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第百十九話:偵察任務

 シリウスと一緒に考えてはみたが、結局森外ルートと森ルートの二つに絞られた。

 方角的にそこが一番近いし、それ以外の方角から来るには物資的にもきついだろうということで、防衛戦力はその二つを多めに配置することになった。

 もしかしたら、もうしばらくしたら『草』の人達がどのルートから攻めてくるのかを知らせてくれる可能性もあるけど、それがわかるまではこの二つを重点的に守るという方向で進めていこう。

 で、それが決まった後で何をするかと言われたら、次は現場の視察だ。

 地図上では確かにその二つのルートしかないが、地図は必ずしも正確とは限らない。

 もしかしたら、現地の人しか知らないようなルートもあるかもしれないし、実際に守る場所、攻める場所を把握しておくことは大事だ。

 停戦条約があるとはいえ、あまり国境付近に近づくのは危険っちゃ危険だけど、見ないことには始まらないし、万全を期すためにもやっておいた方がいい。


「そういうわけで、国境の森まで行きたいの」


「なるほど。確かにそう言うことなら必要なことかもしれません。ですが、それは陛下自らが行う必要があるのですか?」


 そう思って、後日外出許可を得るためにナボリスさんに聞いてみたんだけど、あまりいい顔はされなかった。

 戦いが始まって先陣を切るというならともかく、そういう偵察任務は部下に任せ、王様として、城でどんと構えているのが普通のようで、王様自ら視察に出かけるということはあまりないらしい。

 来客の対応の必要もあるし、あまり城を空けることは好ましくないようだ。

 まあ、確かに視察するだけだったら俺じゃなくても誰かに行ってもらえばいいんだろうけど、それだと情報の齟齬が生まれる可能性がある。

 隠されたルートを見つけるのだってきちんと調べなければ見つからないだろうし、誰かを送るとしても適当な人を送るわけにはいかない。

 今、俺が信頼できて、且つ不測の事態が起きた時にも対応できそうなのはシリウスかファウストさんだけど、シリウスはここからあまり離れてほしくないし、ファウストさんは強さはあっても観察力があるかはわからないのであまり任せたくない。

 それに、単純に時間がかかるというのがマイナスだ。

 ここから国境の森まで馬車で行ったら一週間はかかる。往復なら二週間だ。

 時間がない今、それだけの時間をかけるのはあまり得策じゃない。それだったら、魔物相手の実戦練習として遠征した方がましだ。

 しかし、俺だったらその距離を半分以下の時間で済ませることができる。

 自分で戦うかもしれない場所を把握したいのもあるし、自分で行って自分で確認するのが一番手っ取り早い。

 そう言ってみると、ナボリスさんは困ったような顔をしていた。


「陛下の素早さは聞きましたが、そこまで短縮できるものなのですか?」


「多分、今なら二日もあれば着けるの」


「一週間を二日でですか。それは凄いですね」


 まあ、正確にはスキルを使えばもっと短縮もできると思う。

 今までただの移動にスキルを使うって発想がなかったから使ってなかったけど、考えてみれば素早さを強化するスキルなんて結構あるし、それらを併用すればまさに風を切る速さで移動することができるだろう。

 時間があまりない今なら結構有用かもしれない。


「うーん、わかりました。そこまで言うなら認めましょう」


「ありがとうなの」


「ただし、なるべく早く帰ってきてくださいね。書類仕事はともかく、来客の対応は陛下が必要なのですから」


 一応許可が出た。

 来客がどうとか言っていたけど、結局話を聞くのはナボリスさんなんだし、別に俺がいなくたっていいとは思うんだけどね。

 やっぱり、王様がいるかどうかって重要なんだろうか。同じ内容を話すとしても、やっぱり王様に聞いてもらいたいとか?

 まあ、なんだっていいけどね。来客においては俺はほぼただの置物だし。


「それじゃ、今から行ってくるの」


「え、今から行くのですか?」


「早めに済ませておいた方がいいの」


「ま、待ってください。それでしたら供の者を……」


「じゃ、後はよろしくなの」


 俺は何か言われる前にさっさと部屋を出る。

 もちろん行くのは俺一人だけだ。そうじゃないと、俺の速さについてこれる人はいないからね。

 まあ、一人くらいなら抱えて走れないこともないけど、そこまでする必要はないだろう。

 そう言うわけで、俺は早速国境の森へ移動することにした。


「こうして走るのは久しぶりなの」


 最近は訓練ばかりで自分で走るということはあまりしていなかった。

 少し前までは、いろんな場所を走り回っていたのにね。

 なまっていないといいんだけど。


「せっかくだから、スキルも使っていくの」


 時間は有限なので、スキルも使って全速力で移動することにする。

 俺は心の中でスキルを使用する。


 【アジリティブースト】


 文字通り、敏捷を強化するスキル。

 『スターダストファンタジー』では敏捷はそのまま行動順と回避に直結するから結構有用なスキルだった。

 多分だけど、これを使えば足も速くなるはず。

 俺はその後【シャドウクローク】で姿を隠すと、走り出す。すると、違いはすぐに見て取れた。

 明らかに、初速が早い。加速力も高く、あっという間にいつもの最高速まで辿り着くことができた。その上で、まだまだ速くなれそうである。

 全速力で走るのは気持ちがいいものだが、これはかなり面白いかもしれない。

 俺はウキウキしながら目的地に向かって走り続けた。


「……っと、ちょっとやりすぎたの」


 結果的に、目的地までは一日ちょっとで辿り着くことができた。

 【アジリティブースト】。走ることにおいてこれはかなり強力なスキルかもしれない。

 ただ、問題もあって、俺が走ってきた後は地面がかなり抉れてしまっていた。

 恐らく、早く走りすぎて地面を蹴る力に地面の方が耐えられなかったんだろう。

 結果、俺の足跡を辿るように地面がめくれ上がり、道はかなり酷い有様になっている。

 今回は【シャドウクローク】を使って姿を隠していたけど、これでは隠れていた意味がないな。

 普通に走っていた時はこんなことにはならなかったので、完全に【アジリティブースト】のせいである。

 これは、本当に緊急の時以外は使えないかもしれない。毎回こんなに道を荒らしてたんじゃ整備の人が大変だ。


「まあ、それは今後気を付けるとして……」


 帰りはちょっと気を付けようと思いつつ、周りを確認する。

 ここは王都から南東に行ったところにある場所。ちょうど、森がなくなり、街道が通っている場所だ。

 以前話していた森外ルートの場所である。一番の激戦区となる可能性のある場所だ。


「守りとしては、それなりなの?」


 目の前には大きな砦が存在している。

 ちょうど森と山に挟まれるように位置し、唯一の道を守っているような状態だ。

 ただ、現在は配置されている兵も少なく、時たま通る商人などを通すための門番が数人いるだけのようだ。

 まあ、強固ではありそうだから、有事の際は立派に役目を果たしてはくれそうだけど、戦うとしたらやっぱりここだろうか?

 あらかじめ物資を砦に運んでおけば、補給もかなり安定しそうだし、この砦はかなり重要な場所かもしれない。

 俺は戦争時にどうなるかを予測しながら、周囲の地形と一緒に砦を確認していった。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ウサ娘 プリティーダービー……
[一言] 足跡が伝説として残りそう
[良い点]  宰相さんが心配症な保護者みたいでほのぼの(^^)なんか戦争前のやりとりに思えないが、それが良い♪ [気になる点]  街道が突如ドドンドン!と等間隔に捲れ上がる怪奇現象が発生!(^皿^;)…
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