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第二百四十二話:闘技大会閉幕

 数秒考えた結果、とりあえず撃ってみようという結論に至った。

 そりゃ、突進で逆に打ち取られる可能性があるとは言っても、その確率はそこまで高くないはずである。

 【プロテクトガード】と【ディフェンシブタクティクス】の重ねがけがあったとして、俺の【ストロングショット】を加えた【トライショット】の初撃はそれなりに威力が高い。

 うまくすれば、それでバランスを崩してそのまま後続の矢が突き刺さるという場合もあるかもしれないし、そうでなくても突進を防ぐくらいはできるかもしれない。

 やってみないとわからないのだから、まずはやってみて、ダメだったならその時考えればいい。もちろん、最低限のフォローは考えるが。

 そう言うわけで、俺は勝負に出た。


「【トライショット】!」


「きましたね。【プロテクトガード】、【ディフェンシブタクティクス】、【チャージアタック】!」


 カインは俺の行動をある程度予測していたようで、冷静に盾を構え、防御スキルで固める。

 それと同時に、こちらに向かって突進してきた。

 【チャージアタック】は盾を構えながら突進するスキル。なるほど、スキルの効果で攻撃扱いになるから、こちらの攻撃を弾きつつ前に出ることができる。ただ突進するよりも厄介な状況だ。

 だけど、俺だって何の対策もなしにただ【トライショット】を撃ったわけではない。


「【ラピッドショット】!」


「ぐっ……!?」


 【ラピッドショット】は速射のスキル。矢をつがえる時間すら飛ばし、追撃を叩き込むことができる。

 【ラピッドショット】に【トライショット】を乗せることはできないが、【トライショット】を撃った後に【ラピッドショット】を撃つことはできる。

 なので、【トライショット】の動作を中断して、即座に矢を放ったのである。

 ただ、普通にそれを撃っただけでは【チャージアタック】の攻撃力の前にひれ伏すことになるだろう。

 だから、俺は足を狙った。

 盾を前に突き出して突進してきているから、体の大半は隠れているけど、足だけは隠れていない。

 もちろん、足にも防具はついているけど、胴のものに比べたら比較的薄い。

 ただ単に防御力の合計を見た場合は絶対に通らない攻撃ではあるけど、こうして薄いところを狙えば通るはずだ。

 これは一種の賭けでもあったが、俺はその賭けに勝った。

 カインは足元に打たれた矢にバランスを崩し、前のめりに倒れる。そして、その隙を追撃の【トライショット】が捉えた。


「流石に、それは想定してませんでしたね……」


 矢はカインの肩に突き刺さり、前のめりに倒れようとしていたカインの体を後ろに吹き飛ばした。

 かなりの衝撃だっただろう。カインの体が浮き上がり、空中で一回転するところだった。

 流石に【ストロングショット】を乗せた矢は強い。魔物を爆散させるだけのことはある。

 カインは肩に刺さった三本の矢を見て、痛そうに顔をゆがめながら、降参の意を示した。


「しょ、勝者、アリス陛下!」


 審判の合図と同時に、会場が歓声に沸く。

 俺はすぐさまカインに近寄ると、矢を引き抜いて【ヒールライト】をかけた。

 抜く時にちょっと痛かったかもしれないけど、すぐに治療したから跡にはならないだろう。

 他に目立った傷は見当たらないし、多分大丈夫だと思う。


「流石ですね。あそこで冷静に足元に矢を撃ちこむなんて」


「当たるかどうかは賭けだったけど、まあうまく行ってよかったの」


 確かに俺の命中率は群を抜いているが、それは何も指定がなく、どこに当ててもいいという状況での命中率だ。

 ほとんどが盾に隠れて見えない状態のカインに対し、わずかに見えている足を狙うとなると多分相当なマイナス補正がかかっていたことだろう。

 仮に当てられたとしても、当たり所がよければ普通に弾かれていた可能性もある。

 きちんと有効打として矢が入り、カインがバランスを崩してくれたからこそ綺麗に決まったのだ。

 まあ、もっと安全な方法もあったけどね。今思いついたけど。

 例えば、【ハイジャンプ】で高く跳躍し、そこから【トライショット】を放てば、カインは突撃することができなかっただろう。

 いくらカインでも空を飛ぶことはできない。そして、遠距離攻撃手段も持たない。だから、攻撃が届かない上空に逃げれば割とやりたい放題だったのだ。

 もちろん、あまりむやみにジャンプしていては着地狩りされる可能性もあったから結果的にやらなくて正解だったかもしれないけど、【トライショット】の奇襲くらいにはなっただろう。

