第四百三十九話:霊峰を後にして
それから色々辺りを調べてみたが、特にこれと言ったものは見つからなかった。
恐らくだけど、【トレジャーセンサー】の反応は、この施設自体に反応したものなんじゃないかな。
お宝かと言われたら微妙な気はするけど、もし仮に、めちゃくちゃ強くなれる場所なんだとしたら、確かにお宝っちゃお宝である。
そのお宝を起動するために別のお宝が必要だとしても、レア度的にはかなりのものだろうしね。
スターコアの方が見つからなかったのは残念だけど、結構重要そうなものを見つけられたんだし、これはこれで収穫があったと見るべきだろうか。
結果的にではあるけど、仲間も増えたしね。
「さて、これからどうします?」
「できればスターコアの捜索、といいたいところだけど、ここにはない気がするの」
一応、山の反対側とか、探してないところがないわけではない。
けれど、冷静に考えて、こんな重要な施設の近くにスターコアが落ちてるかと言われたら微妙なところな気がする。
いや、ダンジョンとかでパズルのような仕掛けを解く時、そのきっかけとして重要アイテムを近くに置くことはあるかもしれないけど、この山では難しい気がする。
なにせ広大だし、本来ならスキル封印の瘴気が充満している場所である。
俺達のようにレベルが高いなら、多少のごり押しも可能ではあると思うけど、あれを食らった状態で山すべてを捜索するのは骨が折れるだろう。
スターコアが入った隕石を神様が落としているのだとしたら、こんなところではなく、もっと別のところに落とす気がする。
まあ、隕石が神様とか関係なく落ちてくるんだったらワンチャンあるかもしれないけど、そんなことあるのかな?
「ここら辺調べてみても、台座くらいしか目ぼしいものはなかったな」
「本当にこれだけのための場所なんだろうね」
材質は大理石のような感じだったけど、それ以外に気になるものはなかったように思える。
周りにある柱も、何か文字が掘ってあるわけでもないし、ただ単にこの場所と外を区切るための境界線のような役割なんじゃないだろうか。
フェラトゥスに何か感じないか聞いてみても、特に何もないというし、本当に、ただスターコアを置くだけの場所のようである。
強いて言うなら、割と新しめってことだろうか?
台座も、柱も、床も、そんなに汚れておらず、綺麗である。
こういうのって、昔から存在しているもので、苔が生えていたり、柱が折れていたりするようなイメージがあるのだけど、そう言うわけでもないらしい。
多分だけど、魔王に対抗するために新しく作った施設ってところじゃないだろうか。
元々、スターコア自体は何か他に道具や施設を必要とするわけではなく、それ単体で使えるものだし、複数集めたからと言って何かが起こるという設定もなかった。
当然ながら、こんなものが山頂にあるなんて設定はなかったはずだし、新しく作った施設というのは間違いではないような気がする。
まあ、思うのは、こんな装置使わなくても、直接何とかしてくれないかなってことだけど。
だって、神様なんだよ? この世界においては、恐らくゲームマスターに最も近しい存在だろう。
ゲームマスターは、シナリオ中は文字通り何でもできるくらいの権限を与えられている。その気になれば、プレイヤーのレベルを限界突破させるくらいお手の物だろう。
もちろん、そんなことやったらプレイヤーからブーイングが飛ぶだろうから、普通はやらないだろうけど、そうしなければ世界が滅ぶかもしれないという状況であれば、そう言う権力を使ったって誰も文句言わないと思うんだけどな。
それとも、ゲームマスターとは違い、ある程度制限があるんだろうか。
確かに、神様は地上には降りられないみたいなことは聞いたことがあるけど、その関係で直接手を出すことはできないとか?
こういう施設を経由しないと、強くすることはできないのかもしれない。難儀なことだ。
まあ、ゲーム的に考えるなら、簡単にクリアしてしまったら面白くないだろうからそれでいいのかもしれないけど、リアルでそれをやるとなるとちょっと怖いよね。
もしかしたら、魔王がこの施設に気づいて破壊しに来る可能性だってあるわけだし。
「今はこれ以上できることはなさそうだし、戻るの」
「わかりました」
あんまりここに長居するのは得策ではないかもしれない。
ずっと監視されているとは思わないが、もしかしたらあの団長が俺達の足取りを追ってこの場所を突き止める可能性もなくはないだろうし。
スターコアも今は三つしかないし、この場所を活用するとしても、かなり先になることだろう。
「フェラトゥスさん、どうしたの?」
「……いや、何でもない」
一応、いつか来る時のためにポータルを設置しようかと迷っていると、フェラトゥスが台座の方をじっと見ていることに気が付いた。
何かあったのか聞いてみたけど、特に答えることもなく、その場を後にする。
まあ、フェラトゥスは神様に転生させられたのだし、何か思うところがあったのかもしれない。
もしかしたら、無限の力の効果で人間に戻れる可能性もあるかもしれないし、死んだはずの仲間を生き返らせることもできるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていたのかもしれないね。
フェラトゥスの姿に関してはどうしようもないけど、もし何か方法が見つかったら試してみることにしよう。
「ふぅ、帰ってきたの」
その後、念のため山頂から少し降りた場所にポータルを設置し、城へと帰還した。
今回の収穫だけど、それなりによかったとは思う。
フェラトゥスとノクトさんを仲間にできたのは相当に運がよかっただろう。
特に、フェラトゥスに関しては本来は仲間にできないような相手だし、元ネームドボスとして活躍してくれることだと思う。
それに加えて、なにやらスターコアを使うべき場所を見つけることもできたし、後はスターコアをどうにかして集めるだけである。
まあ、その集めるのが大変なんだけどね。
今回はスターコアを発見するには至らなかったが、まだ探してない場所はごまんとある。すぐさま見つかることはないだろうが、そのうち発見できる機会もあるだろう。
魔王がいつ復活するかわからない以上は、あまり悠長にもしていられないけど、焦ってもいいことないからね。
「できることなら、魔王の居場所も把握しておきたいの」
今のところ、魔王が潜んでいる場所はわからない。
神様の話では、この世界にいることは確かなようだけど、それだけでは何の参考にもならないからな。
人目につかない場所なのは確かだろうし、もしかしたらスターコアを探している過程で見つけることもあるかもしれない。
その時は、覚悟を決めないといけないかもね。
一応、団長の話を信じるなら、魔王は傷ついていて動けない状況にあるらしいけど、それでも魔王は魔王だし、敵わないかもしれない。
基本的には逃げる選択をして、どうしてもとなったら俺が時間を稼いでみんなを逃がす形がいいだろうか。
そんな時が来ないことを祈るけど。
とにかく、不意の遭遇でもなんとかできるように、常に気を張っておくことにする。
次はどこへ行こうかと考えながら、今日はゆっくりと休むことにした。
感想ありがとうございます。
今回で第十四章は終了です。数話の幕間を挟んだ後、第十五章に続きます。




