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第三百九十四話:魔王の考察

 その後、村長達と先程の人物について話していたが、恐らくもう来ないだろうということで決着がついた。

 なんか、話を聞いた限り、俺のことを狙い撃ちにしてきたようだし、村自体には何の用事もなかったんだろう。

 だから、俺が村から離れれば、新たにやってくることはないと思う。

 まあ、憶測だから絶対に大丈夫とは言い切れないけど、もし村に危害を加えるつもりがあったなら、もう少し被害があってもよかったと思うし、大丈夫だと信じたい。

 俺にできることは、さっさとこの村を離れることくらいだ。


「では、お気をつけて。改めて、クロを助けていただきありがとうございました」


「世話になったの。今度は変な奴に見つからないように注意するの」


「ばいばい、アリスお姉ちゃん」


 最後にクロちゃんの頭を撫で、村を後にする。

 帰り際、あの冒険者らしき三人の下に向かってみたけど、すでに姿はなかったから多分起きて帰っていったのだろう。

 まだ村を探している可能性もあるけど、まあ、容易にあそこには辿り着けないと思うし、多分大丈夫。

 憂いも消えたので、森の街道まで戻る。

 さて、カイン達はどこまで進んでいるだろうか?


『カイン、聞こえるの?』


『アリスさん、大丈夫ですか? もう結構経ちましたが、向かわなくて大丈夫ですか?』


『ああ、それなら大丈夫なの。もう帰ってるところなの』


 【テレパシー】で念話を送ると、すぐに心配そうな声が返ってきた。

 カインも俺の実力は知っているだろうに、何を心配する必要があるのか。

 いやまあ、あの団長がその気になったらまた無力化されてたんだけどさ。

 あの時は容赦なく入れ替えたくせに、今回は何で襲ってこなかったのか気になるけど、伝言とやらを伝えるのが目的だったんだろう。

 いったい誰からの伝言なのやら。まあ、ある程度予想はつくけど。


『それはよかった。森を抜けたあたりで待機していますので、問題なければ帰ってきてください。それとも、こちらから迎えに行きましょうか?』


『そのまま待っててくれたらいいの。特に邪魔者もいないし、すぐに到着するの』


『わかりました。お待ちしています』


 そう言って【テレパシー】を終了する。

 ふと空を見上げてみると、ちょっと暗くなってきていた。

 夜には城に帰るとはいえ、ちょっと急いだほうがいいかもしれない。

 俺は少しだけ速足で待機場所へと向かっていった。


「で、その指を鑑定したら変な記憶が流れてきたと」


「そういうことなの」


 合流し、いい時間だったのでポータルで城へと戻った後、俺の部屋に集まって情報を共有しておいた。

 魔王らしき記憶に、魔王と関係のありそうな団長の話。これらの情報は確実に重要なものになるだろう。

 みんなもそれがわかっているのか、真剣な表情で話を聞いてくれた。


「その記憶と言うのは、魔王の記憶で間違いなさそうですね。いまいち状況がわかりませんが、魔王も何か理由があって世界を滅ぼしていたってことでしょうか?」


「理由があって世界滅ぼすって何したらそうなるのかね。俺には調子に乗って神様に挑んで、返り討ちに遭って自棄になってるようにしか聞こえなかったが」


「少なくとも、魔王に命令できる人がいたってことは間違いないんじゃない? アリス、魔王よりも偉い人って誰かいないの?」


「うーん、いないと思うの。魔王は魔物達の王だし、意見できる悪魔はいるだろうけど、一方的に上から命令できるってなると……邪神とかなの?」


 まあ、邪神なんてルールブックに載ってなかったけどな。

 でも、神様がたくさんいるんだし、邪神の一人や二人いても違和感はなさそう。

 邪神も神様と同じように地上に降りれないという縛りがあるなら、魔王に地上を滅ぼさせた理由も一応あるっちゃある。


「邪神か。魔王が表ボスだとしたら、邪神は裏ボスみたいなもんか?」


「魔王の時点で裏ボス並みに強いと思うの。それより強いってなったら、多分正攻法じゃ勝てないの」


