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第三百八話:場所を移動して

 翌日。俺達はこっそりと王都を抜けだし、近くの町の拠点を移すことにした。

 まあ、謁見の申し込みをしているので、全員がいなくなってしまうと連絡役がいなくなるし、わざわざ今王都を離れる意味もないと疑いをかけられそうなので、ライロを残し、夜のうちにこっそりと抜け出してきた。

 ライロ自身に戦闘能力はないが、ただ単に連絡役になるだけなら特に戦闘力は必要ない。フードを被りながら色々な人に話しかけまくるのが怪しいってだけで、大人しくしている分には特にマークされることもないだろう。

 ライロとは【セージ】のスキルでいつでも脳内会話、いわゆる念話が可能なので、もし何かあってもすぐに駆け付けることができる。ポータルも設置してきたしね。

 だから、ライロの方は心配ない。問題は、この町でそれらしい人が見つかるかどうかだ。


「流石に王都でなければそこまで警備隊に目を付けられるということはないだろうが、それでも怪しいことに変わりはない。話しかける奴は慎重に見極めないとな」


「そうですね。しかし、あまり悠長にしすぎても時間の無駄です。何か効率のいい方法があればいいのですが」


「ねぇ、アリス。一目で相手の性格がわかるようなスキルないの?」


「相手の性格がわかるスキルねぇ……」


 いくらスキルが万能とは言っても限度がある。

 まあ、例えば、相手の心理を読み取って、交渉判定を有利にするっていうスキルはある。

 それは相手の所作を読み取って気づいたり、あるいは直接心を覗いたり、色々な方法があるが、考えを読むこと自体はそう難しくはない。

 ただ、性格がわかるかと言われたらそんなことはない。

 性格っていうのは、パーソナルデータだ。スキルの特性的に、相手の能力値を看破したり、判定を突破したり、そう言うことはできるけど、基本的にパーソナルデータを読み取るようなスキルはない。

 あるとしたら、ゲームマスターに直接問いただす系のスキルだけど、それ使ったら誰が答えてくれるんだろうか。

 神様? でも、現状神様はスターコアを通してでしか話しかけられないくらい力を失っているようだし、もしかしたら応えてくれない可能性もある。

 元々、このスキルはゲームマスターが本気で拒否すれば断れるものだし、そもそも伝えられる手段がないと考えれば発動しない可能性もある。

 やっぱり性格を直接見抜くのは無理があるよなぁ。


「性格は見抜けないけど、相手の能力値とかなら見抜けるの」


「ああ、何だっけ。【アイデンティファイ】だっけ?」


「それなの。ほんとは魔物にしか使えないスキルだけど、多分普通の人にも使おうと思えば使えると思うの」


 【アイデンティファイ】は、【セージ】が持つスキルの一つで、相手の情報を見抜くことができるスキルだ。

 まあ、これはどちらかと言うと、知識によって相手の魔物の情報を知っているという形だと思うんだけど、初見の相手でも見抜けるから、多分相手の仕草とかそう言うのを見て予測するという意味もあると思う。

 これで情報を見抜けば、性格も予測できたりするだろうか?


「まあ、全く情報がないよりはまし、か?」


「もし私が情報を見るなら、誰かシュライグに剣を教えて欲しいの」


「それなら私が見ましょうか。元々、剣は私の領分ですし」


 元はカインが教える予定だったしね。それが目立つからという理由で俺に回ってきたけど、別に育てるだけだったら俺である必要もない。

 経験値さえあればいつでもレベルアップは可能だしね。

 見るだけだったら俺が話しかける必要もないし、話しかける役はサクラとかが担えばいいだろう。


「とりあえず、その方法を試してみようか」


「だな」


 方針は決まった。さて、この町に逸材がいればいいんだけど。


「じゃあ、カイン、お願いするの」


「はい。では、シュライグ、私についてきてください」


「は、はい!」


 どうせならヘスティアの訓練場を使ってもいいと思ったけど……まあ、いいか。まだ基礎の段階だし、まだ経験値を稼ぐ段階ではない。

 早いところ経験値稼ぎに行きたいけど、戦い方すらわかっていなければ時間がかかりすぎるからね。

 まあ、やろうと思えばカインがぎりぎりまで痛めつけて、最後の一撃だけシュライグ君にやらせて倒させるというパワーレベリングもできなくはないけど、最初くらいは自分で倒す感覚を掴んでもらいたい。

