第四百十六話:仲間か、スターコアか
第十四章開始です。
ラズリーさんの件が終わり、一度ヘスティアへと帰ってきた。
一応聞いてみたけど、やはりラズリーさんは【ブラックスミス】らしい。武器を作ることに特化していて、ある程度なら望んだ性能の武器を作成することも可能だ。
なので、やろうと思えばすべての武器や防具にエンチャントを施した状態で納品してもらうことも可能ではあるけど、流石にそれは時間がかかりすぎる。
ただ単に武器防具を作り出すならまだしも、追加効果を付けるとなればその効果を考えなくてはならないし、すべて同じにするとしても一手間かかる。
ただでさえ数が必要なのに、そんなことをさせるのも悪いので、追加効果を付けるのはプレイヤーが使う武器のみで、他の兵士達には悪いけど普通の武器を渡すことにした。
まあ、普通の武器と言っても、攻撃力は今までの武器と比べれば相当高い。今の兵士達の練度を合わせれば、強力な武器になってくれることだろう。
「武器も手に入ったし、後は仲間が増えて、魔王の手掛かりが見つかって、スターコアの情報を手に入れるだけなの」
「全然だけってレベルじゃないな」
「うるさいの」
シリウスに突っ込まれたが、まあ確かにそうなんだよね。
現在、兵士達の他に戦力として数えているのは、カイン、シリウス、サクラのいつものメンバーと、センカさん、エンズさん、クズハさん、クリーさんのプレイヤー達、それにイグルンさん、シュライグ君、グレイスさん、アスターさん、アルマさん、ファウストさんなどのこの世界の住人達である。
プレイヤーは全部で8人。ラズリーさんを入れるとしても9人しかいない。
アルメダ様の話によると、この世界に送り込まれたプレイヤーはおおよそ100人くらいで、すでにその三分の一ほどが死亡しているらしい。
そう考えると、約十分の一も集まっているだけましなのかなとも思うけど、まだ戦力的には不安が残る。
十分レベル上げはしているけど、やはり数は重要だ。特に、この世界では飛びぬけて強いプレイヤーの存在は大事である。
だから、できることならもっとプレイヤーの仲間が増えてほしいところだ。
「仲間を探すのはいいですが、正直手詰まり気味ですよね」
「確かにね。あれから結構探したけど、見つからなかったわけだし」
「それが問題なの」
あれから約三か月。休む間もなく俺達は旅に繰り出していた。
仲間を探すため、魔王の手掛かりを探すため、スターコアを探すため。それらをすべてひっくるめた旅である。
しかし、あれからというもの、ぱったりと情報はやんでしまった。
仲間も見つからないし、魔王の手掛かりもない。当然スターコアも見つからない。
今までは、大雑把だったとはいえ、アルメダ様が道を示してくれていたから、何とかなっていた。
けれど、その指標がない今、世界中に存在するたった数十人を探し出すのは骨が折れるようである。
アルメダ様に再び話を聞くにはスターコアが必要だが、とりあえずヘスティア国内を洗ってみたけど情報はなし。近場の国の国境付近まで手を伸ばしたけど見つからなかった。
まあ、流石にそんな簡単には見つからないよね。
幸い、魔王が復活したなんて噂は聞かないが、動けない状態だと聞いたとはいえ、いつ復活するかもわからない。
そう考えると、この三か月は焦燥感に満ちた三か月だったと言えるだろう。
「もうこの大陸にはないんじゃないか? あっても、もっと遠くの国に行かないとないと思うぞ」
「アルメダ様の話が本当なら、仲間の方はこの大陸にもまだいるようですけどね。スターコアを探すだけなら、別の大陸に行くのも手だとは思います」
「手掛かりなしに虱潰しに探すか、スターコアを見つけてヒントを貰うかってところだね。どちらもかなり確率が低いけど」
「うーん……」
国中をすべて探しきった、と言うわけではないが、自国や近場の国はかなり調べ上げている。表に出回らない情報だとしても、草の人達が頑張ってくれているし、そうそう見逃すことはないだろう。
となると、草の人の手も届かない遠国にいるということになってくる。
別に、遠出するのはいいけど、夜には戻らなければならないっていうのが地味に面倒くさいんだよね。来客がある日はそもそも旅ができないし。
まあ、旅を許してもらっているだけましなんだけどさ。
「どうします? 仲間を優先するか、スターコアを優先するかで話は変わってきそうですが」
「んー……なら、ここはスターコアを優先するの。どのみち両方探すけど、スターコアの方は秘境にあるだろうし、探そうとしないと見つからなそうなの」
現在残っているプレイヤーは、恐らくそれなりのレベルがあると思う。
すでに4年も経過しているし、レベル1で放り出された初心者が生き残っているとはあまり考えられない。
まあ、運よく町に出られて、運良くお金を稼ぐ方法を見つけられたのなら、もしかしたら生き残ってる可能性もあるけど、そうでなければとっくに淘汰されていることだろう。
だから、もしそう言う人達がヘスティアの噂を聞きつければ、仲間だと思って近寄ってくる可能性はゼロではない。
そこまで大々的に言ってないとはいえ、実力主義であるヘスティアで王になっているのがただの少女となれば、プレイヤーなら勘づいてもおかしくないし。
対して、スターコア、と言うよりそれが入った隕石は、探そうと思わなければ見つけられない。
特に、隕石にスターコアが含まれていることは大国とかなら知られているようだし、わかりやすい場所に落ちたものはすでに回収されている可能性が高い。つまり、天然物を探すなら、秘境を訪れなければならないということだ。
そんなの、そこに行かない限り絶対見つからないからね。そう言う意味で、スターコアを優先するということだ。
「わかりました。この大陸で探しますか?」
「せっかくだから隣の大陸に行くの。別大陸にいる仲間をついでに見つけられたら、後々楽になりそうなの」
「そうですね。最悪、この大陸ならあちらから声をかけてくるかもしれませんしね」
「そう言うことなの」
隣の大陸は、あの時はクズハさんを見つけてすぐに帰ってきてしまった。
踏み込んだのは港町の一つだけであり、その奥地には一歩も足を踏み入れていない。
であるなら、まだ見ぬ仲間もいる可能性があるし、秘境にスターコアが眠っている可能性もなくはない。
そうと決まればさっそく出発の準備をしなくてはね。
「そういえば、貿易は再開されたの?」
「ああ、それなら再開されたみたいですよ。と言っても、現在はアラメク商会が試験的にやっているだけで、他はまだらしいですが」
「……独り占めなの?」
「まあ、商人ですし、そう言うこともあるのでは?」
まあ、つい先日までリヴァイアサンがいた海域に船を出す人はそんなにいないだろうけど、教えてあげたんだから確認が取れ次第他の人にも伝えたらいいのに。
多分、しばらくはアラメク商会が独占的に貿易品を持ち込むんだろうな。そして、高い値で売りつけると。あくどいねぇ。
ま、あそこは一応ヘスティアの船を守ってくれていた商会だし、多少の優遇は問題ないだろう。
それに、しばらく経てばアラメク商会が全然船をロストしないことに気が付いて、他の商会も船を出すだろうしね。
商人らしい強かさを見せつけられて、ちょっと苦笑いが浮かんでしまった。
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