第三百六十六話:次なる一手
レベルアップに関しては大体片付いた。
経験値的に、多少の差はあるが、概ねみんなレベル50から90くらいまでは上げられたと思う。
めちゃくちゃ時間かかったわ。その人がその時持っていた経験値分上げただけなのに、それだけで二週間である。
もちろん、取るスキルが明確に決まっていたセンカさんなんかはそこまで時間はかからなかったけど、それ以外の人達はあーでもないこーでもないと言いながら決めていった気がする。
まあ、それがレベルアップの醍醐味だし、悪いわけではないんだけど、流石にずっとつきっきりなのは疲れた。
でも、その甲斐あって、戦力はかなり向上したと思う。
カイン達も、ついにレベル100になったし、レベルに関しては最低限の準備は整ってきたって感じかな。
「さて、お次はスターコアの捜索なの」
あらかたレベルアップも終えたので、次はスターコアの捜索である。
スターコアに関しては、最初に見つけた時に七つ集めると? みたいなことが書かれていただけで、何が起こるのかはよくわかっていないが、スターコアを通して神様と話せることを考えると、重要なものであることは確かだろう。
スターコアは願いを叶えてくれるという話もあるし、これを使って神界を復活させるとか、あるいは粛正の魔王を滅ぼすとか、そう言うことができるんじゃないかと思っている。
まあ、後者に関しては希望的観測なだけで多分できないと思うけどね。
神様がそのために俺達を呼んだのなら、スターコアではどうしようもないだろう。スターコアは所詮はただの莫大なリソースを持つだけの石なのだから。
「捜索はいいが、どこに行くんだ?」
「まだ決めてないの」
「おいおい、そんなんでいいのかよ」
「そんなこと言われても、情報が何もないの」
スターコアは、特殊な隕石に入って降ってくることはわかっている。そして、それらは主に大国が所有しており、剣聖や聖女を生み出すのに使われているということもわかっている。
入手する方法は、隕石から採取するか、大国に譲ってもらうかになるわけだが、どちらも難易度はかなり高い。
そもそも、隕石自体が降ってくる頻度かかなり稀で、そうそう見つかるものではないし、大国に関してはせっかく手に入れた金のなる木を手放すとは思えない。
最悪国に喧嘩を売ることにも繋がりかねないので、できることなら穏便に済むであろう隕石から発見したいところだけど、果たしてどこにあるのやら。
前提条件を付けるとしたら、まず人の出入りが多い場所にはないだろう。
町を始め、人が行き来する街道とかその周辺は、隕石なんて落ちてたらすぐに気づくと思う。
落ちてきた時にかなりの衝撃があるだろうし、近くに人がいたら気づかないってことはないだろう。
まあ、見た目はただの隕石だから、知らない人からしたら、でっかい石が降って来た程度にしか思わないかもしれないが、それを大国なんかが察知したらすぐにでも調査隊が派遣されているだろう。
隕石からスターコアが取れることは上層部しか知らないようだが、だからこそ情報網は厚いだろうし、下手に別の国に手を出されても困るだろうから迅速に動くはず。
だから、人目につく場所に降ってきた隕石はすぐにでも回収されてしまうと思う。
それこそ、目の前に降って来たばかりと言うのでもなければ、そこからスターコアを見つけるのは不可能だろう。
なので、もし未だに見つけられていないスターコアがあるとしたら、人目につかない秘境とかじゃないだろうか。
そう言う場所を探索し、隕石を見つけることができれば、誰に文句を言われることもなく回収することができるだろう。ついでに冒険もできるし一石二鳥である。
まあ、問題は情報がなさ過ぎて秘境と言ってもどこを探すべきかわからないってことだけど。
「秘境と言うと、この世界では結構な個所が該当しますね」
「一回滅んだせいか、放棄されてそのままって場所もあるみたいだしね。ヘスティア王国だけに絞っても、それなりにありそう」
「やっぱり行くなら近場からか?」
「いや、ヘスティアにあるんだったら後回しにしたいの」
「なんでだ?」
「自国内なら、取られたら反論ができるの。流石に、隕石を持ち出そうとして全く気付かないってことはないでしょ」
「まあ、それもそうか」
仮にヘスティア王国内にスターコアがあるなら、それを持ち出そうとすればすぐに気づくだろう。
もちろん、隕石をその場で割って、スターコアだけ持ち出しているっていうなら気づかないかもしれないが、俺達のように力があるわけでもないなら専門の施設にでも持っていかなければ隕石は砕けないと思う。
確か、オリハルコンだっけ? めちゃくちゃ硬い素材らしいし、持ち出すなら絶対に巨大な隕石のまま持ち出すはずである。
その辺に関しては通達しておく必要があるけど、気づきさえすれば勝手に自国のものを持ち出すなと言い訳ができる。
たとえ石ころでも、国にとって重要と言うなら立派な財産だしね。
なので、あるなら後回しにしたいのだ。
「なら、別の国か。どっから行くんだ?」
「それだけど、クリング王国にしようと思ってるの」
「ほう、その心は?」
「秘境に心当たりがあるの」
クリング王国の秘境。すなわち、南にある未開拓地域である。
あそこは、魔物が多すぎて結局開拓を諦め、それ以来砦を建てて魔物の侵入を防いでいるだけで全く入っていないらしい。
俺が最初に降り立った場所でもあるが、あそこなら何かあってもおかしくないのではないだろうか?
「なるほど、アリスさんが最初に降り立った場所ですか」
「確かに、ゲームなら始まりの場所ってだけで何かありそうだよね」
「なら、俺達の始まりの場所にも何かあるのか?」
「さあ、私はすぐにエルフ達に囲われちゃったし、そんな秘境ってわけでもなかったと思うけど」
「場所次第ってことかね」
「まだ何かあると決まったわけでもないの」
別にスターコアを探すために歩いていたわけではないのでよくわからないが、結構歩いていたのに何も見つけられなかったんだから本当に何かあるかはわからない。
もしかしたら何もないかもしれないし、全くの無駄に終わるかもしれない。
けど、情報がないんだからそんなの気にしてたら一生動けない。
とにかくやるだけやってみて、ダメだったらその時考えればいい。そんなスタンスでいいと思う。
「じゃあ、行先はそこだな」
「補給できないだろうから、食料は多めに持っていくの」
「別に帰ってくるんだし必要なくねぇか?」
「備えあれば患いなしなの。唐突に帰れなくなった時のことも考えておくの」
「まあ、そりゃそうか」
俺が戦闘不能にならない限り、ポータルが使えなくなるってことはないと思うが、用心に越したことはない。
テレポート系のスキルは、場合によってはゲームバランスを崩壊させるから、場所によっては制限がかかることもよくある。
この世界でそれが適用されるかどうかはわからないが、もしあるなら警戒しておいた方がいいだろう。
まあ、今なら最悪方角さえわかれば帰ってこられるとは思うけどね。
もう二度とあんな絶望は味わいたくないし、しっかりと準備しておくとしよう。
そんなことを考えながら、出発の準備を進めるのだった。
感想ありがとうございます。