 魔王でさえぶっ飛んだ能力値してるのに、それ以上の奴と戦えなんて言われてもごめん被る。

 と言うか、ほんとに邪神が存在するかどうかもわからないしね。

 もしいるんだったら、アルメダ様がそのことについて触れていそうだし、これまで言わなかったってことは、邪神の存在はなさそうな気もする。

 まあ、邪神も神様だというなら、身内の恥として言えなかった可能性もなくはないけども。


「そして、今魔王は弱っていて動けない状態にあり、アリスさんに復活の手伝いをして欲しいと思っていると」


「聞く限りはそんな感じだと思うの」


「あの団長なにもんだよ。普通の人間じゃなさそうだな」


「考えられるのは悪魔だと思うの」


「取り押さえた時はそんなに強いとは感じなかったけど、悪魔って弱いの?」


「魔物の中では強い方だと思うの」


 まあ、悪魔にもピンからキリまでいるし、弱い悪魔がいても不思議はないけど、あの団長はどちらかと言うと、搦め手特化なんじゃないかなと思う。

 【ボディスワップ】らしきスキルを持っているようだし、瞬間移動もできる。多分、真正面から戦うことは想定していないんじゃないだろうか。

 伝言は十中八九魔王か、魔王に付き従う悪魔からのものだろうし、悪魔の中でもかなり上位に位置する存在なんだろう。

 そんな奴が何でサーカスなんてやってるのかって話だけど、カモフラージュか何かか? あるいは趣味か。

 どちらにせよ、また会う機会はありそうな気がする。


「なんでわざわざアリスさんに復活の手伝いをしろなんて言ってきたんでしょうね?」


「さあ。多分、あの記憶を見たからだとは思うけど」


「記憶を見たなら同情してくれると思ったんじゃねぇか? 話だけ聞けば、誰かに命令された魔王が、仕方なく時代を粛正し、その後神様に返り討ちに遭ってボロボロになって、最後は子供に絆されて指まで差し出した善人に見えなくもないし」


「流石にそれは都合がよすぎる見方だと思うの」


「わかってるよ。あくまで予想の話だ」


 まあ、確かに凄く都合よく見ればそう見えなくもないだろう。記憶を見た俺がそう言う解釈をし、魔王にも色々理由があったんだ、と思ったなら、同情して復活に手を貸す可能性はゼロではなくなる。

 ただ、あいつこっちが魔王を倒すことが目的ってことを知ってたんだよな。

 仮に同情によって復活を誘引するなら、知っててもわざわざ言わないと思うんだけど。あるいは、そんな奴に協力してほしいなんて言わないだろう。

 どうにも噛み合っていないというか、よくわからない。あいつは一体何がしたかったんだ?


「一応聞きますが、アリスさんは魔王復活に手を貸すつもりですか?」


「いや、貸すわけないの。貸すとしても、こちらの準備が完全に整って、復活した瞬間に叩き潰せるような状態になってからにするの」


 そもそも、手を貸せと言われても何したらいいかわからないしね。

 怪我してるっていうなら俺が【ヒールライト】でも掛けてやれば治るんだろうか? それとも、それくらいじゃ治らないのだろうか。

 確か、魔王は自動回復スキルも持っていた気がするから、それで治らないなら【ヒールライト】でも難しそうだけど。


「まあ、団長の言葉を信じるなら、すぐには復活しないってことはわかったの。だったら、今のうちに準備を整えておくの」


 完全に鵜呑みにはしたくないが、わざわざあれだけを伝えに来たのだったら労力もあるだろうし、多少は信用してもいいだろう。

 もちろん、未だに居場所はわからないし、油断は禁物ではあるけど、今はただひたすら強くなっていけばいいと思う。

 そのためにも、まずは仲間を確保しなければ。

 そう考えながら、次の日に向けて解散した。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] サーカスは趣味と実益は兼ねてそう
[一言] あの団長は(推定)悪魔でしたか。色々と気配なく侵入してきたりもしてましたし、暫定の正体に まぁそうじゃないとできないよねと思いました
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