サイラス・アドルフ 後編
ハリエットの窮地にはこの身を投げ出してでも助けになろうと決めていた。
だが彼女は、あるとき自ら窮地に立つような真似をした。
その場にいたのは、国王夫妻、近衛騎士が三人、ハリエットと彼女の侍女、サイラスのみだった。
ハリエットは国王夫妻に個人的な茶会に招待され、侍女ひとりのみを伴って登城していた。
そこは王の私的な小庭園で、東屋に茶の用意が調えられた。
最近、侯爵代理と親しくしているそうじゃないか、と王に出席を求められたサイラスは、警護役としてなら、と苦しい抵抗をしてその場に立っていた。地方男爵の五男坊風情が王と同席などとんでもないことだと思ったのだ。
着座しているのは、美しい庭園に相応しい振る舞いのできる三人のみ。
そんな爽やかな午後のひとときを、襲撃する者があった。
サイラスは一本の矢が光るのを見た。
彼は考えることなく動き、外套のひと振りで矢を叩き落とした。この期に及んで動かない近衛騎士に舌打ちし、矢が飛んできた方向と、守るべき三人の貴人の間にその身を晒す。
「陛下をお守りしろ!」
王立騎士団団長の一喝に、三人の近衛騎士はようやく己の職務を思い出して動いた。
サイラスが国王夫妻と同じ場所にいたはずのハリエットを探すと、彼女は襲撃者がいたとおぼしき方向を注視して立っていた。
傍らに侍女を従え、己の身を守るものも持たずに彼女は堂々とその場に立っていた。
「アドルフ様、賊はあちらの方向に真っ直ぐ走り去りました。外套の色は紺です」
冷静なハリエットに無性に腹が立って、サイラスは衝動的に彼女を両手で持ち上げた。
「小娘ぁ引っ込んでろ!」
サイラスの腕がうなると、見た目通り軽い彼女は景気よく空を飛んだ。
四十代の壮健な国王がハリエットをその腕に受け止め、衝撃で後ろに倒れそうになる主君を近衛が慌てて支える。
「近衛はどうしている! 賊を逃がすな‼」
ハリエットの侍女は目を剥いて彼女の行方を見送っていたが、サイラスに頭を下げてすぐさま主の元へ走った。
「感謝いたします」
賊はすでに姿を消していた。
ここは王宮の深く、サイラスは鍛え上げた配下の不在に苛立ちを隠せなかった。
すぐさま王宮中を隈なく捜索するも、その正体の欠片すら掴むことはできなかった。
王城内外の警備が強化されたまま、夜になって捜索の打ち切りが宣言された。
夜、騎士団長室に戻ったサイラスを、ハリエットが訪ねてきた。
「これは侯爵代理」
帰宅するところだったヒューズは、仕方なくその場に留まる体勢になった。他人の立ち会いなく、未婚の令嬢を騎士団長室に置くわけにいかないからだ。
令嬢の、というより、サイラスの評判を気にしての行動だった。
「遅くに申し訳ありません。こちらをお渡ししましたら、すぐに失礼いたしますね」
はっきりとヒューズにだけ断りを入れて、ハリエットは羊皮紙の束を執務机に置いた。放り投げた、と言い換えてもいい。
「警備の穴です。どうぞご検討を」
それだけ言って本当にさっさと出て行こうとしたハリエットを、サイラスは慌てて呼び止めた。
「お待ちください。どこからこれを」
ちらっと見ただけではあるが、羊皮紙には実に詳細に王立騎士団の警備体制が記されていたのだ。
「どこからも。見たままを記しただけです」
どういうことだ。やはり侯爵家の諜報力は計り知れない。
「……これはあなたの仕事ではない。ここまであなたがする必要はないはずだ」
ハリエットは柳眉を吊り上げてサイラスを見た。
「どういう意味ですか。また『小娘は引っ込んでいろ』とでもおっしゃるおつもり?」
「その通りだ。あなたのような方は、後ろで守られているべきです」
きっぱりと言い切ったサイラスを制止すべきか、ヒューズはふたりの様子を見守りながら考えていた。
