第四百三十一話:フェニックスのクラス
仲間になって欲しいという話は、すぐに受け入れられた。
元々、もしかしたら一緒に遊んでいた友達がこの世界に来ているかもとは思っていたようで、安全な住処を確保できたら、探しに行こうとは思っていたようだ。
俺がその一人であるシュエをすでに仲間にしていることを話したら、二つ返事で了承してくれたよ。
それで、ステータスだけど、やはりシュエと同じレベル5だった。
レベル5でフェラトゥスに挑んで勝てるってやばいな。いくら相性がいいとはいえ、普通は呪いやデバフまみれにされて終わりだと思うんだけど。スキル封印もあったことだし。
まあ、元からフェラトゥスもそんなに乗り気じゃなかったってことなのかね。本来なら固定値でも回避できそうな攻撃にも当たってたってことだろうし。
スキル自体はかなり強力なものが揃っていた。というか、フェニックスのスキルが大抵が優秀なものしかないって感じだけど。
そもそも、【転生の炎】がそのままの性能であるのがおかしい。
もしかしたら、プレイヤーになることによって多少弱体化されているかなとか思ったけど、見た限り全然そんなことはなさそうだ。
【転生の炎】は、HPがゼロになった時、自動で発動して、HP全快で復活するというもの。
食いしばりとかでなく、完全な振出しに戻るわけだ。
いや、一応MPは減っているままだから、完全なってわけではないけど、【転生の炎】自体は特にコストも必要としないので、倒されても延々と復活し続けるわけである。
もちろん、それだと埒が明かないので、敵として出る場合は、このスキルを使った時点で撤退し、プレイヤーの勝ち扱いになるのだけど、それがそのままプレイヤー側に来たらぶっ壊れもいいところである。
プレイヤーが諦めない限り、延々と復活し続けられるってことは、絶対に負けないってことなのだから。
一応、パッシブスキルすら封印するスキル封印だったり、復活系のスキルを無効化する攻撃をされたりすれば復活はできなくなるけど、そんなのかなり稀だし、実質無敵と言っていい。
これを許可したゲームマスターはプレイヤーを負けさせる気がないんだろうか。それとも、使った時点で自重してね、みたいなお願いでもしてたんだろうか。
どちらにしても、生死を賭けたひりひりするシナリオよりは、ロールプレイを重視したワイワイするシナリオを好んでいそうである。
「クラスは、【ルーンマスター】?」
〈おう、なんかかっこよさそうだったからなってみた〉
【ルーンマスター】とは、ルーンと呼ばれる文字が刻まれたアイテムである、ルーン石を消費し、様々な効果を発揮するクラスである。
得意なのは主にバフで、攻撃力や防御力、回避率、命中率など、大抵のものは効果対象にすることができるだろう。
ただ、バフの対象は自分自身だけで、味方をサポートするのはちょっと苦手な印象がある。
一応、ルーン石を複数個消費して、消費した数だけ味方にもバフをかけるスキルがあるが、そもそもルーン石が結構希少で、通常売りされておらず、手に入れるには作成スキルで作り出すか、そういうNPCがいる場所に行って、少し割高で作ってもらうかしかない。
まあ、その分バフ量的には他のクラスよりも結構高めなので、弱いってわけではないが、序盤では使いにくいって感じだな。材料にもお金かかるし。
「ルーン石は持ってるの?」
〈あと2個ずつってところだな〉
「全然ないの」
いや、レベル5から開始した初心者冒険者にしては持ってる方なのか?
フェニックスの力があれば、ルーン石に頼らなくても戦うことはできるだろうし、ボスだけに使うってなれば十分っちゃ十分なのか。一回使えば、シーン終了、つまり戦闘終了までは効果が持続するわけだし。
この世界でもルーン石作れる人いるのかな。結構珍しいクラスだから、あんまりいなさそう。
というか、クラスがないならルーン石なんてただのクズ石だし、作れる人がいるわけないか。
となると、作るには作成スキルを取得してもらうしかないか。【セージ】あたりならワンチャン作れそうな気はするけど、多分【ルーンマスター】が作った方が確実だろうしね。
いざとなったら俺が作るか。今回の戦闘の影響なのか、また経験値溜まってるし。
〈ほとんど使わないから大丈夫だ〉
「それならいいけど、魔王戦では使いそうだし、量産はしておいた方がいいの」
〈材料があれば作れると思うが、あるのか?〉
「んー、魔物の血なら多分何とかなるの。ベースの石に関しては、最悪普通の石でもいいし」
ルーン石の主な材料は魔物の血とベースとなる石だが、それらのレア度によって品質が多少変化する。
強い魔物の血だったり、魔石のように魔力の籠った石を使えば、それを使ってスキルを発動した時に、プラス補正がかかることがあるわけだ。
万全を期すなら、強い魔物の血と魔石を使うのがいいんだろうけど、強い魔物をそんなポンポン狩ってられないので、基本は普通の石と、雑魚魔物の血で作るのがいいと思う。
最低品質でも、プラス補正がなくなるだけで劣化するわけじゃないしな。
「帰ったら用意しておくの。できるだけ作っておくことを勧めるの」
〈まあ、そう言うことなら頑張るかね〉
まあ、ただ戦うだけだったら、他にも【ルーンマスター】がいない限りはそんなに量産する必要はないけど、一つ量産する意味のあるものもある。
それが、【インパクトルーン】である。
【インパクトルーン】は、簡単に言えば爆弾を投擲するスキルだ。ルーンによって爆発属性を付与し、それを投げつけることによって攻撃するスキルである。
一回の攻撃の度に一個消費するので、バフして終わりの他のスキルと違って消費数が多く、一回の戦闘でも複数個消費する可能性がある。
別に、これを使わないという手もあるが、このスキルは【ルーンマスター】の中ではかなり強力なスキルで、範囲内の敵すべてにダメージを与える上に、他のルーンによるバフが乗るのでダメージも大きい。
アイテム一個を消費するデメリットこそあるが、それに見合うだけの火力はあるわけだ。
もちろん、フェニックスとしての力を考えるなら、そっちのスキルで範囲攻撃した方がいいこともあるかもしれないけど、攻撃手段は多い方がいいに決まってる。
使うかはわからないけど、材料があるなら作っておくべきだろう。
「これにて一件落着ですか?」
「まあ、目的の一つであるフェニックスは見つけたし、フェラトゥスまで仲間にできたなら万々歳ではあるけど、本命が見つかってないの」
そう、この山に来た目的は、隕石、もといスターコアを探してのことである。
まあ、絶対にあるかと言われたら、当てもなく探しているだけなのであるとは言い切れないが、この霊峰はある可能性は非常に高かった。
でも、今のところそう言ったものは見つかっていない。仲間を見つけられたことは喜ばしいが、本命であるスターコアが見つからないのは少し残念だ。
「ここからさらに捜索してみる?」
「まあ、スキル封印もなくなったし、今なら捜索は簡単な気はするの」
スキルが使えたところで、スターコアを直接探せるわけではないが、やはり探索のしやすさが違う。
今から探すのも悪くはないか?
俺は外の雪景色を思い浮かべながら、どう探したものかと思案した。
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