第四百四十話:探索の手を広げて
第十五章開始です。
新たにフェラトゥス、ノクトさんを仲間に加え、仲間もだいぶ増えてきた。
プレイヤー、もしくはプレイヤー並みに強くなった人達はすでに二桁に突入しているし、兵士達も含めればかなり大規模な戦力になって来たことだろう。
今までは、仲間は王都にて待機してもらうことが多かった。
王都での暮らしに慣れてほしいっていう理由もあったけど、レベル上げやスキルの取得など、やって欲しいことは山ほどあったからというのもある。
ゴーレム式経験値稼ぎだとそんなに効率は良くないし、時たま各地に魔物討伐に行って貰ったりする以外は、全くと言っていいほど活躍の機会はなかったのである。
だから、そろそろ彼らにも仕事を与えるべきなのでは、と思った。
すなわち、スターコアの捜索である。
今のところ、スターコアの捜索は俺達しかやっていなかった。
そもそも、スターコアについて知っているのは基本的に国の上層部とか、偉い人ばかりで、普通の住人にはあまり知られていないことだった。
スターコアは国の上層部などによって秘密裏に回収され、大国なんかはそれを使って剣聖を生み出したりしているわけである。
だから、探すとなると、そう言う他の国の手が入っていない場所、いわゆる秘境を探す必要があり、そのためにはそれなりの戦闘力や移動力が必要になってくるわけである。
みんなのレベルは、最近入ったノクトさんなんかを除けばすでに軽く50は超えているし、この世界のレベルに当てはめれば、向かうところ敵なしと言っても差し支えないくらいである。
しかし、やはりそれでも心配というか、送り出すのにちょっとしり込みしていたこともあり、ずるずると引き延ばしにされていた。
でも、いい加減急がないと、魔王がいつ復活するかもわからない。だから、せっかく使える戦力があるんだから、使わない手はないだろう。
そう言うわけで、いくつかの班に分かれて、近場から捜索を行って貰っていたのである。
当然ながら、みんな【ワープポータル】と【テレパシー】は取得済みだ。この二つさえあれば、どんな場所からでも戻ってこれるし、離れていても会話が可能だからな。安全を考えると、必須のスキルである。
まあ、覚えられない人もいるけど、そこらへんは【スキルスロット】を利用して覚えさせたので問題はない。
万全を期すなら、彼らには王都に残ってもらった方がいいのかもしれないけど、自分だけ何もしないのは納得できないというから、比較的安全な場所に送り出したのである。
ほんとに、何事もなければいいんだけど。
「で、あれから三か月くらい経ったけど、今のところ成果はなし、なの」
なるべくバランスよく組ませることによって、定期的に連絡はさせているのだけど、今のところスターコアが見つかった、なんて報告はない。
それどころか、仲間が見つかったという報告もないから、本当に何もないのである。
アルメダ様の言い方だと、まだこの大陸にもそれなりに数は残っていそうなんだけど、もう近場にはいないってことなんだろうか?