「守ってくれる両親はもうおりません」
「さっさと結婚すればいい。相手には困らないでしょう」
さすがに差し出口が過ぎたか。サイラスは後悔したが、もう遅い。
「アドルフ騎士団長、お言葉が過ぎます」
「副団長様のおっしゃる通りです。あなたには関係ありません」
「ならば金輪際、俺と敵の間に立つような真似をなさらないでいただきたい。あなたは戦うべき方ではないはずだ」
その言葉は、ハリエットの神経を逆撫でしてしまったらしい。
彼女はサイラスを真正面から睨みつけた。
「わたし以外に闘える者がいないから、ここにいるのです! 好きでこんな生活をしているわけがないでしょう!」
サイラスがしたのは、純粋な戦闘の話だ。彼女のなかで彼の言葉は、彼女が生きていくためにしている闘いの話に変換されてしまったようだ。
それでも構わない。彼が言いたいことは同じだ。
「だから婿でも取ってそいつに任せればいい話だと」
「どこにいるのですか、そんな方が! 繋ぎの侯爵だとわきまえて誠実にわたし達を助けてくれ、弟が成人したらその地位をあっさり手放してくれる、そんな都合のいい男性が! どこにもいないから、わたしがこうして」
「いないなら俺がなってやる! 侯爵の位なんざ欲しくねえ。一時的な助けになる男が欲しいなら、俺がそれになってやるから」
だからもう二度と、その代わりのない身を危険に晒さないでくれ。
「はあああああ⁉」
サイラス渾身の叫びは、ハリエットの怒りを余計に煽ってしまったようだ。
「ちょ、侯爵代理、今のは一応求婚では」
ヒューズが慌てて口を挟んだ。
「わたしは熊と結婚なんかいたしません! 馬鹿にするのも大概になさって! いつもいつもひとのことを無力な子ども扱いしておいて、よくもまあ言えましたね、そんな台詞が!」
「子どもなんだから仕方ないだろう」
「子どもと結婚なさるおつもり⁉」
「形だけなら問題無かろう」
「父に見惚れて真っ赤になる方なんか、形だけでもお断りいたします!」
「…………面倒臭い小娘だな」
市井の口の悪い娘ならば、おとといきやがれクソジジイ、くらいのことは言ったであろうか。残念ながら育ちのよいご令嬢は、罵り言葉の語彙に乏しかった。
そのご令嬢が無理矢理捻り出した言葉がこれだ。
「この、このっ……森のくまさん!」
なんとも可愛らしい捨て台詞を残して、ハリエットは部屋を出て行った。
残された中年男ふたりは笑うよりほかなかった。
「……おまえ、おい、サイラス。あのひとに惚れてたのか」
ひとしきり笑い転げたあと、ヒューズはかつての配下に訊ねた。
「いいや。まったく」
「じゃあなんだったんだ、今のは」
「言った通りだ。あの小娘には助けが必要だと思ったから、申し出た」
「惚れてもない女にか」
サイラスは難しい顔をして、少し考える仕草になった。
「俺には恋情というものがよく分からん」
最初の妻のことは好いていたように思う。二番目の妻のことも大事にしようと思った。
ふたりを亡くしてからは、女性に関わるのをやめようと思って生きてきたのだ。
何度か身体を重ねた女はいるが、自分の血を引く子を孕ませないよう、注意してきた。人並み外れて大きなサイラスの血脈は、次の世代に繋ぐことが難しい。
そう悟ってしまうと、結婚などできるはずがなかった。守るべき女の命を自分が奪うのだという想像は、サイラスを臆病にさせた。
ハリエットへも恋情を持ったことはない。劣情などもってのほかだ。
「そうなのか」
「ただ、あの娘に仕える騎士になりたいと思ったことはある」
ヒューズは、それは恋情とは違うのか、とは訊かなかった。
「よく分からんな。まああのご令嬢は、先代侯爵を前にして惚けるおまえを見てドン引きしてたからな。きっぱり振られたことだし、挽回する目も無さそうだな。どうする、失恋記念に今から飲みに行くか」
