ゴキブリを喰う
俺の目の前を茶色がかった黒い物体が通り過ぎる。
「こ、これわ・・・!?」
そう、ゴキブリである。
「わたちが暮らしてたボロアパート(一度雨漏りしやがったでちゅわ!)では、外から入り込む以外でゴキブリは見たことありませんでちたが・・・ここはあんまり衛生的ではないようでちゅわね。何か食べこぼしだとか、虫の死骸とかがかたづけられないままなんでちゅかね」
人間だったときは気持ち悪いと思っていたゴキブリだが、こうしてハムスターになったこのつぶらな瞳から覗いてみると、案外おいしそうに見えるのである。
そう思える自分が恐ろしいような、生命力を感じさせるような複雑な心境であったが・・。
カサカサと無防備にこちらに近づいた愚かさを恨みなさいと思いながら、わたちは超高速でゴキブリに近づいた。
ゴキブリは動きこそ早いが、途中で立ち止まるという弱点がある。追いつくのは容易だ。
わたちは黒くて艶やかな背中にダイブして獲物を捕らえた。
必死に抵抗されながら食べるのもなんだか食べづらいし落ち着かないので頭部に噛みついて絶命させようとする。
ゴキブリも死ぬまいと必死に羽根や手足をばたつかせるが、前足でガッチリ掴んでいるので逃げられない。
頭の形状がほとんどなくなったところでようやく絶命した。
「まるでスッポンみたいな生命力でちゅわ」
まあ、スッポンは食べたことが無いのであくまでも想像だが・・・。
羽根はパリパリ、中身はクリーミーでうまかったです。
卵つきでないのが惜しかったが・・。