表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/677

第百二十六話:砦に到着

 それから約一か月後。俺達は砦へと辿り着いた。

 ひとまず、停戦条約の期限前に辿り着くことができたが、よく考えると確実に攻撃されることがわかっているとはいえ、宣戦布告もされていないのにこうして国境付近に進軍してもいいんだろうか?

 いやまあ、演習とか理由をでっちあげればいいのかもしれないけど、表向きには何もしていない相手にこうして兵を差し向けるのはなんか悪いことしてる気がする。

 と言っても、『草』の情報は確かだろうし、やっておいて損はないんだろうけど、ちょっと気になった。

 まあ、別に攻め入るわけではないし、正式に宣戦布告がなされてから動けば多分問題はないだろう。

 宣戦布告もなしに突っ込んでくる可能性もあるのが怖いが。


「荷物は倉庫に運ぶの。それと、こちらから国境を超えることはしないこと。あくまで相手が手を出してくるまでは静観するの」


「了解です」


 ひとまず、砦に入って態勢を整える。

 本当に勝つつもりなら、この先の狭路を利用する方がいいんだろうけど、やっぱりこちらが先に手を出すのはよくないと考え直した。

 もしかしたらその場所を取られるかもしれないけど、そもそもこちらから攻めなければ関係ないし、取らせてしまっても問題はないだろう。

 後は敵が来るのを待ち、攻撃をさせてこちらが攻撃する大義名分を得てから攻撃する。

 後からごねられても困るから一応ね。


「さて、いつ来るか……」


 停戦条約の期限まで残り一週間程度。宣戦布告をするなら、それが切れた直後だと思うけど、そこらへんは相手のモラルにかかっている。

 この世界での戦争がどれほどのものかは未知数だからね。そもそも宣戦布告なんてせずに攻撃して、それで蹂躙してくる可能性もなくはない。

 いつでも迎撃できる体制を整えておかなければ。


「私は少し休むの。何かあったら報告しに来てほしいの」


「部屋はどちらを?」


「適当に。じゃあそこでいいの」


「では、そのように伝えておきます」


 将軍にそう伝え、俺は部屋へと入る。

 砦の部屋だけど、全員分の部屋はもちろんない。

 通常時なら余るくらいだが、流石にこうして兵士が集まってくるとそれぞれに個室を与えている余裕なんてない。

 せいぜい、大勢で雑魚寝できる大部屋があるくらいで、個室が使えるのは指揮官とかの幹部クラスのみだ。

 戦争が終わるまでは厳しい生活を強いてしまうが、戦争ってそういうものだと思うし、諦めてもらうしかないね。


「さて、一応確認なの」


 俺はキャラシを開き、戦力の確認をする。

 徴兵した平民兵士は流石に全員の名前を把握することはできなかったのでキャラシで確認はできないが、正規兵の方は皆確認することができる。

 平均レベルはだいぶ上がって、レベル15くらいになっただろうか。将軍クラスはみんな42くらいになっている。

 将軍とかはともかく、普通の兵士のレベルは正直低い。でも、俺がレベル上げを手伝った影響で、それぞれクラスを保有しているし、レベルアップ時のボーナスも受けている。

 アルマさんの様なぶっ壊れではないけど、それなりに使えそうなNPCスキルも取らせたし、実際の強さはもう少し上になるだろう。相手のレベルがどうかはわからないが、スキルレベルもそれなりに上がっているし、いい勝負はしてくれるはずだ。

