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俺、最強無敵の異世界転生ヴァンパイア! のはずが、ショタエルフになって、ロリっ子お姉様達の尻に敷かれる奴隷ライフ始めましたッ!  作者: MITT


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第九話「決戦、ヴァンパイアボーイ!」②

「な、なんだ! 人魂かっ!」


 闇の中を絶火を松明代わりにしばらく進んでいたら、不意に茂みの中から声。

 

 絶火に魔力を込めると、炎が長く伸びる。

 茂みに向かって、薙ぎ払って一帯を焼き払うと、火達磨になった人影が数人飛び出して来て、地面を転げ回る。


 馬鹿が……夜間行軍中にいきなり叫ぶとか、素人か?

 そんな奴は真っ先に死んで当然だ……夜の闇ってヤツは見えないのがお互い様だからな。

 自分の位置を暴露したヤツは真っ先に狙われる。


 絶火の刃は炎そのものなんで、夜の闇では格好の的ではあるんだが。

 今回敢えて、そのチョイスをした。

 

 炎の光を浴びて、影が出来る……それが狙いだ。


 森の中だとさすがに影も出来ねぇからな。


 影さえ出来れば、後はチョロいもん。

 闇の腕で近くにいる兵を片っ端から殺していく。


 すでに敵の真っ只中まで入り込んでいたのだが。

 先程と同様、命の危機を感じた兵隊たちが我先に逃げ出したことで、たちまち正面に大きく穴が出来る……。


 まぁ、奴隷兵なんて所詮はこんなものだ。

 空いた穴に一気に飛び込んで、片っ端から出会う敵兵を焼き払って蹴散らしながら、奥へと奥へと強引に入り込んでいく。


 どうも、サコンの兄弟が斥候共を皆殺しにしてくれたから、敵も情報不足で警戒態勢を取りながら、慎重に進軍せざるを得なかったようだ。


 おまけに月も沈んで、文字通り闇夜の森の中の無灯火進軍……最悪の条件に近い。

 

 兵隊共も休むまもなく闇の中の強行軍を強いられて、体力も限界近いらしい……明らかに戦意が乏しいようで、もはや、戦うどころか無秩序に逃げ惑っているだけ。


 当然、隊列なんて維持できる訳もなく、もうグッダグダ……。

 多分、強行軍でなるべく野営地に近づけさせた上で、こそこそと包囲体制を敷いて、奇襲……と目論んでいたのだろう。


 軍勢自体も大きく三つに分けていた様子から、左右から攻め込んで一気に中央突破を図る中央突破戦術でもやろうとしていたような形跡がある……全く小賢しい。


 陣形を重視した集団戦術を使う輩ともなれば、むしろ進軍中を奇襲するに限ると判断したんだが、やはり正解だった。

 

 敵は、始めから三隊に分けてしまった上に、明らかにバラけすぎてしまっていた……。

 落伍者も派手に出ているようだし、道に迷ってるヤツも大勢いるようで、かなりの広範囲に薄くバラ撒かられるように展開している。

 

 むしろ、これはもう軍勢として機能してない……敵は急ぎすぎたのだ。

 

 思ったよりも、近くに居たようではあるけれど、こんな有様では普通に先手を取って、正面から戦いを挑むくらいでも勝てたかもしれん。


 もっとも、数だけは結構な数がいるから、そこまで余裕と言うわけではない……。

 

 総勢三百人ともなると、さすがの俺も一斉に襲いかかられたら、苦戦くらいはするだろうし、何より、皆殺しは避けたいからな。

 

 混乱を誘発すべく、絶火から炎弾を打ち出して、森のあちこちに放火して回る。

 敵はもはや連携もなにもないが、それだけで十分以上に混乱を起こしている。


 森で火を付けて回られるとか、もはや火計食らってるようなもんだからな……。

 

 なにより人間、目の前で火が燃えだしたら、逃げに入るのが普通。

 案の定、邪教団の軍勢はもうめちゃくちゃな動きになっていて、俺への対応どころじゃない様子。

 

 火が燃え広がったとしても、あとでド派手に雨でも降らせば、なんとかなるだろ。

「幽幻霧氷」はそのためにあるようなもんだ。


 どのみち、こんな寄せ集めでグッダグダの軍勢。

 俺とまともに戦えるような猛者なんて一人も居ないようで、呆気なく敵の本陣と思わしき、最後尾の密集地帯に入りこめた……!