「だから惚れてないと、……いや、いい。警備の見直しの手間が省けたことだし、行ってくるか」
それから一年以上後のことである。
(なんだ。あの小娘、やっぱりただの小娘だったのか)
新米騎士の結婚に関する書類が騎士団長室に届けられた。
サイラスは非常に愉快な気分になった。
ハリエットは好いた男の姿を見たいがために、騎士団の様子に気を配っていただけだったのだ。ただその一心で騎士団の警備の隙を探し、こっそりと想い人を見つめていただけ。そこで偶然、少年達の事情に通じてしまった。
ただそれだけのことだったのだ。侯爵家の諜報力など関係なかった。
なんという執念だ。
恋する乙女の諜報力は、時に本職を凌ぐらしい。
夜会に寄り添って参加していた彼女達は、その仲睦まじさを見せびらかせながら踊っていた。
ライリー・ティンバートンは、姫君に仕える騎士のように見えた。
ああ、そうか。サイラスは思った。
あんな風に、主人に仕えるように愛することも可能なのか。妻を愛することと、その妻に仕えることは両立させてもいいものだったのか。
さすが、若い奴の柔軟な対応力には敵わない。
自分もああすれば、美しい侯爵代理に惚れましたと言うことができたのだろうか。
少しだけそんな考えが脳裏をよぎったが、華奢な身体を前にするとどうしても腰が退けてしまう。やっぱり無理だと思った。
息子のような年齢の若い騎士を軽く揶揄ってやると、夫を庇うハリエットに一見優雅に、その実本気で睨まれた。
実に愉快だった。
元々面白い若者だったライリーは、妻を得てからみるみるうちに実力を付けていった。
その若い騎士の成長と成功を祝う宴席に呼ばれたサイラスは、気分良く酒に酔った。
最近では騎士団長を恐れる配下に気を遣って、このような席へは顔を出さないようにしていた。珍しく是非にと乞われて出てみれば、ハリエットの正面に座らされたのだ。
のびのびと余生を送りはじめた彼女は、ただの小娘に戻って、恋うた男との結婚生活を大切に過ごしているようだ。大切にするあまり、未だに被った猫を捨て切れていない様子が笑えた。
宴の終盤にサイラスは、自分を招んでくれた騎士の、女好きのする顔に礼を言った。
「久しぶりに楽しかった。招待に感謝する」
「いえ、こちらも楽しませてもらいました」
サイラスは騎士の顔をしげしげと眺めた。彼は仲間との馬鹿騒ぎを心底楽しんでいるように見えた。
「妹は元気にしているのか」
エベラルド・ウッドと名乗っている男は、目を見開いた。丸い青が鮮やかに強調される。
「…………おかげさまで」
「ならばよかった。やっぱり若者の体力には敵わんな。そろそろ帰ることにするかな」
「は」
「ああ。酒の席だからと言って、約束を反故にするような真似はするなよ。騎士団の評判に関わる。足りない分の日数は、おまえの休暇を回してやれ」
「……マジですか」
「マジだ」
はああ、と酒臭い息を吐いて肩を落としたエベラルドは、やっぱ連れ込んでやればよかった、と呟いた。
「やめとけ。あの女に関わると寿命が縮まるぞ」
「ずいぶん訳知りですね」
「不本意ながらな」
不本意なのかよ、と酔いが回った顔で彼は笑った。
その鍛えた肩を拳で軽く突いて、サイラスは王城の一角に与えられた独りの住まいに帰って行った。
騎士団長の座は武官の最高峰にあり、キャストリカの男は誰もが一度はその名誉ある地位に就く自分を夢想してみる。
サイラスも例外ではなかったが、実際にその座を掴み取ってみると、己が文官になったような気分になってくる。書類の山に埋もれながらも、その地位に恥じない武技を磨き続けなければならない。
これがなかなか難儀なのだ。
