第四百三十四話:防具職人のクラス
すぐに霊峰の捜索に戻りたいところだけど、寒さ対策をどうにかしないと探すに探せない。
ただ単に防寒具を着ているというだけではダメみたいだし、もっと本格的に、登山用具を用意する必要があるかもしれない。
荷物に関しては【収納】にしまえるから、問題はやはり防寒具の方だ。
今使っている防寒具は、いわゆる毛皮である。
今着ている防具の上から着れるように大きめに作った、もふもふの毛皮。
だけど、これの用途はせいぜい寒い日に着こむ程度のもの。流石に、雪山に着ていくには力不足のようだ。
少なくとも、きちんと隙間なく着れるもので、風にも強いものでないと無理だろう。
そうなると、防具として作るほかない。今までは、防具の上から着ているただの服だったけど、防具として着るならちゃんと隙間なく着れるだろうしね。
「材料に関しては、まあ何とかなるの。問題は誰に作ってもらうかなの」
一応、王様だけあって、専属の針子とかも存在はする。
元々、王様だったファウストさんはファッションには疎いようだったが、よく戦闘をするので服がほつれることがよくあり、それを直すのが主な仕事だったとかなんとか。
こういうのは専門家に頼むのが一番である。彼女らに頼めば、立派なものを作ってくれるだろう。
ただ、彼女らが作るのはあくまで服であって、防具ではない。
防具として着る以上は、防具としての性能も求められる。ただの服を着るなら、防具としてはせいぜいちょっと頑丈な布の服程度にしかならないだろう。
寒さは何とかなるかもしれないが、それだと戦闘面がかなり不安だ。
もちろん、スケルトン程度だったら防具なしでも十分対処は可能かもしれないけど、もしかしたらまたボスがいるかもしれないし、不意に強力な魔物に遭遇する可能性もある。
絶対ないとは思うが、そんな状態で魔王とエンカウントとかになったら最悪だし。
だから、できれば防具は常にいいものを身に着けておきたい。
そうなってくると、防具としての防寒具を作る必要があるわけだが、それには【アーマラー】というクラスに頼る必要がある。
【アーマラー】は、防具職人を表すクラスで、【ブラックスミス】と同じく、生産職である。
その名の通り、防具を作り出すことに特化しており、そのスキルを使って防具を作れば、強力な防具を作り出すことが可能だ。
まあ、ただ防具を作るだけだったら【ブラックスミス】でも作れるっちゃ作れるんだけど、あちらは主に金属鎧しか作れないのに対し、こちらは布や革も使うことができる。
金属鎧は重量がそれなりにあるので、筋力に振ってないキャラだとちょっと使いにくい。
それを補うことができるのが、この【アーマラー】というわけだ。
まあ、【アーマラー】になる奴なんてそうそういないと思うけど。
というのも、【アーマラー】は生産職のため、火力が低いという特徴がある。
どうしても、振る能力値が器用とかになってしまうので、攻撃力を上げる筋力にあまり振れないというのもあるし、そもそも攻撃系のスキルがあまりないのも特徴だ。
そりゃ、頑張れば戦えないことはないけど、ほとんどはセカンドクラスが取れるようになった後に趣味で取るくらいのクラスなのである。
それにしたって、武器を作れてその場その場に対応した効果を付与できる【ブラックスミス】と違って、【アーマラー】は防具職人だから、基本的に防御手段しか作れない。
そりゃ、火属性の相手だから火耐性を持つ防具を作って、というのはできるが、武器は行動消費なしで持ち変えられるのと違い、防具は1ターン消費しないと着替えられないというのもきつい。
まあ、そりゃ確かに今着ているのを脱いでまた別のを着るんだから、時間がかかるのは当たり前といえばそうだけど、そんなのをゲームで再現しなくてもいいのにとは思う。
金属鎧以外を作れて、重量の軽減ができるというメリットはあるけど、パーティを組めるなら、タンクがいることがほとんどだし、タンク以外はそこまで強い防具を着なくてもなんとなかる場合は多い。
見た目だけ変えたいなら相当品ルールというのがあって、効果はそのままだけど見た目だけ変えるということができるし、ファッションとしての意味も薄い。
まあ、それでも【ブラックスミス】が作る防具よりもはるかに高性能なものを作れるし、一部攻撃を吸収とか完全無効化とか、相手によっては完封できる防具を作ることもできる。
それに何より、【スキルスロット】というスキルによって、その防具を着ている間、追加でスキルを取得することができるというスキルが強い。
最強の防具を作るのだったら絶対に必要になってくるクラスでもあるし、突き詰めるなら必須のクラスでもある。
別に、ただ雪山捜索をするだけだったら、そんな強い防具はいらないし、寒さ対策さえできるのなら、針子さんに頼んで作ってもらうのでもいいけど、いずれ魔王と戦うのであれば、最強の防具もいずれ必要になってくるだろう。
できることなら、欲しいところではあるけど、そろそろ手を出してみるべきだろうか?
なるんだったら、俺がなるべきだと思うし。
「んー、まあ、後で見つかったとしても、無駄にはならないだろうし、試してみてもいいかもしれないの」
野生の【アーマラー】がいる確率は、【ブラックスミス】よりもよっぽど低いし、仲間探しで見つけるよりも自分がなった方が手っ取り早い。
【ブラックスミス】に関してはラズリーさんが見つかって、俺の負担はなくなったも同然だし、手を出してみるにはいい機会だろう。
「さて、それじゃあレベルアップして、と」
経験値は余っているのでクラスチェンジするのは問題ない。
【ブラックスミス】に続いて【アーマラー】まで取るとか、完全に遊んでるよなぁ。
いやまあ、必要に駆られてなってるんだから別に遊んでいるわけではないけど、普段だったら絶対取らないクラスだし。
取り合えず、【スキルスロット】はたくさん取っておこう。一つにつき一つスキルが増えるから、取るだけ得だし。
「防寒具を作ったら、後でメイン装備の方も作ってみるの」
まずは防寒具で練習である。
材料は毛皮と綿でいいだろうか? 毛皮に関しては、今まで狩った魔物を解体すれば多少は手に入るし、綿はそんなに入手は難しくない。
まあ、皮はちゃんと革に加工しないといけないからその辺は面倒くさいけど、【アーマラー】ならそれくらいはたやすい。
戦闘能力は低いけど、防具に関してだけはめちゃくちゃ強いのが【アーマラー】だ。せいぜい、最高の防具を作るとしよう。
「えーと、まずは材料を用意して……」
【ブラックスミス】とかと同じなら、多分材料を用意すれば一瞬で作れるはず。
もちろん、追加効果とか色々決めなくちゃいけないから、その辺の時間はかかるだろうけど、どんなのがいいかな。
寒さ対策に特化したもので、できれば戦闘もこなせて、ある程度有用な効果が付けばいいかな。
となると、これをこうして……。
あれこれ考えながら材料を用意していき、スキルを発動させて防寒具を作る。
やっぱり作る時は一瞬だな。
「なかなかいいのができたの」
効果としては、凍結無効、衝撃吸収辺りをメインに、つけられる範囲で色々つけてみた。
まあ、これは材料のレア度がそんなに高くないし、つけられる効果も限られていたけど、ただの防寒具としてはかなり優秀な性能になったんじゃないだろうか?
見た目も、それなりにおしゃれにできたつもりだし、これならみんなが着ても違和感はないだろう。
一応、量産するのは意見を聞いてからにするけど、多分大丈夫だと思う。
満足いく出来にちょっと喜びながら、みんなに見せるために部屋を後にした。
感想ありがとうございます。