 なんと言うか、拍子抜けするくらいあっさりと最終決戦と相成った!

 

 いくぜ! この野郎っ!


「おう、クソ坊主共……うちの御主人様が世話になったようだな。お急ぎの所すまんが、改めてお礼参りに来てやったぜっ!」


 我先に逃げようとしてたから、総大将の位置もモロバレ。

 先回りして、回り込んだ上で、せっかくなので顔見せの上でご挨拶と洒落込んだところだった。


 周囲にも時間稼ぎと思わしき、犬耳とか重騎士なんかの集団もいたけど、そいつらも全員すでにあの世行き。

 

 残るはすでにこいつらだけ……もはや、そこまで追い詰めているのだ。


 まったく、俺ってば最強すぎて、あくびが出るぜ。

 

「な、なんなのだ……貴様は! わ、我が軍勢はどうしたのだ! それに、デバス卿の部隊が足止めをするのではなかったのか?!」


 一際デブいのが吠える。

 

「軍勢なんて、まっすぐ突っ切ってきたに決まってんだろ? あんな雑魚共、束になっても俺の敵じゃねぇよ。デバス卿ってのはコイツのことか? もしも、当てにしてたのなら、残念だったな……」


 片手に持っていた中身入りのカブトムシみたいなゴツいツノつきの赤い兜を地面に放り投げてやる。


 まぁ、相手に恐怖を与える演出なんだが、効果はあったらしい。

 全員、呆然と言った様子で、地面に転がった生首にその目線が集中している。


「ば、ばかな……コロサス帝国の精鋭達がいとも簡単に……黒騎士デューイ卿のみならず、赤騎士デバス卿すらも……な、何と言うことだ……」


 ……なるほど、神殿で殺した角つきはデューイ卿って名前だったのか……黒騎士とはまたカッコいい称号だな。


 で、そこの生首はデバス卿でこっちは赤騎士と……うん、名前だけ聞くと如何にも中ボスとかそんな感じっぽいな。

 

 確かに鎧も赤かった。

 ちなみに、一人だけやたら目立ってて、奴らの指揮官っって全力アピールしてたから、真っ先に殺しといた。


 闇の腕は使わずに、正々堂々と背中に飛び乗って「幽幻霧氷」でゴリゴリと素っ首叩き落としてやった。


 ああ言うフルアーマーの重鎧相手ってのは、首刈り狙いってのがセオリーだからな。

 死角も大きいから、後ろから忍び寄って、首の装甲の隙間から短剣でドシュッとやるだけでカタが付く。

 

 今の俺は、正面からだとあの手合はキツイからな……超スピードで翻弄して、一撃必殺で殺る。

 まぁ、さして難しい仕事じゃなかった。


 なるほど、コロサス帝国ってのが、こいつらの黒幕って訳か。

 ……そのうち潰す国リストに入れとこう。


「おい、テメェがボスキャラなんだろ? どうせ、切り札の一つや二つあるんだろ? 出し惜しみしてる場合か? ここはいっちょド派手な一発芸でも見せてみろってんだ!」


 数は……13人か。

 それなりの数のようだが、どいつもこいつも魔力も生命力もさしたるもんじゃない。


 ただの人間……はっきり言って、雑魚だ。

 全員、幹部クラスのようで服装は黒いローブで統一されている。

 

