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第三百二十五話:アラメク商会

 二日後、俺達はバーンド王国に向けて出発した。

 バーンド王国はかなり小さな国ではあるが、海岸線に沿うようにして存在しているので、この辺りでは港の数は一番多いと思う。

 高い山は存在しているが、ない場所も一応あるので流通はそこまで難しくなく、バーンド王国とは貿易面においては結構優良な相手ではある。

 まあ、今は全く取引していないようだけど。

 バーンド王国自身は近くにある国がヘスティアとサラエットしかなく、そのほとんどが山に囲まれているので、大事な取引先であるヘスティアと取引しないのは死活問題ではあるのだけど、その辺はサラエット王国が何とかしているらしい。

 先の戦争で使われた山道も整備を進めているようで、その道を通って比較的安全にサラエット王国へ輸出しているようだ。

 まあ、そのサラエットはその輸出品をヘスティアにも卸しているから、無駄が増えてるだけなんだけどね。

 バーンド王国としては、まだ信用できていないから仕方なくって感じなんだろうけど、早めに折れないと破綻しそう。

 特に、今はリヴァイアサンによって貿易が滞っているようだしね。

 これを機に、救いの手を差し伸べるのもいいかもしれない。少しでも信用してもらえれば、素直にこちらにも取引してくれるかもしれないし。

 その辺はそのうちナボリスさんに相談しておこうかな。


「予想はしていたけど、あんまり活気がないの?」


「そうみたいですね」


 今回も馬車を使って移動してきたが、着いた港はあまり活気が見られなかった。

 本来であれば、水揚げされた魚なんかを売る市場は活気に満ちていそうだけど、今はその気配もまるでない。

 まあ、時間が悪かった可能性もなくはないが、リヴァイアサンの影響はかなりあるようだ。


「とりあえず、船を確認するの」


「確か、アラメク商会と言う場所が管理を任されていると聞きましたね」


「じゃあそこへ行くの」


 ひとまず、船を確認するために商会へと向かう。

 アラメク商会は、この港ではそれなりの大きさの商会らしい。

 主に隣の大陸から流れてくる貿易品を取り扱っているらしく、特に王都なんかでは有名な商会のようだ。

 いくら活気が少ないとは言っても、全く貿易できていないというわけでもないらしく、少ないながらも商品を扱っているようである。

 もしかしたら在庫を引っ張り出しているのかもしれないけどね。

 番頭に声をかけると、最初は門前払いされたが、俺達がヘスティアの王様一行だと告げると、少しした後に商会長の下へ案内してくれた。


「俺がここを仕切ってるアラメクだ。王様自らお出ましとは、ご苦労なこって」


「初めましてなの、アラメクさん。私がヘスティアの王のアリスなの」


 応接室にて待っていたのは、海の男と言った感じのいかつい男だった。

 実際に船に乗ることがあるのか、それとも元からそう言う顔なのかは知らないが、丸太のような太い腕に日焼けした肌はとても逞しく見える。

 これで髭でも生えていたら完璧だったが、そこは商売人だからなのかきちんと身なりは整えているようで、服も割とちゃんとしたものだった。

 こういうおじさん結構好きかも……い、いやいや、違うから、決してそんな趣味はないから!


「噂にゃ聞いていたが、まさかほんとにこんなちっこいのが王様とはな。ファウストの野郎も耄碌したのかね」


「よく言われるの。でも、見た目で舐めてかかると痛い目を見ることになるの」


「わかってるよ。実力主義のヘスティアが、間違っても兎族を、それも子供を王にするなんてありえねぇ。だが、実際になってるってことは、何かしらの絡繰りがあるんだろうよ。少なくとも、俺はお前さんを舐めちゃいない。そこのところは理解してくれると嬉しいね」


「それは助かるの。こちらとしても、無駄な争いをしなくて済むの」


 ちょっと喧嘩腰になってしまったが、あちらも舐めていないとは言ってもへりくだるつもりもないようだ。

 普通、他国のとはいえ王様を相手にしたら委縮してもいいとは思うが、まあこんな見た目だしね。

 別に対等に接してくれる分には問題はない。あんまり舐めてかかってくるなら痛い目を見せるのも考えていたけど、その必要はなさそうだ。


「それで? 今日はどんなご用件で?」


「こちらにうちの船を預けてると聞いたの。それの確認に来たの」


「ああ、あの船かい。悪いが、あんまりご期待には沿えそうにねぇな」


「というと?」


「まあ、見て見りゃわかる。ついてきな」


 そう言って、アラメクさんは腰を上げる。

 番頭になにやら指示を出すと、番頭は走ってその場を後にした。

 見りゃわかるってことは、ドッグにでも連れて行ってくれるのかな?

