、それを理由に引き延ばすこともできたんだろうけどな。

 幻獣が成獣になるまでは100年近くかかるみたいだし、流石にそれだけ経ったら俺達はみんな元の世界に帰っていることだろう。

 リヴァイアサンという種が復活しないのは残念かもしれないが、それだったら俺達は何のリスクも負うことなくこの島を去ることができていた。

 無駄なところでハイスペックな幻獣の悪いところが出てしまった感じだね。いや、悪いところではないのかもしれないけど。


〈さて、それじゃあ案内するわ。ついてきて〉


〈うぁ……〉


〈ほら、シャキッとしなさいな。お父さんになったんですから〉


〈お、俺が、お父さん……?〉


 未だに呆然としているノクトさん。

 この場合、産まれてきた子供は多分リヴァイアサンになるんだろうけど、そうなるとノクトさんのフェニックス要素はどうなるのかね。

 不死能力を持ったリヴァイアサンになるとか? それとも、全然関係なくなるんだろうか。

 もしフェニックスの能力を持ったリヴァイアサンなんて出てきたら化け物ってレベルじゃないと思うけど、味方にできたらめちゃくちゃ戦力にはなりそうである。

 そこらへん期待してもいいだろうか? まあ、育てるのはエキドナみたいだから力を貸してくれるかはわからないけど。

 まあ、最悪手を貸してくれなくても、二人が戻ってきてくれるなら問題はない。仲間が多いに越したことはないけど、幻獣の仲間は十分と言えば十分だしね。

 でも確か、あと一人いるらしいんだよね。その人も見つけたいところではある。

 無事にとは言い難いけど、とりあえず何とかはなったので、ほっと一安心しつつ、今後のことを考えるのだった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 性別は関係なかったから下手したら次はノクトさんがママに……?
[一言] 尊い犠牲のおかげで丸く収まった。収まった?まぁとにかくよし! リヴァイアサンの卵が孵った後にじゃあ次はフェニックスの子をと言い出さなければいいのですが、大丈夫かな?
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