たまの休暇には、馴染みの親子の家を訪ねて息抜きをする。
七つになるという息子に、と菓子や玩具を渡すようになってしばらくすると、それまで決して部屋から出てこなかった息子がおずおずと顔を出し、土産への礼を言うようになった。
次の約束をすることはない。そのときだけの関係ではあったが、サイラスはその親子と過ごす時間を楽しみにするようになっていた。
しばらく間が空いて、久しぶりに女のところに顔を出すと、彼女は子ができた、と言った。
サイラスは驚いて、そして焦った。絶望感に近い思いも抱いた。
前回訪れた際には、元より太っていた女の腹が出ていることに気づかなかった。だが話を聞いたときにはすでに分かりやすく腹が前に突き出ていて、流す処置をしても手遅れなのは明らかだった。
サイラスはすぐさま子育てに適した家を用意し、親子をそこに住まわせた。小間使いを雇い、産婆の言う出産に必要なものをすべて揃えた。思いつく限りのことをやった。
「すまない。気をつけていても、できるときにはできるものなのだな。なんでもしてやる、必要なものはなんでも買ってやるから、とにかくおまえは出産まで力を蓄えることだけを考えていろ」
「何死にそうな顔してるんだい。平気だよ。このでかい尻を見なよ。あの子を産んだときも、産婆がびっくりするくらい軽いお産だったんだよ」
違うんだ。
俺は我が子を望むことを許されない男なんだ。
サイラスはあくまでも明るい女の手を握って、神に祈った。
どうか、どうか。子まで無事になどと贅沢は言わない、この罪なき女の命までは奪わないでください。これ以上自分に、女の命を奪わせないでください。
それさえ叶うなら、俺はこの剣を握る腕を失ったって構わない。騎士団長の腕一本でも足りぬというなら、この命ごとくれてやる。
サイラスの祈りが天に届いたのか、産み月に入った明け方に産気づいた女は、陽が傾きはじめる前に赤子を産み落とした。
産声を聞いたサイラスは、いつ振りか思い出せないくらい久しぶりに涙を流した。
女は無事かと部屋に乱入しようとしたところ、鬼の形相をした産婆に一喝され、すぐさま踵を返した。部屋からは女の変わらぬ元気な笑い声が聞こえた。
己の半分ほどの大きさの産婆による説教を背を丸めて聴いたあと、やっとサイラスは女と赤子に面会する許可を得ることができた。
そこでは女の長男が、すでに兄の顔をして赤子を覗きこんでいた。
「よくやってくれた」
女のけろっとした顔を見たサイラスの目から、再び涙が溢れた。
「ちょっと、何その怖い顔。赤ちゃんが怯えて泣くから、まともな顔になってよ」
「赤子は目が見えぬものなんだろう」
サイラスは泣きながら笑って、女の腕に抱かれた赤子を見た。
彼の掌に乗ってしまいそうなほど小さな人間は神々しく、光り輝いているようにすら見えた。
「あの、ね、サイラス。これは」
珍しく言い淀んだ女に、サイラスは自分ができる限りの優しい表情を向けた。
「抱いても、いいだろうか」
おずおずと差し出された赤子は、小さいながらも確かな重みをサイラスの腕に伝えてきた。
赤子は男児だった。サイラスには似ても似つかない。母親である女との共通点も見つからなかった。
「この子の父親とは、何か約束をしてあるのか」
「……いいや。騙すようなことして悪かったよ。あんたの子だったらいいなと思ってたんだ」
「なら問題ないな。この子を俺にくれるか。……おまえも、今日からは俺を父親と呼べるか?」
女の長男は母親とその情夫を見比べて、困惑した顔になった。
「……いいの?」
「ああ。おまえがそれでいいならな。俺はおまえにも父と呼んで欲しい」
その言葉を聞いて、女は顔をくしゃくしゃにして泣き、そして笑った。
それから三ヶ月後、女は長男だけを連れて姿を消した。
