第三百二十三話:サポートが欲しい
大陸を渡るためには船が必要。それはわかっていたが、それをすぐさま実行に移すことはできなかった。
と言うのも、まず長旅の後だったので少し休みたかったというのが一つ。
一応、夜には城に帰っていたし、半分日帰りみたいなもんだとは思うけど、やっぱりしばらく遠出していたという事実は変わらないわけで、多少なりとも疲れが溜まっていた。
特に、シリウスとサクラは近隣国の調査のために駆けずり回っていたわけだし、思った以上に疲れが溜まっていると判断した。
だから、帰ってきてしばらくはだらだらと過ごすことにした。
だらだらと言っても、全く何もしなかったというわけでもないけどね。
二つ目の理由に、ファウストさんに問い詰められたというのがある。
俺達が旅に出ていた間、訓練はすべてファウストさんに任せていた。
いや、名目上は、俺達が訓練場で特訓すると、他の兵士達の訓練の邪魔になるから、別の場所で訓練している間、ファウストさんに任せるといった内容だったが、流石に時間が経ちすぎたらしい。
まあ、合わせて二か月くらいは任せていたからね。ファウストさん的には、訓練はいくらでもしていいものだと思ってはいるようだけど、流石にいつまでも俺達が出ないと兵士達の士気にも関わるということで、そちらに顔を出す羽目になった。
久方ぶりに兵士達のキャラシを確認したが、思った以上に経験値が溜まっている。
どうやら、ファウストさんは通常の訓練だけでなく、模擬戦も多く取り入れていたらしい。その中には、実際に魔物を相手にしたものも含まれていたようで、その分の経験値が加算されていたようだ。
これだけあれば、2レベルくらいは上げられそうである。
それまで全く溜まっていなかったというわけではないけど、たった二か月足らずで2レベル分も経験値を貯めるって普通に凄いことでは?
この世界の人達は、俺達プレイヤーと違ってレベルアップに必要な経験値量がとても多いから、同じ1レベルでもかなりの差がある。
2レベルなら、俺達なら多分10とか20とか上げられるんじゃないだろうか。
それくらい訓練しまくっていたということである。その気迫には脱帽せざるを得ない。
これは一度一斉にレベルアップさせてあげないとだめだろう。
今までは俺がいる間は強くなったと実感できただろうが、ここ最近はレベルアップはしていないからちょっと伸び悩んでいると思っていることだろうし。
でも、あんまり強くなりすぎても制御が利かなくなりそうでちょっと怖い気もする。
いや、兵士達はみんな俺を倒したいというよりは尽くしたいという感じではあるんだけど、いつか強くなったら下克上してやろうと思っている人もいるかもしれない。
別にそいつに負ける気はないけれど、強くなりすぎて統率が取れなくなったら本末転倒だ。
今のところはファウストさんのカリスマ性もあって何とかなっているけど、他の将軍達は差が縮まりつつあって大きな顔もできなくなっているようだし、少しテコ入れが必要かもしれない。
差し当たって、将軍クラスの人達はもう少しレベルを上げた方がいいかもしれないな。舐められないためにも、レベル的にはファウストさんと同じくらいにしてもいいかもしれない。
なんかそれだと他の国が苦労して発掘する剣聖と同じくらいの実力を持つ人を量産することになりそうだけど……まあ、別にいいか。
そのうちこの国でも剣聖は欲しいと思っていたし、シュライグ君が成長するまでの間のつなぎとして出すのはありかもしれない。
あるいは、この時点でシュライグ君の部下にしてしまうのもいいかもしれないね。この国なら、力を示せば年下でも敬うだろうし。俺と同じように。
「なんかこうしてみるとだいぶクラス持ちも増えたの」
基本的に、俺がレベルを上げて、戦いの方向性が決まっている人に関してはクラスを与えている。
クラスがあった方がクラス補正によって能力値も上がるし、何よりスキルが使えるようになる。
この世界の人達はほとんどがNPCスキルや一般スキル、あるいはこの世界特有のスキルしか使えないけど、兵士達のレベルアップをしている時に気づいたけど、多少であれば、クラスに関係するスキルを取ることができるようになっていることに気が付いた。。
なんか、最初はクラスを与えてもクラス補正がかかるだけでスキルは覚えられなかったような気もするんだけど、いつの間にか覚えられるようになっていたようだ。
俺の能力もアップデートされているんだろうか。よくわからない。
まあ、みんなが強くなる分には問題はない。いずれ来る災厄のためにもある程度の準備は必要だしね。
そんなわけで、色々スキルも覚えさせて、だいぶ強くなったと思う。
恐らく、俺がいなくても今なら各国に勝てるだろう。【アローレイン】で一掃、とかは無理でも、複数を一気に攻撃できるスキルは普通に使えるからね。それが複数人いるのだから、面制圧はお手の物だろう。
なんか取り返しのつかないことをしている気がしないでもないけど、これくらいは許容範囲という気もする。どっちが正解だろうか?
「とりあえず、レベルアップはこれで十分なの。こうなってくると、必要なのは武器や防具なの?」
正直、レベルに関してはもう上げる必要がないくらいには強くなっている。
もちろん、粛正の魔王やその取り巻きなんかを相手にするのには十分とは言えないけど、今はレベルが先行しすぎて装備の方が貧弱すぎるのだ。
普通、冒険者はレベルが上がるとともに武器防具もアップデートしていくものである。特に、冒険は終盤になればなるほど厄介な魔物も増えていくので、例えば状態異常を対策したり、属性を付与したり、スキル以外の部分でも対策を取っていかないと取り残される可能性がある。
少なくとも、防御力くらいは上げておかないと一撃死の危険があるので取っておく必要があるだろう。
だが、それを作れる人材がいないのだ。
一応、俺は【ブラックスミス】のクラスも取っているから、材料さえあれば作れないことはない。だが、身内の武器や防具を揃えるだけならまだしも、兵士全員分となると流石に手が足りない。
少なくとも、もう一人くらいは同じプレイヤーの生産クラスが必要になるだろう。
銃を作るという話もあるし、それを俺だけで完結するのはかなりの時間と労力が必要になる。流石に、仲間を探しながらそれをするのは無理だろう。
アルメダ様が言っていたのはアタッカーと言う話だが、次聞くことがあったら生産サポートがいたらいいなと思う。
「まあ、今はこのままでいいとしても、いつかは取り掛かりたいところなの」
粛正の魔王と戦うなら必要になるだろうが、それ以外のただの魔物や人と戦う分には今の装備で十分すぎるくらいである。
だから、これは後回しだ。
生産クラスが見つかって、人が増えてきたら始めるとしよう。
それまで覚えていればの話だけど。
俺は忘れるかもしれないと思いながら脳内メモに書き留めつつ、次にやる作業を考えていた。
感想ありがとうございます。




