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第百一話:念のためにレベルアップ

「ところでシリウス、そっちはキャラシの確認とかはできるの?」


「できるぞ。と言っても、自分のだけだが」


 自分のだけってことは、やっぱり俺のキャラシ閲覧機能はゲームマスター用の特別仕様ってことか。

 この世界の人々は自分のキャラシすら把握できないようだからそれに比べたら自分のだけでも確認できるだけましな気がするけどね。


「なら確認してみるの」


「おう。……スキルがいくつか変わってるな。この【ハンマーストライク】っていうのが攻撃スキルか?」


「そうなの。と言っても、メインで使うスキルはこれから【クルセイダー】で取っていくことになると思うの」


 【ハンマーストライク】は打撃属性の武器を使って攻撃するスキルだ。【アコライト】の場合だと、大抵は杖だな。

 今回は筋力にも振っているからそれなりのダメージは出るだろうけど、流石に初期スキルだけあって終盤のスキルと比べると火力は物足りない。

 それに【クルセイダー】が使う武器は主に剣だから、ますます使わない。

 まあ、一応それが前提スキルに入っているのでこれの派生で使えるスキルはあるから、それを主に使うことになるだろうか。

 攻撃を護身用だけに使い、基本的には支援をするというのなら、別に剣じゃなくてもいいだろうけどね。


「【クルセイダー】か。となると、剣を買わないとだな」


「しばらくは杖でもいいと思うけど……そう言えば、杖はどうしたの?」


 今気づいたが、シリウスは装備していたはずの杖を持っていない。

 だが、普通に考えて、拷問する相手に武器を持たせておくはずもないので、取り上げられているかと気づく。

 まあ、初期の所持金で買える安い杖だから別になくなっても問題はないけど……いや待てよ?

 俺はシリウスの様子を確認する。すると、見る見るうちに顔を青ざめさせていた。


「あ、お、俺の杖、取られて……」


「落ち着くの。誰に取られたの?」


「知らない……兵士みたいな奴に……」


 ただ単に遊ぶだけだったら、そこまで重要視するはずもないが、シリウスの場合、設定が問題だ。

 あの杖は、設定上は死んだ父親の形見なのだ。シリウスは死んだ父の死の真相を探るために冒険者になり、その杖を肌身離さず持っていたのである。

 それが、今になってなくなっていることに気が付いた。

 他の人にとってはただの杖でも、シリウスにとっては大事な形見の杖。それは慌てるに決まっている。


「大丈夫、私が取り戻してあげるの」


「ほ、ほんとに?」


「ほんとなの。任せるの」


 王様をぎゃふんと言わせるのに加えて、シリウスの杖を取り戻すという目的も追加されたな。

 まあ、そのうち剣は使わなきゃならないだろうけど、杖自体もなければいけないだろう。

 俺は安心させるようにシリウスを抱きしめる。不安そうに揺れていた瞳が潤んで見えた。


「……わかった。今の俺じゃ足手まといだろうし、アリスに任せる」


 さて、杖があるとしたらどこだろう。

 確か、シリウスが使っていた杖は一般的な初心者杖で、一応追加効果でMPをわずかに増加させてくれるという効果があったはず。

 『スターダストファンタジー』の世界では特に大した効果ではないが、この世界ではどうだろうか?

 MP、すなわち魔力を増加させる装備品。ファンタジーな世界っぽいし、普通にありえそうではあるけど、もしかしたらとても貴重な存在である可能性もある。

 その効果に気づいているかどうかはわからないが、もし気づいていたなら、国宝級の扱いをされていてもおかしくはない。

 それに、仮にそんなことなく、ありふれた杖だったとしても、元々シリウスの持ち物だ。後々シリウスに治癒術師として活躍してもらいたいのなら、手元に置いておくはず。

 となると、可能性があるとすれば、宝物庫かどこかの倉庫あたりか?