 で、自分のレベルだけど、一つ上がって62となっている。

 これは相手を殺さないようにするために新しくスキルを取るのに上げた影響だ。

 幸い、まだ経験値は残っていたし、上げようと思えばゴーレムを狩ることによって上げることもできるから、全くなくても一日足らずで貯まることだろう。

 まあ、それはいいとして、これで取得したスキルの一つが【クリエイトウォーター】だったりする。

 一応、飲み水は別に【収納】にしまっているから、なくても全く問題はないんだけど、やっぱりあった方がいざという時に役に立つと思うし、どうせ一枠余るからと取ってみた。

 おかげで道中は水に関しては全然苦労することなく来れたし、そのおかげで平民の何人かは俺に好意的な印象を持ってくれたので、取ってよかったと思う。

 【クリエイトウォーター】自体はついでみたいなもので、本命はもう一つのスキルだ。

 その名も【手加減】。

 その名の通り、手加減してダメージを抑え、HPを必ず1は残すスキルである。

 このスキルを持っているのは大抵強い設定を持っているNPCで、何らかの理由で彼らと戦う時に、誤ってプレイヤーを殺さないようにするための措置だったりする。

 あるいは、倒してはいけない敵を捕縛するために、あえて【手加減】を取得してダメージを下げたりするのに使うね。

 でも、そんな強者と戦う場面があるとしたら、それはだいぶ終盤の話だろうし、そこまで来たら大抵はプレイヤーも育って強くなっているので、手加減なんてしなくても耐えきってくれることが多い。

 というか、殺したくないならこちらでダメージを調整してあげればいいだけの話だし、わざわざこれを取得してまで弱体化させる必要はあまりない。

 プレイヤーが取得する場合だって、そういう倒してはいけない敵を捕縛するのに使用するくらいしか使い道がなく、そう言う敵はほとんどのシナリオで登場しないので、取る意味がない。

 レベルアップ時に取れるスキルは二つだけ。その貴重な一枠をこんな訳のわからないスキルで埋めるよりは、もっと強いスキルを取った方が絶対いい。

 そういうわけで、俺も存在を忘れていたのだが、スキル一覧を眺めていたら、たまたま目に入って確認してみたらまさに今欲しいスキルだったので、迷わず取得したというわけだ。

 俺の攻撃力はこの世界では高すぎるせいで大抵の敵は一撃で倒せてしまう。シナリオ中ではできたNPCの攻撃力調整も現実となっては融通が利かないし、本当にこんなスキルがあってよかった。

 まさか『スターダストファンタジー』の開発はこの状況を見越して? ……んなわけないか。


「弓で手加減するってどうするのか想像できないけど」


 あえて急所を外して撃つとか?

 その程度だったら俺の攻撃力なら一撃になっちゃうと思うけど、そこらへんはスキルが何とかしてくれることを祈る。

 それよりは、矢が足りるかが心配かな。

 『スターダストファンタジー』で矢を買う時は、通常の矢なら一ダースごとに買うのが普通だった。

 一本ずつも買えるが、一ダースセットで買うと少し安くなることもあって、そう言う買い方をすることが多い。

 中盤以降は特殊な矢も増えてきて、それを一本ずつ買うことも多くなってくるけど、基本的には通常の矢をダースで買うのが一般的だと思う。

 で、俺が持っている矢は全部通常の矢だ。最初は二ダース持っていて、道中で何本か使用した後、買い足したりしたこともあって、今の数は全部で三十本程度。

 矢は矢筒があれば一ダースで一個のアイテムとして扱うことができるので、重量的には十二本単位で買っておきたいところではある。

 まあ、それはいいとして、三十本じゃちょっと心もとないよな。

 一応、【アローレイン】を前提とするなら、一本で数十人を相手にできるし、来る数によっては足りるかもしれないけど、散発的に来られると足りなくなる可能性もある。

 いやまあ、戦争で散発的に来ることはあまりないと思うけど、もしかしたら足りなくなるってことになるかもしれない。

 まあ、いざとなれば輜重部隊が持ってきた矢を使えばいいだけの話だけど、戦争が始まってから補充する余裕はあるのかな。


「……まあ、いざとなったら素手で戦うの」


 一応【剣術】やら【槍術】やらも持っているし、その辺の武器を拾って戦うっていうのでもいいと思う。

 その場合、大勢を対処できなくなって押し負ける気がしないでもないが。

 とりあえず、なるべく節約して戦うことにしよう。そんなことを考えながら、キャラシの確認を続けた。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >> 弓で手加減 ヘッドショットしたら頭蓋骨ではじかれつつも衝撃で気絶するとか、胴体に当たったら奇跡的にすべての臓器を避けていたとか、首に当たったら奇跡的に気道・食道および太い血管を避けてい…
[一言] 弓で手加減……膝に矢?
[良い点] なるほど手加減ですか。これならよっぽどの事がなければ安心かもしれない しかし矢だとどうなるんでしょうか? [一言] 速さと小回りを考えたら素手の方が強そうなのですが 王が自ら突撃するのは止…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