 そうでないと、本当に養殖になっちゃうからね。レベルだけ高くて実力が見合わないんじゃ意味がない。

 そう言う意味では、シリウス達にやったレベリングは悪手だったのかな? でも、ちゃんと使いこなしているし、そこらへんは設定の力が働いたってところだろうか。

 まあ、理屈はわからないけど、うまく行っているなら何よりである。


「そう言えばサクラ、イナバはどうしたの?」


「ここにいるよ?」


「きゅっ」


 サクラがそう言うと、胸元からイナバさんが飛び出してきた。

 いつも抱いているのにいないと思ったら、そんなところにいたのか。

 何気に美女の胸の間に挟まるとか言う羨ましいことしてるけど、全然羨ましいとかは感じない。

 俺もアリスに染まってきてるのかなぁ。イナバさんが兎だからかもしれないが。


「まあ、いるならいいの。どこかに置いてきてたら大変なの」


「そんなことしないよぉ」


「馬鹿なこと言ってないで行くぞ」


 シリウスに促されて、町へと繰り出す。

 一応フードは被っておくけど、多分そんなに意味はない気はする。

 さて、それらしい人がいればいいけど。


「【アイデンティファイ】」


 俺はひとまず、人通りの多い場所でスキルを使ってみる。

 このスキルの対象は見えている敵すべて。つまり、視界内がすべて対象となる。

 使った瞬間、その人の頭上に持っているスキルや能力値などの情報が出現する。

 かなり数が多いが、ちゃんと普通の人にも使えてまずは一安心。

 ここから逸材を見つけるには……ちょっと苦労しそうだけど。


「まあ、現実なんてこんなもんなの」


 いつもは普通の人に紛れて暮らしているけど、実はとんでもない実力を隠し持っている、なんて人現実にはそうそういない。

 見えるのは、レベル1で、わずかなスキルしかない普通の人ばかり。

 まあ、中には【剣術】とかを覚えている人もいるけど、兵士とか警備隊とかそう言う人を除くと、せいぜい1とか2とかである。

 育てるのだから、別にスキルレベルが低かろうと関係ないけど、【剣術】を持っているのにスキルレベルが低いのは、まだそのスキルを取得したばかりか、取得したけどその後全然修行してないかのどっちかになるだろう。

 取得したばかりならまだいいけど、全然修行してない方だとそれは努力家とは言えない。

 やっぱり、スキルや能力値が見えても性格までは図れない。露骨に【剣聖のカリスマ】とかそう言うスキルがなければ決めようがないな。


「どうしたもんかなぁ……」


 まあ、明らかな悪人はそれらしいスキルが育っていることが多いから、そう言う人を外せるだけましなのかもしれないけど、そこまでである。

 せいぜい、見た目で良し悪しを決めるくらいか?

 剣聖となるからにはそれなりに威厳が必要だし、できれば子供は避けたい。さらに言うなら男性がいいだろう。一目で見た印象的に、女性よりも男性の方が強く見られがちだし。

 まあ、女性の剣士が悪いとは言わないけどね。俺としてはそっちの方が好みだし。

 後はこの中から選ぶだけ。果たして、見つかるのだろうか。

 少し不安を覚えつつも、俺は道行く人々を調べて行った。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女性剣士も良いものだ( ˘ω˘ )
[一言] 街中で【アイデンティファイ】を使うと人が多くて 情報いっぱいなので目が痛くなりそうです この町で見つけて早いとこ育成に入りたいけどいるかな?
感想一覧
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