 まぁ、敵の中枢要員ってのは確実だな……。

 けど、それも含めて全軍駆り出すとか、少しは戦ってもんを解ってるらしい。


 連中は、優位のようでその実、追い詰められていたのだ。

 

 これまでは、深い森の奥でその実態を誰にも知られないようにしつつ、戦力を蓄えていたのだが。

 イスラ達を取り逃がしたことで、その情報が明るみになってしまった。


 三百人規模の軍勢ともなると、さすがに国軍が動く。

 国軍さえ動けば、この戦は勝ち……こんな寄せ集めの烏合の衆、あっという間に殲滅されて、終わる。


 教団側としては、もう少し時間をかけて、国軍の騎士団に対抗できる程度まで戦力を増やしたかったのだろう……。

 だが、その目論見はイスラ達のおかげで完全に潰えた。


 連中は、もはや座していても死を待つばかり……そんな状況に追い詰められてしまったのだ。

 

 だからこそ、こちらの体制が整う前に、全力で攻め込んでくると読んでいたのだ。

 もはや、奴等はすべてを捨てて潔く退くか、玉砕覚悟でこのまま攻め込むかの二択。


 ギルド側の戦力が100にも満たない小勢である以上、体制を整えられたり、逃げに入られたりする前に強襲をかけて、一気呵成に攻め込む……奴等の勝ち目は十分にあった。


 いや、恐らくギルドの戦力では、壊滅的な被害を被った挙げ句に突破を許していただろう。

 ギルマスやサコンも、この展開は読めていたようだったが、解っていても、どうにもならなかったのだ。


 なにせ、俺達が戻った時点で撤退を開始しても、こいつらのこのペースでも余裕で追いつけただろう。

 撤退中に後ろから三倍もの兵力で追い立てられたら、壊乱するのが関の山。

 おまけに街は、籠城戦なんて考慮してないらしいから、撤退しても意味がない。


 だからこそ、あの野営地に留まり迎撃態勢を整えた上で、不利を承知で迎え撃つしかなかったのだ。


 敵ながら、良い判断だとしか言いようがない。

 間違いなく戦争の専門家……多分、さっき殺した赤騎士デバスとかが命じたんだろうな。


 うん、身も蓋もなく殺してしまったけど、それなりに名のある武人だったのかもしれない。

 もう死んでるからどうでもいいけどな!


 だが、思惑通りにやらせたら、奴等の勝利となっていたのは明白だった。

 

 ……もっとも、残念ながらコイツらは俺を敵に回してしまった。

 その時点で、とっくに命運なんて尽きていたのだよ。

 

 御主人様達は、何事もなかったかのように街に戻って、俺プロデュースの成り上がり冒険者生活を始めるのだ。


 こんなクソみてぇな奴等に邪魔はさせない……。

 あの気のいいギルマスにも恩を売るいい機会だと言えるだろう。


 コイツらは、路傍の石だ。

 ……軽く蹴りとばして、おしまいにする。


 それ以上でも以下でもない。

 必然的に、この戦いはこいつらが死ぬか、俺が死ぬか、二つに一つ。


 お互い容赦も許容もない……文字通りの決戦に他ならない。


「くっ……さては、小僧……その魔力の色。あの時、無残にも兄者をなぶり殺した亡者だな。だが……なめるなっ! 私も僧正の位を持つ闇の教団の大幹部だぞ? 我が力とくと見るがいい……。我が精鋭達よ……今こそ、その身を捧げるのだっ! 合神融合……我らが、最終呪法であの怪物を葬る……!」


 さてさて、最終呪法とは大きく出たね。

 いったい、どんな一発芸かな? ここはいっちょ楽しませてもらうとするか!


 僧正さんの足元に巨大な魔法陣が出現すると、取り巻き共の身体がボコボコと膨れ変形し始める。


 ……そして、その身体は見る間に巨大な腕や足。

 人体のパーツのようになっていき、ウゴウゴとうごめくと、組み合わさっていく。


 うーん? これは合体して巨人になるとかそんなのか?


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