 俺達は言われるがままについていくと、港の一角にある大きな建物へと連れてこられた。


「あんたらの国の船はここにしまってある。だが、ちょいと不幸なすれ違いがあってな、今はこんな状態だ」


「うわぁ……」


 建物の中には三隻の船が停泊していた。いずれも大型船で、結構な迫力がある。

 しかし、問題なのは、その三隻がいずれもボロボロだということだ。

 船の側面にはところどころに穴が開き、一隻に至ってはマストすら折れてしまっている。とてもじゃないけど、航行できるような状況ではなさそうだ。


「一応聞くけど、どうしてこうなってるの?」


「知ってるとは思うが、あんたらの国とうちは最近まで敵同士だった。こいつは商船とはいえ、砲も積んでるし、戦力になりうる。それに、敵国の船を後生大事に守っているなんておかしいと思う奴もいたわけだ」


「それで、過激派に壊されたと?」


「いや、そうじゃない。確かに敵の船を守っているのはおかしいとは思うが、そこは俺も商人だ。顧客から預かった大事な船を壊させるような真似はしなかったし、ちゃんと大事に保管していたさ。だが、そこにリヴァイアサン騒ぎがあってな。そこで事件が起きた」


 リヴァイアサンの話はこちらも聞いている。

 アラメクさんの話によると、まずリヴァイアサンはこの世界ではかなり珍しい部類に入るらしく、序列としてはネームドドラゴンと同等くらいに思われているらしい。

 当然、そんな化け物を討伐するのは不可能だと感じ、リヴァイアサンが自然とどこかへ行ってくれるまで待とうという話になったようだ。

 しかし、流石にそれまでの間全く貿易をしなければバーンド王国は干上がってしまうし、どうにかして貿易は続ける必要がある。

 そこで上がったのが、迂回ルートを開拓することだ。

 リヴァイアサンの脅威のない海域まで迂回していけば、時間は余計にかかるが貿易ができないことはない。

 しかし、通り慣れた航路と違い、未知の航路には未知の魔物も存在する。間引きもろくにされていないその航路には魔物がたくさんおり、そこを進むのはリヴァイアサンほどではないにしても危険な行為だった。

 そこで、まずはその魔物を駆除しようということになり、いらない船を探すことになった。

 わざわざいらない船を探すのは、魔物と戦えば高確率で攻撃を食らって修復が難しい損傷を負う可能性が高いし、最悪帰ってこられなかったとしても痛くない船を選びたかったからだという。

 アラメクさんもその話には賛同していて、いらない船を使うようにと通達したようだ。

 だが、そこで行き違いが発生した。

 アラメクさんにとって、ここにある船達は顧客の大事な船であり、いらない船ではなかったが、指示を受けた人は敵国の船で、壊れても問題ない船だと判断したようで、勝手にこの船を使って討伐に出かけてしまったらしい。

 その結果、大きな損傷を受けて帰ってきたのが、今の状態と言うことらしい。

 一応、あらかた魔物は討伐できたようではあるが、これだけ立派な船三隻に加えて、他にもいくつかの船が犠牲になったようだから、全く割りに合っていないとのこと。

 結局、迂回ルートを開拓するのは難しいということで貿易もストップし、今や港は近海に出ていく船を除いて船の休憩所となっているようだ。


「なんか、とばっちりもいいところなの」


 ちゃんと保管しようとしてくれたアラメクさんには感謝しかないけど、そう言う人もいることをもっとしっかり考えるべきだったな。

 まあ、この程度なら【リペア】で何とかなりそうではあるけど、それをやっちゃうと流石に怪しまれるよねぇ。

 とりあえず、このままだと船はまともに使えないということはわかった。

 直すにしろ別の船に乗るにしろ、問題となっているのはリヴァイアサンのようだし、そっちを何とかしないといけないよね。

 ひとまずは、そちらの情報を集めた方がいいかもしれないな。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勝手に持って行ったやつにはとりあえず修理費用の賠償を請求しないと……
[一言] 戦争状態にあったから船がないかボロボロ だったのはある意味予想通りなのではないでしょうか そりゃ戦争吹っ掛けてきた船なんて壊れてもいいと思いますよ
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