 なんで戦闘中に思いつかないかなぁ。自分が兎だということをもっと理解しておかなければ。


「今はまだ及びませんが、いずれはアリスさんに追いついて見せますよ」


「期待してるの」


 俺はカインを引き起こし、肩を叩く。その後、フィールドを後にした。


 その後、表彰式と閉会式が行われた。

 決勝戦は俺とカインだったわけだけど、俺との勝負はどちらかというとエキシビションマッチのようなものだ。

 元々、闘技大会の目的が俺の強さを示すことだし、この国で一番強いのは俺ということになっているから負けるなんて思われていない。

 つまり、決勝戦は一つ前のカインと将軍さんの戦いであって、優勝者はカインということになる。

 そう言うわけで、カインには優勝杯が贈られた。この国で二番目に強い者として、これからは認知されていくことになるだろう。

 それは必然的に俺へ向いていたヘイトがカインにも向くということでもあるけど、まあそれは仕方ない。

 カインには元からそう言うやっかみを持った人はいたし、それが多少増えるくらいはどうってことないだろう。

 そもそも、今回の出来事でカインは俺に勝てないまでも、善戦するくらいには強いということが証明された。

 そして、俺はカインのことを認め、固い握手も交わしている。つまり、カインは俺のお気に入りだと改めて周知された形だ。

 これならば、元からカインを疑っていた人達はそれなりに減ると思うし、差し引きで目を付ける人数は減るんじゃないかと思う。

 戦いを挑まれるにしても、友好的というか、尊敬の念をもって挑んでくれるなら、その方が気持ちがいいしね。


「闘技大会も無事に終わって、ようやく肩の荷が下りた気がするの」


「そうだな。思ったよりは、面倒でもなかっただろ?」


「まあ、確かに。日数がかかったのはちょっとあれだけど、結局戦ったのは一回だけだし、これで国民が納得してくれるなら定期的に開いてもいいかもしれないの」


 定期的にと言っても、半年とか一年ごとがいいけどな。

 開催間隔に関してはナボリスさんがうまく調整してくれるだろう。

 元々、闘技大会自体が王様の強さを見るための場だし、国民が納得している限りは無理に開く必要もないと思う。

 まあ、戦闘狂達のために俺がいない状態で開くというのはありかもしれないが、俺が出る闘技大会はそんな頻度は高くなくていいと思う。思ったより楽とは言っても、面倒なのに変わりはないし。


「馬車もそろそろ完成するって話だし、予定通り出発できそうなの」


「そうですね。ゴーレム馬はできてるんですか?」


「ちゃんと試作したの。まあ、問題なく動くと思うの」


 以前思っていた、高速で走れる馬車はもう完成目前である。

 ミスリルで作ったゴーレム馬に、同じくミスリルなどで軽く作った馬車を牽かせることで見た目にも優しい移動手段を獲得したのだ。

 以前は走ってたからね。いくら馬車より速く走れるとは言っても、流石にそれでは目立ちすぎる。

 それにスタミナや足並みの問題もあるし、やっぱり速く走れる馬車っていうのは必要だろう。

 馬車自体は職人に頼んでいるので、多分品質には問題ないと思う。

 俺も作ろうと思えば馬車も作れると思うけど、流石にそれは専門家に任せた方が外れがないと思った。

 馬は魔改造したけどね。


「なあ、忘れちゃいないか?」


「何をなの?」


「ほら、例の執事君だよ」


「あっ」


 そう言えば、そんなのもいた気がする。カインとの戦闘ですっかり忘れていた。

 あれからしばらく経ったし、そろそろ草の人達も情報を掴んだことだろう。早く報告を聞いてあげないといけないね。

 俺は出発前に厄介ごとは排除しておこうと思い、草の人達を呼び出した。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] さーて、あの人の詳細は?
[一言] 試合が終わって考える余裕が、できたから思いついたと思うので 試合中に思いつくのは戦い慣れてないと難しいのではないかと 足を狙うのは凄すぎます
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