 倉庫なら地下にもあったけど、あの時はざっと見ただけだし、流石にあるかどうかはわからないなぁ。

 こうなってくると、こそこそ探すよりあちらから差し出させた方が楽かもしれない。

 どのみち王様には痛い目に遭ってもらう予定だし、そっちで交渉した方が早いでしょ。


「シリウス、私が留守の間、一人でも戦えるの?」


「一応、スキルを覚えたからか使い方はわかってる。だから、武器さえあればなんとかなるはずだ」


 多分、シリウスのレベルなら国の兵士と同等程度。だから、一対一くらいなら何とかなりそうだけど……心配だなぁ。

 というか、タウナーさんやアルマさんだって危ない。

 もしこの家にシリウスがいるとばれれば、彼らだって罰を受ける可能性があるのだから。

 基本的には隠れていて、どうしてもとなったら戦うのではなく逃げるのが無難か。

 でも、いざという時の戦闘力は必要。うーん……。


「そういえば、シリウスは経験値を持っているの?」


「ああ、頑張って何体か魔物を倒したことがあるからな。ただ、雑魚を倒した割りには異常な経験値だったが」


 俺は再度シリウスのキャラシを確認する。

 経験値の欄を見てみると、約350ほどの経験値があることがわかった。

 で、レベルアップに必要な経験値は50。どうやら俺と同じ必要量らしい。となると、350あれば……レベル10まで上げられるな。

 これだけ上げられれば、【クルセイダー】のスキルもそれなりに取ることができる。これはレベルアップさせた方がいいな。


「シリウス、レベルアップするの」


「レベルアップ? でも、それにはゲームマスターの許可が必要……って、アリスがそのゲームマスターだもんな」


「その通りなの」


「なら頼む。取るスキルは自分で決めていいか?」


「もちろんなの」


 いわゆる最強ビルドはあるが、そこまで目指さなくてもいいだろう。

 というか、ほぼ無限に経験値を稼げるこの世界なら、多少遊んでいてもいずれ最強ビルドになる。

 いざという時は『リビルド』もできることだし、シリウスには自由にスキルを取ってもらいたいところだ。


「じゃあ、レベルアップなの」


「おう」


 俺はシリウスのキャラシから、『レベルアップ処理』の画面に進む。

 本来なら俺が選ぶのだが、今回はシリウスが選ぶと言ったせいなのか、シリウスの方に画面が表示された。

 上げる能力値も取るスキルも自由に選べる。ただ、見ている限り、NPCスキルは取れない様子だった。

 やっぱりプレイヤーだから? 【無限の魔力】とか取れたら相当強かったんだけど、それは通らないらしい。

 まあ、なくても十分強くなれるからいいんだけどな。


「取り終わったぞ」


「レベルアップした感想は?」


「これすげぇな。一気に力が増した気がする」


 本来であれば、筋力に補正がないホビットは【クルセイダー】にはあまり向かないが、レベル上げやスキルによって底上げしていけばできないことはない。

 クラス補正もあるだろうし、ある程度戦えるようにはなっただろう。

 後はやっぱり武器だけど、これに関しては今は借りるしかないかな。まあ、借りたところでこの足じゃ戦えない気がしないでもないが。

 とりあえず、これなら【ヒールライト】で粘りつつ、接近してきた相手くらいなら往なせるくらいにはなったと思う。

 これで何とかなってくれるといいんだけど。

 俺はいつまで経っても消えない不安を抱えながら、シリウスの様子を見ていた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  着々と貯まりゆくヘスティア王国へ抱く読者のヘイトポイント(^◡^;)ここまで来たらどんなエグいザマァもカムカムウェルカムですぞ♪(なろうでよくある無駄に残虐ファイトするザマァもどんと来い…
[一言] 制裁項目が増えたな……
[一言] おや?シリウスくんの杖を強奪した罪状追加ですか? 利子をたっぷりつけて返してもらいましょう レベル10なら結構強そうなので何とかなるはず
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