プレイヤーの能力は、この世界の人達と比べて派手だ。【アローレイン】のように、物理的に再現できないスキルも存在する。
だから、もしいるなら、噂になっていてもおかしくはないと思うんだけどな。
レベル1で、まだ使えるスキルが少ないとかならまだしも、ここまで生き残っている人なら、普通にレベルも高そうだし、その傾向は強そうだけどな。
それとも、うまい具合に町に溶け込んでいるとかだろうか。レベルが低くても、普通の人間として仕事に就き、家を買い、平穏に暮らしている人もいるかもしれない。
最終的には元の世界に一緒に帰りたいから、できればそう言う人達も保護しておきたいけど、平和に暮らしているのにそれを邪魔するのもあれだし、こちらから行くのは憚られる。
もしかしたら、使命を知った上で、そんなの関係ないと思っている人もいるかもしれないしね。
できることなら、こちらに協力的な、レベルの高い人が仲間になってくれたら嬉しいところだ。
「この辺りに存在する秘境は大体調べた感じですか?」
「確実にそうとは言い切れないけど、地図上に存在する、人の住んでいない場所は粗方洗ったつもりなの」
ポータルに加え、特注の馬車も各班に用意している。移動に関しては、相当早くできることだろう。
ただそれでも、この大陸をすべて探すのは難しい。
そもそも、探しているのが秘境だから、大抵の場所は馬車で移動できない。その場所まで行くための交通手段としては利用できるが、捜索のためには使えないわけだ。
で、場所にもよるけど、この世界の秘境は結構面積が多く、ただ探すだけでもかなりの広さを探すことになる。
当然ながらそれだけ時間がかかるということであり、それらすべてを丁寧に探していたのでは、とてもじゃないけど時間が足らなすぎる。
班によって探し方は様々だろうが、やはりスターコアはそう簡単には見つからないようだ。
「となると、もっと遠くか、別の大陸ですか」
「うん。かなり気が遠くなりそうなの」
今までスターコアは三つ見つけているが、そのどれもが偶然見つけたものである。
いや、最初のはともかく、残り二つは見つけようと思って見つけたものだから偶然ではないかもしれないが、あるかもわからないものを闇雲に探していたのだから、偶然と言ってもいいだろう。
何か当てがあるわけでもないし、そもそも本当に存在しているのかもわからない。
人が増えたことによって探しやすくなったと思ったけど、そう簡単には見つからないようだった。
「【トレジャーセンサー】装備でも見つからないのか?」
「んー、まあ、多少は見落としは少なくなったとは思うの。ただ、反応が敏感すぎるというか、余計なものにも反応するというか……」
霊峰に行った時、装備に【スキルスロット】で【トレジャーセンサー】という、レアアイテムを見つけることができるスキルをつけることによってスターコアを見つけ出すという方法をとった。
あの時は、スターコア自体は見つかることはなかったが、一応レア度が高いものに反応自体はしていたと思う。だから、探索に行くメンバーの装備にも【トレジャーセンサー】をつけることによって、より一層スターコアを見つけやすくしたつもりだった。
だが、それによって見つかるのはスターコアではなく、別のものだったのだ。
例えば、ミスリル。
『スターダストファンタジー』において、ミスリルは確かに貴重なものだった。
一般流通している装備に使われている素材としては最もレア度が高いし、岩石系の魔物はドロップアイテムとしてミスリルを落とすこともある。
だから、ミスリルに【トレジャーセンサー】が反応するのはわかるのだが、その範囲が広すぎたのだ。
具体的に言うと、地表に出ていない、埋没されているミスリルすら反応してしまうのである。
ミスリルの鉱脈を見つけられるのは、それはそれでうまみはあるが、その地点に行ってもぱっと見は何もないように見えるし、それがミスリルだとわかってもだからと言って、じゃあこれは違うから別のを探して、という風に目標を変えることもできない。
そこにあるミスリルをすべて取り除かない限り、広範囲に広がっているであろう鉱脈のミスリルに反応し続けることになり、【トレジャーセンサー】が役に立たなくなるのである。
その他にも、貴重な薬草や茸、魔物を倒した際に落とすドロップアイテムなど、秘境にはレア度が高いアイテムが結構眠っているようだった。
これが素材収集や金策のために集めているというならそれらが見つかるのは嬉しいことだが、スターコアを一点狙いしていると考えると邪魔でしかない。
霊峰で船と謎の台座にしか反応しなかったのは相当運がよかったというわけだ。
「【トレジャーセンサー】は革命的だと思いましたが、そうでもないみたいですね」
「まあ、一応、アイテムが複数あった時は、最もレア度が高いものを優先する性質があるから、スターコアがあるなら多分それを示すとは思うけど、正直ストレスの方が強いの」
「うまくいかないもんだね」
流石に、ピンポイントでアイテムを探すようなスキルはない。
【トレジャーセンサー】がそこまで使えない以上、やはり虱潰しに探していくしかないようだ。
ちょっと行き詰まってるなと思い、思わずため息を吐いた。
感想ありがとうございます。




