第二百七十六話:日輪の試練
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アウラムの攻撃は大きく二つのパターンに分かれる。
直接攻撃か、炎による魔法攻撃かだ。
どちらが簡単かと言われると、直接攻撃の方。こちらはかなりの高火力で、まともに食らえば今のレベルでも一撃で落とされるくらいの攻撃力だけど、対象は基本的に一人である。
なので、カインの【カバー】がとても有効であり、きちんと防御スキルを併用すれば、比較的軽微な被害で乗り切ることができるのだ。
問題なのは魔法攻撃の方で、こちらは全体攻撃である。
もちろん、その分攻撃力は落ちるけど、全体攻撃なので総合的なダメージはこちらの方が上だ。
カインは一応、複数の対象をカバーできる【マルチカバー】というスキルを持っているけど、二人分以上の攻撃を受けることになるので当然ダメージが大きくなる。いくら防御スキルを重ねたとしても、少なくないダメージを食らうことになるだろう。
特に、俺やイナバさんに来た場合、きちんと回避できないとカインが絶対にカバーに入らなくてはならなくなる。
【カバー】による移動は、その後元の位置に戻るので、それで攻撃の手数が減るということはないけど、現実となれば前衛から後衛までを往復しなくてはならないのだからもしかしたら疲労がたまるかもしれない。
だから、できることならアウラムには近接攻撃だけしていてほしい。けど、そううまくは事は運ばないようである。
「くっ、【マルチカバー】、【プロテクトシールド】、【ディフェンシブタクティクス】」
「【プロテクション】!」
アウラムはどちらかというと魔法攻撃の方が好きなようだ。
たまに近接攻撃もしてくるが、基本的には魔法攻撃中心。なので、カインはカバーで大忙しである。
幸いなのは、俺を積極的に狙ってこないところだろうか。
流石に、兎相手に攻撃するのはエンシェントドラゴンとしての矜持が傷つくのだろうか。
戦うのはあくまで戦える者だけということなんだろう。そう言う意味では、狙われまくっているイナバさんはご愁傷様である。
「なんで、僕ばっかり!? 隣にいるのに!」
「一人狙われないだけましだろ。とにかくお前は回避に専念しろ!」
「ひぃ!」
一応、今のところは回避が成功しているのか、イナバさんは攻撃に巻き込まれてはいない。
きっちり練習していてよかった。俺も一応【アヴォイドダンス】で回避を上げたが、この様子だと必要ない気もする。
これなら、支援系のスキルを覚えた方がよかったかもしれないね。
こんなの予想できないから仕方ないけど。
「アリス、ダメージはまだ足りないか?」
「きゅっ!」
「あと少し? 信じるぞ!」
アウラムのダメージギミックは基本的に一定である。ただ、一番最初にダメージギミックが来た場合、多少下がったはずだ。
なぜなら、最初は防御力が高すぎてまともにダメージが入らないから。
その状態でもダメージ目標値が変わらないのは正直無理ゲーなので、救済策として少し下げられている。
確か300くらいだったかな。参考までに、今のサクラの火力はもろもろのバフや強化スキルを乗せて大体200ちょっと。
火力特化の火魔法ならもう少し出るかもしれないが、命中重視でもこれだけのダメージが出せるなら十分な火力である。
で、これを今のアウラムに当てると、大体60くらいのダメージになると思う。約三分の一だ。
これを見ればどれだけ硬いのかがわかるだろう。約七割カットとか理不尽もいいところである。
そして、現在与えたダメージは約250くらいと予想できる。
この辺は出目によるばらつきもあるから絶対とは言えないけど、あと少しであることは間違いない。
サクラの本気を一発、もしくは二発当てられれば、最初のギミックは解除できるはずだ。
「サクラ、お願いします!」
「オッケー!」
カインの掛け声に、サクラが再び魔法を放つ。
アウラムの回避率もそこそこ高いが、そこはサクラの命中率の高さがうまくかみ合っているのか今のところ外しはしないようだ。
ふっとアウラムの角が色を失う。そして、すぐさま別の色へと変化した。
ギミック解除成功の合図である。と言っても、試練が続く限り、定数ダメージと炎上ダメージは別で解除しない限りずっと続くけどね。
まあ、多少は下がるらしいけど、今は【スリップガード】で無効にしているので特に気にしなくていい変化である。
「きゅっ!」
「行ったみたいだ! 次は何だ?」
「きゅきゅっ!」
「はっ、よりによってそれかよ」
続いて出てきたのは状態異常を与えろというもの。その中でも、恐怖状態を与えろというものだった。
恐怖状態は一定の確率で行動不能にされてしまうというもの。
神話系の化け物なんかが持っているスキルだけど、一応特定のクラスになれば冒険者でも恐怖状態を与えることはできる。
ただ、それが使えるのは現状アリス、すなわちイナバさんしかいない。
状態異常が必要になることはわかっていたから、シリウスがなるべく覚えたんだけど、恐怖は覚えさせてなかった。
だから、やれるとしたらイナバさんしかいないわけだけど、そのスキルは教えてない。
どうする? 今からでも教えるべきか?
「ちっ、【エリアヒール】! あんまり長引くと面倒だぞ!」
「きゅっ!」
「……なるほど。おい、イナバ!」
「へっ、僕?」
「そうだ、よく聞け」
シリウスの切羽詰まった声に、俺は猶予はないと見て教えることを許可した。
と言っても、これを教えたからと言って絶対に成功する保証はない。
なにせ、確率付与の効果だ。本来なら、相手の抵抗値によって弾かれるかどうかが決まるが、これはそもそもその確率を突破しないと自動的に失敗となる。
その上で相手の抵抗も突破しないといけないから確率が低いのである。
【威圧】というスキルで、文字通り相手を威圧して恐怖を与えるスキルなのだけど、これを使えるのは基本的に格下くらい。どう見ても格上のアウラムに効くかどうかは微妙なところ。
それでも、このまま無駄にターンを過ごすくらいならやってみた方がましだろう。
「い、いきなりそんなこと言われても……」
「いいからやれ、死にたくはないだろ?」
「う、うぅ、わ、わかったよ……」
イナバさんは攻撃を回避しつつ前に出る。
【威圧】は射程がそんなに長くないから前に出ないといけない。イナバさんからしたら死にに行くようなものだけど、そこはしっかりとカインが守ってくれるはず。
大丈夫、決まらなくても文句は言わないさ。
「むむっ……!」
どうやら【威圧】をかけているようだが、アウラムが怯む様子はない。
やはり、格上相手には効果が薄いようだ。そもそも、完全に及び腰のイナバさんがやっても威圧感なんて全然ない。
形から入った方がいいのかな。それとも、もう諦めて三ターン耐えて別のギミックにした方がいいか。
あんまりイナバさんを前に立たせたくないし、ここは守るのも手かもしれない。
みんなには悪いけど、もう少し耐えてほしい。
俺は焦りつつも指示を出す。この選択が間違いでないことを祈る。
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