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第二百八十六話:雪原地帯

 アルメリア王国を超え、さらにリーリス王国を超えると、そこそこ大きな山脈が広がっている。

 この山自体はそこまで険しいわけではなく、開拓も進んでいて道もちゃんとあるのだけど、この山を境に反対側に行くと一気に気温が下がるらしい。

 この山が風を遮っているからなのか、それとも別の要因があるのかはわからないが、おかげで山は半分が雪に覆われ、半分は普通の地面が広がっているというよくわからない状態になっている。

 いくらきちんと道があるとは言っても、流石に雪に覆われていてはかなり危険な道となる。崖だってあるし、下手したら滑って谷底に真っ逆さまなんてこともありそうだ。

 定期的に雪かきがされているらしいけど、そもそも今の時期にこの山を越えてこようという人はあまりいないようで、それもおざなりになっている。

 おかげで、思いのほか時間を食ってしまった。


「雪山仕様にするってわけにもいかないから仕方ないが、雪って面倒だな」


「場合によってはデバフもかかりますからね。吹雪になんてなったら体力も減ります。天候フィールドとしてはかなり厄介な部類ですよ」


「昔は雪なんて降ったらはしゃいでたのにね」


 今は冬の真っただ中。山を境に気温が急激に下がると途中の町で聞いたので、暖房対策はしてきたつもりだったが、馬車の対策をするのを忘れてしまっていた。

 まあ、ミスリルは雪にもある程度強いから、多少は溶かしつつ進めるんだけど、それにも限度がある。

 これ、普通の馬車だったらとっくに立ち往生していそうだね。馬だって、生身の馬だったら進んでいないかもしれないし、ゴーレム馬で本当によかった。


「皆さんがいた大陸ではそんなに雪が降らなかったの?」


「あー、うん、そうだね。結構珍しかったかな。一年中雪が降らないなんてこともざらだったと思う」


「なら、雪は大変だね。僕も雪には苦労した気がするよ」


 そう言ってイナバさんは遠い目になっている。

 人間の時の記憶は曖昧だとは言っていたけど、何か過去にあったんだろうか。

 それはともかく、雪は確かに久しぶりだよね。

 ヘスティア王国ではあまり雪は降らないようで、たまに降ったら子供達がはしゃいでいるのを見たことがある。

 積もるほど降らないので、被害は多少道がべしゃべしゃになるくらい。それでも、街道とかがそうなると非常に面倒だけど、それもヘスティア王国だけでなく、色々な国が対応しているおかげで、すぐに修復されている。

 なので、雪で苦労するということがあまりないのだ。

 元の世界においても、一番酷い時で、小学生の頃に10センチメートルくらい積もったかな。あの時は流石に学校も休校になったけど、あれ以来そこまで雪が積もったところを見たことがない。

 それを除けば一日もあれば道の雪は取り除かれてしまうし、そこまで困った記憶はないな。

 だから、雪国、とは少し違うかもしれないけど、それに近い場所での雪は初体験となる。

 さっき山を抜けてきたけど、あの時点でかなり大変だったし、少し覚悟しておいた方がいいかもしれないね。


「なあ、ここも十分寒いし、ここにもその薬草あるんじゃないか?」


「確かにそうですね。辺り一面雪原ですし」


 一応街道に沿って進んでいるが、辺りを見回す限り真っ白である。

 時折地形によって段差があるけど、それ以外はほとんど白くてとても静かだ。

 雪には静音作用があるらしいけど、そのせいかもしれないね。

 おかげで聞こえるのはゴーレム馬が歩く音だけ。寒いのも相まって、なんだか寂しい気分である。

 どうでもいいけど、サクラは寒いからって俺を湯たんぽ代わりにするのやめてもらえないかな。ちゃんとカイロ的な魔道具買ったでしょ。


「アリスさん、その薬草はこういう雪原でも見つかるんですか?」


「きゅぃ」


「なるほど。なら、探してみる価値はありそうですね」


 一部の薬草はきちんと植生やどういう場所に生えているかなどの設定が書かれているものもあるけど、ヒエヒエ草はただ単に寒い場所に生えてる、くらいしか書かれていなかった気がする。

 もしかしたら見逃していたのかもしれないけど、寒い場所に生えているってだけなら、こういう雪原にも生えている可能性はあるだろう。

 ただ、見た目が白っぽい草なので、この真っ白の世界で馬車内から見て発見するのは難しそうだが。

 イナバさんなら【イーグルアイ】を使えば行けるかな? まだ覚えさせてないけど。


「流石にこの雪原の中、白い草を探すのは無理がないか?」


「なにか薬草を見つけられるスキルでもあればいいんだけどね」


 薬草を見つけるスキルか。まあ、見つけるスキルではないけど、手に入れるだけだったらあるっちゃある。

 一応、ポーションを作るのは【アルケミスト】が使い勝手はいいが、より特化させた上位クラスがある。

 それが【ドクター】。ポーション関係のスペシャリストである。

 基本的な役割はサポーター。様々な効果を持ったポーションを作り出し、それを振りまくことで味方にバフをかけるのを得意とする。

 その中には薬草を得るスキルもあって、【マジカルハーブ】というスキルがある。

 効果は、お金を払ってランダムで薬草を入手するというものである。

 お金を払うのだから、結局買うのとあまり変わらないのではないかという疑問もあるが、一発で引き当てることができれば普通に買うよりよっぽど安く入手できるし、時にはその地域では売ってないような薬草も入手することができる。

 レアな薬草になるほど当たる確率は下がるが、仮にヒエヒエ草を当てようとするなら、成功率は5~6割弱ってところかな。決して悪い確率ではない。

 まあ、結局運ゲーだからあんまり推奨はされないが。一緒に【ギャンブラー】のスキルを持っていればかなりの良スキルなんだけどね。ほぼ狙った薬草を手に入れられるし。

 他にも【コレクター】とか入手の機会があるクラスはあるけど、他のスキルの有用性とかも考えるとこれが一番有用じゃないかな。


「アリス、何かない?」


「きゅっ」


「ある? なら、覚えてみる?」


「きゅぅ」


「覚えるならシリウスの方がいい?」


「俺か?」


 【ドクター】は基本的にバフ、そして回復を担う。役割的にはシリウスが適任だろう。

 もちろん、色々な人に覚えてもらうことによってオールマイティーになっていくというのも手ではあると思うが、攻撃役はバフを貰ってすぐに攻撃した方がいいし、やはりシリウスがいいのではないかと思う。

 どのみち、【アコライト】や【クルセイダー】のバフは、余裕があれば戦闘前にもかけられるし、そうなると戦闘に入って一ターン目にやることがなくなっちゃうからね。そこを【ドクター】のスキルで埋めればちょうどいいんじゃないかな。

 もし他の人に覚えさせるとしたら、俺か、あるいはカインならまだましだろうか。

 カインの役割はタンクだから、最初のターンは攻撃以外だと防御力アップのスキルを使うくらいしかない。

 ボス戦ならともかく、雑魚戦でわざわざ防御力アップなんて使わなくても余裕で受け切れるので、使う必要がないからね。

 お助けキャラとしては俺が覚えたいけど、イナバさんに俺の能力を明かすかどうかはまだ迷っている。

 今後も一緒に行動するならばらしてもいい気はするけど、どうだろうか。

 まあ、戻るまでは保留でいいと思うけど。戻ってから考えればいい、よね?

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] この縁で仲間になったりするのかなぁ
[一言] 一回で目当ての薬草が手に入ればいいのですが 青天井ガチャの気配がします、何回目で手に入るかな?
感想一覧
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