隊務の合間を縫って親子に用意した家を訪れたサイラスは、泣き喚く赤子を抱いておろおろしている小間使いにその話を聞いた。
あたしは引き留めたんですけどね。奥さまは、あたしなんかがあんな偉い人の女房になれるわけないだろう、って。いつもおっしゃってました。それで今朝、今日あのひとが訪ねてくるはずだから、伝えてくれ、って出て行ってしまわれたんです。
その子はあんたの子だよ。って。
サイラスの腕の中では、腹を空かせた子が泣き続けていた。
隊務を終えたライリーは、その日も元気に帰宅の挨拶をした。
いつもなら玄関先まで出迎えてくれる妻の姿を探して夫婦の寝室まで行き、そこにあった光景に身体を硬直させた。
空であるべき寝台に、見知った巨躯が転がっていたのだ。
思考停止してしまったライリーに、後ろから現れたハリエットが唇の前に人差し指を立てて見せた。
ライリーは無言のまま妻に促されて、恐る恐る入室した。
大きないびきをかく騎士団長の頭の横に、健やかな寝顔を見せる赤子がいた。
ひと言も発しないまま、夫妻は居間に移動した。
「え、……何、何事ですか?」
自分の見たものがなんだったのか、ライリーには分からなかった。
泣く子も黙る騎士団長の隣に、泣いていない赤子がいた。
何故。なぜライリー達夫婦の寝台で。
「アドルフ様、いつの間にかご家庭を持たれていたらしくて、この度めでたく奥さまに逃げられたそうです。お家に赤ちゃんだけ残されていたと、助けを求めにいらっしゃいました」
こんなときでもハリエットは、アドルフに対する棘を隠さない。
彼女としては、こんなときだから、なのだが、夫にその理由を話すことはなかった。
曲がりなりにも、ハリエットに求婚の形を取った申し出をしたことのあるアドルフには、そのときすでに通う先があったのだ。
あの頃、心の中のライリーに勝手に操を立てていなければ、うっかり頷いてしまうところだったのに。危なかった。
男なんて。ハリエットは一瞬でもほだされかけた過去の自分を呪いたくなった。
命懸けで子を産んだ女に愛の言葉を囁くでもなく、赤子を自分にくれ、としか言わないなんて。逃げられて当然だ。
あまつさえそんな私生活のあれこれを、自分を目の敵にしている小娘に訊かれるがまま、べらべらと喋るなんて。
目の前の小さな命に気を取られているにしても、うかつが過ぎる。その必死な形相に向かって嫌味を言う気にもなれず、手を差し伸べてしまったではないか。
「…………えええー……それで、何故あそこで爆睡?」
「ごめんなさい。添い寝するよう提案してみたのですけど、さすがに床に転がっていただく訳にはいかなくて。あれより大きな寝台がなかったものですから」
「つまりあれは、全力で寝かしつけた結果の寝落ちってことですか?」
鬼の騎士団長と子育てあるあるが、どうにも馴染まなかった。
神よ。
女を助け、更にこの子まで授けてくださったことに感謝します。
この腕一本、捧げる約束はしたが、持って行くのは、この頼りない子が自分の二本の足で歩くようになってからにしてもらえるだろうか。この命も必要ならば、子どもが大人になるまで待って欲しい。
それは都合がよすぎるか? そもそも神とは、こんな勝手な願いを叶えてくれる存在だっただろうか。
この子のために、これからは教会へ真面目に通わなければならないな。
そこでゆっくり、この神が授けてくれた子の未来について考えてみよう。
ところで、王立騎士団団長の仕事と育児とは、両立可能なものなのだろうか。
それは分からないが、とにかくやってみるしかない。
泣く子は大人の事情など待ってはくれないのだ。
……む、待ておまえ、何故起きる。こら泣くな。つい今しがた、腹いっぱい飲ませてもらったばかりだろう!




