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第四百四十四話:石橋を叩いて渡る

「なあ、その結界って、そんなに面倒なものなのか?」


「ん? まあ、通れないんだから面倒っちゃ面倒なの」


 色々考えていると、ノクトさんがそう言ってきた。

 まあ確かに、最悪突破する手段はある。あるけど、それをやることによって、シュエの救出が困難になるのは困る。

 もちろん、壊したところで何の影響もないかもしれないけど、少なくともこの結界は装置のようなもので作られているのではなく、何者かの手によって形成されているものだろう。

 であれば、それを壊せば、結界を形成していた主は絶対に怒る。

 下手なことして蛇を出したくない。それが本音だった。


「ノクトも感じるでしょ? 何となく、触れないって感覚」


「いや、何も感じないが」


 そう言って、ノクトさんは結界に近づき、そのままするりと翼を通り抜けさせて見せた。

 ……え、まじ?


「え、ノクト、今どうやったの?」


「どうって、別に普通に……」


「うーん?」


 確かに、見た限りノクトさんが特別なことをしているようには見えなかった。

 となると、ノクトさんだからこそ結界を通り抜けられたってことになる。

 一応、他のみんなにも試してもらったが、結局通ることはできなかった。

 ノクトさんにはあって、俺達にはないもの。それがわかれば、この結界も攻略できそうな気がする。


「……ねぇ、もしかして、幻獣だからじゃない?」


「なるほど」


 サクラが答えを出してくれた。

 確かに、ノクトさんはフェニックスという幻獣である。そして、さらに言えばシュエも幻獣だ。

 幻獣であるということが結界を通り抜ける条件なら、二人が通れたことにも納得ができる。

 しかし、なぜ幻獣限定? それとも、幻獣じゃなくて魔物限定とかか? 幻獣は一応、魔物というカテゴリーでもあるし。

 魔物限定となると、真っ先に思い浮かぶのは魔王である。

 ここが仮に魔王の隠れ場所で、魔物のみ通れるように設定しているなら、辻褄は一応合うだろうか。

 だとしたら、シュエは魔王と遭遇した可能性が高いってことになっちゃうけど……それだったらかなりやばいな。

 どうする? ここは一度退くべきか?

 もし仮に、本当に魔王が存在するなら、今の戦力だとかなり不安ではある。

 いや、不安と言っても、ノクトさん以外は現状の最高戦力ではあるけど、たった五人で挑んで勝てるだろうか。

 下手したら、成す術なくやられて終わる可能性もなくはない。

 でも、これはただの可能性でしかない。それも、かなり薄い可能性。それに怯えて、みんなを呼び出して総攻撃、なんてやってなにもありませんでしたじゃ申し訳ない。

 もちろん、何もないならそれはそれでいいのだけど、ここの選択は重要かもしれないな。


「……とりあえず、みんなに報告だけはしておくの」


 幻の島の存在と、そこに魔王がいる可能性。

 もちろん、これはかなり薄い可能性であり、実際は違う可能性が高いだろう。

 それでも、万が一合っていたら、俺達は情報をドブに捨てることになる。

 みんなと帰ることは俺の目標だし、いざとなれば俺が犠牲になってでもみんなを助けるつもりではある。でももしそれが叶わなかったら、残された人達は不利になってしまう。

 だから、小さなことでも伝えておく必要があるのだ。何もなければ、杞憂だったと言えばいいだけの話なのだし。


「急にクライマックス感が出て来ましたね」


「でも、ほんとにいるのか? 結界に阻まれているとはいっても、魔王がいるなら何かしら感じそうだが」


「本当にただ可能性があるってだけの話なの。いない可能性の方がよっぽど高いの」


「もしいたら、その時は最終決戦だね」


 みんなにも魔王の可能性を伝えると、意外にもそんなに驚いてはいない様子だった。

 でも、緊張しているのはよくわかる。表情が硬くなったからな。

 ある程度予想はしていたけど、いざ魔王がいると考えると怖いってところだろうか。

 まあ、いくら【リザレクション】のような復活スキルがあるとは言っても、どこまで万能かわかったもんじゃないしね。それに、仮に生き返れるとしても進んで死にたいとは思わないし、一発勝負と考えるべきだろう。

