第四百四十一話:ノクトの心配事
スターコアの捜索が行き詰まっているのは、まあ仕方ないことではある。
元々、どこにあるかもわからないものだし、そもそもまだ地上に存在するのかもわからない。
隕石によって地上に降り注ぎ、その中にあるものだから、もしかしたらすでに見つけられるものは全部見つけてしまって、後は降ってくるのを待つしかできないのかもしれない。
そんなことはないだろうとは思っているけど、そんなあるかもわからないものだから、多少見つからなくても仕方ないのだ。
ここで焦って、雑な捜索をする方が問題である。だから、みんなには引き続き丁寧に探してもらえればと思う。
「次はどこへ行きますか?」
「基本的にこの大陸はみんなに探してもらっているし、別の大陸に行くべきだと思ってるの」
「まあ、それもそうですね」
一番移動力があるのは俺達だし、俺達が率先して遠くを探しに行くべきだろう。
隣の大陸では霊峰に行ったけど、別に秘境はあそこだけではないしね。探してない場所はまだ山ほどある。
「なら、今度もそっちだな。まあ、別の大陸でもいいが」
「まずは一つずつ行くの。手を広げすぎて動けなくなっても困るし」
「それもそうか」
一応、大陸はまだある。『スターダストファンタジー』においては、今のところ五つの大陸があっただろうか。
その中で最も大きいのがここ、エルガリア大陸であり、他の大陸は規模はそこまででもない。
まあ、そこまで大きくないとは言っても、面積的には普通にでかいんだけどさ。
今の時点でそのすべてに行くことは多分可能だけど、行ったところでそこまでうまみはないし、今のところは放置でいいだろう。
スターコアがどうしても見つからず、そこしかないというなら行くべきかもしれないが。
「んじゃ、また準備整えて、さっそく行くか」
「準備に関してはいつも旅終わりに補充してるし、問題はないの。今すぐにでも行けるの」
「まあな。予定は大丈夫なのか?」
「来客は今のところ全部終わらせてるの。問題ないの」
俺の仕事ってほとんど来客の相手だからね。
と言っても、商人達はもう大体相手にしたのか、最近はそこまでやってくることもなくなったし、外交官とかもそこまで頻度は高くないから問題ない。
霊峰に行っていた時に来たアフラーク王国の使者も、俺の手紙を受け取って帰っていったようだし、うるさいのはいなくなった。
強いて言うなら訓練が少し疎かになっている気もするが、ファウストさんがいる限りは多分問題ないだろう。俺達が日々強くなっているのはよく知っているだろうし、それに追いつけるようにと努力してくれているしね。
「じゃあさっそく……おん?」
「入っていいの」
さっそく出発しようとした時、扉がノックされた。
許可を出すと、入ってきたのはノクトさんだった。
ノクトさんだけど、仲間になったばかりでまだレベルも低いので、スターコア捜索隊に入れていない。
シュエと一緒に行きたがっていたけど、流石に危ないかなと思って止めたのだ。
もちろん、すぐに一緒に行けるようにするためにも急ピッチでレベルは上げているけど、まだ早いのが現状である。
さて、何をしに来たんだろうか? 一緒に行けなかったことに関しては、納得してもらったはずだけど。
「あ、取込み中だったか?」
「今ちょうど終わったところなの。どうしたの?」
「そ、そうか。えっと、ちょっと聞きたいことがあって……」
ひとまず部屋の中に入れ、椅子に座らせる。
ちょっと遠慮していた様子だったが、こちらから促すと、話し始めてくれた。
その内容は、シュエと最近連絡が取れないということである。
ノクトさんとシュエは、元々同じ卓を囲んでいた仲間であり、同じ幻獣というカテゴリーである。
そのせいもあって、二人は仲が良く、シュエが探索に出かける前はよく一緒にいたのを見ている。
で、シュエが探索に行く際、定期的に連絡できるようにと、二人には【テレパシー】のスキルを覚えさせていた。
しかし、ここ最近、シュエから連絡が届かず、こちらから連絡しても返事が返ってこないというのが続き、心配になって相談しに来たとのことである。
「【テレパシー】って、距離が離れすぎると繋がらないとかあるのか?」
「うーん、基本的に、距離は関係ないの。どちらかというと、特殊な場所にいるとか、MPが尽きているとか、そう言う状況だと考えるべきだと思うの」
【テレパシー】は基本的にどんなに距離が離れていても送ることが可能である。シュエがどこへ行こうと、それで繋がらなくなるということはないはずだ。
しかし、実際には繋がらない状態になっている。となると、【テレパシー】が使えない状況に陥っているということになるが。
特殊な場所で考えられるのは、主にボス部屋である。
ボス部屋が用意されているタイプのボスは、固有の効果の他に部屋のギミックが存在する。
そのギミックは様々あるが、中にはスキルが使えなくなったり、MPが使えなくなったりする場合もある。
そう言う場面なら、【テレパシー】が使えなくなっても不思議はない。
ただ、繋がらなくなったのが数日前からというのが気になるが。
「シュエはいつ出発したんだ?」
「確か、二週間くらい前なの。海に強いから、海岸線沿いの町を探してもらってたの」
スターコアはもしかしたら海に落下している可能性もある。
それが港町から見えるかどうかはわからないが、とりあえず海岸線沿いに探してもらって、何かあったら教えて欲しいと頼んでいたのだ。
そんな状況下でボス戦になったかと言われたら、ちょっと微妙である。
いやまあ、例えば海に化け物が現れて、町を守るために勝負を挑みに行った、とかならあるかもしれないけど、シュエがそうそう負けるとも思わない。
いつから繋がらなくなったかは正確にはわからないけど、数日もあれば、シュエならボスを倒して帰還するなり連絡を入れるなりしてくれそうだけど。
「シュエは大丈夫なのか? やられたりしてないよな?」
「シュエがそうそう後れを取るとは思えないの。ノクトだって、ネームドボスに勝ってたでしょ」
「それはそうだが……」
レベル5ならともかく、今のシュエのレベルは相当高くなっている。
【マリオネッター】としてのスキルも結構取っているし、そもそもリヴァイアサンとしてのスキルだけでも余裕で無双できるはずだ。
いくら一人だとしても、それだけで負けるとは到底思えない。
でも、全く可能性がないわけでもない。それこそ、魔王とエンカウントしたとかになれば、そのままやられてしまったという可能性もある。
ないと思いたいが、もしそうならちょっと深刻な状況かもしれない。
「でも、やっぱり心配だ」
「それは同意するの。ここは探しに行くべきだと思うの」
連絡が取れない以上、もしかしたら動けない状況にあるのかもしれないし、探しにいくしかないだろう。
何事もなければそれでよし、もし何かあったのなら、全力で助ける。
どうか、何事もない状態であってくれと思いながら、俺はシュエがいると思われる場所を予測し始めた。
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