第三百二十七話:魔物の征服者
ひとまず、アラメクさんには協力してくれる船乗りがいないか募集をかけてほしいという旨を伝えておいた。
一応、これでも実力主義と言われるヘスティア王国の王である。こんな見た目でも、その実力に関しては周辺国であるこの国なら信じているだろう。
だから、俺が倒せるというのなら、本当に倒せるかもしれないと期待してくれる人はいるかもしれない。
そう言う人が集まって、船を操船してくれたら一番いいんだけど、果たして集まるだろうか。
俺は集まらないと思う。
そもそも、ヘスティアの兵士は言うほど強くはなかった。
今でこそ、俺が鍛えた影響でかなりのレベルになってくれてはいるけど、元々はそこまで大差はなく、小国であるバーンド王国が一歩引いているくらいだっただろう。
もちろん、王様であるファウストさんは強かっただろうが、逆に言えばそれ以外はそこまででもなかったわけで、そもそもヘスティアが強いというイメージがあまりないかもしれない。
それに、先の戦争で俺の実力が知れ渡っているのだとしても、一応元は敵国である。今だって、わざわざ貿易相手から外しているのだし、そんな国から要請されたところで受けたくないと思うのが普通だろう。
受けるとしたら、海の向こうから渡ってきた別の国の船乗りとかだろうか。あるいはヘスティアのことを知らない田舎者とか。
どちらにしろ、この町にそれらの人材がいるとは思えない。集まったとしても、せいぜい一人とか二人だろうな。
「一応、人手だけだったら増やせるけど……」
やろうと思えば、ゴーレムを作り出すことによって頭数は確保できるだろう。
ただ、ゴーレムは良くも悪くも単純作業しかできない。
そりゃ、ただ進むだけだったらそれでもいいかもしれないけど、リヴァイアサンと戦うとなると、臨機応変な対応が必要になってくるだろうし、それをゴーレムに任せるのはちょっと怖い。
ホムンクルスであれば、多少細かい作業もできるだろうが、あれはコストが高いし、そもそもそんな安易に命を作りたくない。
それに、仮にそれをやるとしても、船に詳しい人がいなければ始まらない。最低でも、航海士とかは必要になるだろう。
それが集まらないのだから、この案はあんまり意味がない。
「他に方法ないのか? 空飛んでいくとか」
「空を飛ぶ……うーん、できないことはないけど……」
『スターダストファンタジー』には、空を飛ぶクラスもいくつかある。
例えば、【ドラゴンライダー】とかはドラゴンに乗って空を飛びながら攻撃することもある。【サイキッカー】の【テレキネシス】で浮かせることで空を飛ぶことも一応あるし、【サモナー】が召喚する幻獣の中には空を飛ぶ者もいる。
ただ、大体は空を飛ぶための乗り物が必要になったり、そもそも効果時間が短かったりと制限がある。
特に、【サイキッカー】なんかはそうだろう。飛べるは飛べるだろうが、それで戦うことは難しい。
乗り物を用意する必要がなく、自力で空を飛べる力を持つクラスとなると……まあ、あれかなぁ。
「どんな方法なんだ?」
「【コンキスタドール】っていうクラスのスキルを使うの」
【コンキスタドール】は征服者を表すクラスである。
『スターダストファンタジー』における征服者は、魔物を制した者と言う意味だ。
主に、魔物の落とす魔石を利用し、魔物の力を一時的に使えるようにするというスキルが多く、例えば、鋭い爪による攻撃が得意な魔物なら、腕がその魔物のように鋭い爪を持つものに変化し、跳躍力が優れている魔物なら、足がそのように変化する。
魔物の力を意のままに操るのが【コンキスタドール】である。
だから、例えば空を飛ぶ能力を持つ魔物であれば、翼を生やすことができ、それで飛んでいけるというわけだ。
「なるほどな。効果時間にもよると思うんだが、そこらへんは大丈夫なのか?」
「基本的に、【コンキスタドール】のスキルは任意で解除するまで持続するの。シーンをまたげるスキルって意味では結構貴重かもしれないの」
大体のスキルって、シーン終了までとか縛りがあるからね。
まあ、普通は戦闘に関するスキルは戦闘中に効果を発揮してくれるだけで十分だから、シーン終了までは普通に永続効果と変わらないんだけども。
「その魔石って、なんでもいいの?」
「レアリティによる消費個数の違いはあるけど、まあ何でもいいの」
当然、雑魚の魔物の魔石ほど多く消費するけど、効果自体は一緒である。
これならば、適当に魔物を狩ってやればすぐに数は集まるだろうし、何なら既にある程度の魔石は持っている。【収納】にあるこれらを出すだけでも事足りることだろう。
問題があるとすれば、全員が覚えなければならないという点だろうか。
みんな経験値は余ってると思うけど、【コンキスタドール】はかなり異色のクラスだから、他のクラスとの互換性と言うか、相性があんまりよくないんだよね。
極めればいろんな魔物の攻撃を使えて面白いんだけど、俺は極めたことはない。
元々、これを使えるのが別の大陸っていうのもあるかもしれないけどね。
「確かにそれならいけそうだな」
「空を飛ぶとか面白そう」
「今なら経験値的にも覚えられそうですし、その方向で検討してみますか?」
「とりあえずまだ保留なの。何日かこの町に滞在してみて、それでもダメそうならこれで行くの」
覚えさせるからにはやっぱり強い組み合わせを推していきたい。
【コンキスタドール】なんて異色のクラスはできることならならない方がいい。なるとしても、それに特化させた方がいいだろう。
しばらく待って見て、何か別の方法を思いつくか、あるいは船乗りが集まったならそっちで行くとしよう。
「私はそれでもいいと思うけどなぁ」
「確かに、魔物の力を使えるって面白そうだよな」
サクラとシリウスは割と乗り気なようである。
そんな面白いものでもないと思うが……いや、まあ、クラスとしては面白いかもしれない。
特に、使っている間は体の一部が魔物と化すからね。見た目にもかっこいいだろうし、ロマンはある。
まあ、そんな姿見られたら異端の目で見られそうだけど。
「どうせ翼が生えるならドラゴンの翼とかがいいですが、選べるんでしょうか?」
「多分、モチーフになってるのはワイバーンなの。だから、ドラゴンの翼っぽくはあると思うの」
「決まっているんですか?」
「『スターダストファンタジー』ではそうだったの。この世界だとどうなるかは知らないの」
まあ、ドラゴン系の翼でないなら、後は鳥系とか、天使系や悪魔系とかあるのかな?
一応、天使と悪魔は種族として存在しているから、モチーフ自体はあると思う。
この世界でそれが再現できるのかは知らないが。
「まあ、どういう結果になろうとも私はアリスさんの味方ですので、気楽に考えていてください」
「ありがとう」
一応ね、俺だけでいいなら飛ぶ方法はなくはないんだよ。
NPCスキルの中にはシンプルに【飛行能力】っていうスキルがあるから、それを覚えれば、どういう形になるかは知らないが飛ぶことはできると思う。
ただ、NPCスキルは今のところ俺しか覚えられないから、みんなに覚えさせることができないというだけで。
リヴァイアサンを倒すだけなら俺一人でも十分だとは思うけど、やはりそこはみんなで冒険したい。
特に、リヴァイアサンなんて幻獣の中でも割と高位の奴が相手なのだから、独り占めは申し訳ない。
だから、できればみんなで行きたいんだよね。
急ぎと言えば急ぎだけど、急ぎすぎるのもよくない。
できることなら、楽しんで進んでいけたらいいな。
感想ありがとうございます。