 レベルは上げてきたが、どこまで通用するか。

 できることなら、魔王なんておらず、別の何かであってほしいと願うばかりだ。


「さて、ノクトが入れるなら、多分ノクトに触れていれば、一緒に入ることはできると思うの」


「そうなのか?」


「そうなの。試してみるの?」


「お、おう」


 試しに、俺がノクトさんの体に触れながら、結界に近づいてみる。すると、何の抵抗もなく、するりと抜けることができた。

 やはり、ノクトさんと一緒なら通ることはできるらしい。みんなで触れていれば、この結界を突破することはできるだろう。


「入れるみたいですし、さっそく行って見ますか?」


「待つの。一応、もう少しレベルを上げておくの」


 石橋を叩いておくに越したことはない。せっかくまだ経験値があるのだから、思いつく限りのスキルは取得しておくべきだろう。

 と言っても、対魔王の基本的なスキルはすでに取得している。

 即死耐性を始めとした耐性系はもちろん、それぞれのクラスに特化したスキルの数々。攻撃役は威力を上げる系のパッシブスキルを取りまくったし、防御役は防御力が上がる系のパッシブスキルを取りまくった。

 おかげで、覚えている限りではほとんどすべてのバフスキルを最大数で取得しているはずである。

 これ以上何を取るのかと言われたら、まずは行動緩和系。その中でも特に重要なのが、相手の行動に割り込むことができるというスキル。

 『スターダストファンタジー』における戦闘の行動順は、基本的に敏捷の高い順である。

 自分の番が来たら、行動をするか待機をするかを選び、待機の場合はそれ以降の好きな順番で動くことができるのだ。

 しかし、序盤はともかく、終盤になってくると、敵の敏捷はめちゃくちゃ高くなってきて、こちらの敏捷では追いつけない時がよくある。そうなると、相手の攻撃を受けてから行動するのが普通になり、ダメージレースで不利になる可能性があるのだ。

 そんな時に便利なのが割り込みスキル。

 行動順に関係なく、好きなタイミングで割り込んで行動することができるため、相手より先に行動し、防御バフをかけておくということもできるし、相手にデバフをかけて攻撃力を下げるという動きもできる。

 こういうスキルは結構貴重で、基本的にはシーン一回の制限があるので連発はできないが、あるのとないのとでは大きな差があるのだ。

 特に、敵の行動に割り込んで【ヒールライト】をかけられる【クイックヒール】はかなり有用である。

 これらを取っておけば、いざという時に安心できるだろう。

 もちろん、この世界はリアルな世界。基本的に敏捷順で行動とは言っても、ターン制ではなく、相手も同時に動くとか言うパターンもあるし、何らかの妨害でスキルが中断されたりなど色々と想定外のこともある。

 だから、割り込みスキルを持っているからと言って、必ずしも行動が保障されるわけでもない。

 でも、だからこそ取っておくべきだとも思う。

 魔王がいきなり動いてきて、全体即死攻撃で終わりなんて展開は誰も望まない。

 ないかもしれないとは思っていても、できるだけのことはしておく。

 さて、これだけ取れば少しは安心できるだろうか。不安なのに変わりはないが、これ以上やれることもない。

 シュエを救うためにも、挑むとしよう。

 俺達はノクトさんの体に触れつつ、結界を通り抜けた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >おかげで、覚えている限りではほとんどすべてのバフスキルを最大数で取得しているはずである。  今更ながらこれをぼんやり見てましたが。  そんなに大量にスキルがあると、キャラシの欄外の余白は…
[一言] 何が待ち受けているのやら……
[一言] 結界に気づかずに通ってしまったと、そうなると連絡が取れないのに島の外に出ないのが気になります なにか事情があるのかな? 人数少ない状態での魔王戦は勘弁してもらいたいのでいないといいですね
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