第五話「素敵で可愛い御主人様達のご要望」③
「そうね。私達、二人だけで冒険者稼業続けるってのは、厳しいって前々から思ってたし、ジョージさんが凄いヤツだってのは解った……。私達が無理やり召喚しちゃった以上、むしろ面倒見ないといけないと思う。それに、ギルドマスターにもちゃんと報告しないといけないね……。ねぇ、ジョージさん……私達に黙って、勝手に妙な悪さとかしない? 人を襲うとかやっちゃうようなら、むしろこの場で退治しないといけないんだけど……」
「俺、悪いアンデッドじゃないしっ! な、なにかやる前に、君等にもちゃんと相談するし、君等に何があっても、絶対に守ってやるよ……約束する! ああ、それと姿形とかも割と自由にできるから、今のオッサンの姿が気に食わないなら、小動物とかの姿になってようか? それなら、使い魔なりペットって言い張ればいいし、パッと見無害っしょ?」
俺自身、姿形とか割と自由自在じゃあるんだよな。
そこら辺には一切こだわり無い……今のロン毛オールバックメガネだって、生前の姿に近いっちゃ近いけど、別にこれに拘る理由はない。
小さくなると相応にパワーは激減するけど、闇の腕の生成条件は影が出来るだけの体積とほんの僅かな光があれば十分なのだ。
まぁ、子猫の姿でも十分戦力になる自信はあるぜっ!
いっそ、変な小動物になって、ジュウベイとか名乗って、この子達には魔法少女になってもらうってのも悪くないかも!
「へぇ、なら……アタシの同族、同年代の姿になるってのはどう? 一緒に生贄にされそうだったところを保護してあげたって言い張れば、なんとでもなると思うわよ。エルフの冒険者の出自なんて、どうせ誰も追求しないから、アタシらが黙ってれば誰も何も言わないと思うわよ!」
アリアちゃんから、なんだか予想外のオーダー。
同年代の同族? なんだそりゃ……思いっきり、自分の欲望に忠実だったりしない?
まぁ、可能か不可能かと言うことなら、可能。
俺としては……ショタエルフとか……子供の体に大人の心とか、どこの名探偵だっつの!
戦闘力は、相当低くなりそうだけど。
ヤバくなったら、戦闘モードに変身するなり、なんとでもなるしな……。
けど、イスラはどうなんだろう?
この子……なんか、男嫌いとかそんな空気があるんだよな。
むしろ、小動物とかの方がこの子と仲良くするには、向いてるような気もするんだけど……。
「まぁ、そうだな。出来なくもないな……だが、アリアちゃん、君の一方的なリクエストだけを聞くわけにはいかんぞ? なにせ、イスラも我が御主人様でもあるのだからな。どうだ、イスラ……アリアは自分とお揃いがいいとか言ってるんだが。俺は君の意見もちゃんと聞いておきたい」
俺がイスラに話を振ると、何故かワタワタとしながら、考え込むような仕草をしてる。
まぁ、女子としては、お供の容姿とか悩む所だと思う。
その昔、オンラインゲームでお友達になった女子中学生なんて、お供モンスター選ぶのに3時間も悩んでたからな。
女の買い物なんて付き合うと、大変なんだぞ?
あいつら、時間単位でアレもいいコレも良いとか、散々迷った挙げ句、やっぱり別の店を見てから決めたいとか言い出して、一日あちこち回った挙げ句、何も買わずに冷やかしで終了……何てことも珍しくない。
まぁ、イスラが決められないようなら、即決はしなくてもいいかもな。
「……うん! いいんじゃない? 確かに、それなら、自然に会話もできるし、冒険者登録も出来るだろうから、都合がいいかも……! 要するにアリアを男の子にしたとかそんなんだよね? それなら、むしろ理想かも知れないわ! あ、ズボンは半ズボンがいいです!」
……ん? 思った以上の食いつきだな。
なるほど、アリアを男の子にしたような感じで、半ズボン履く感じか。
まぁ、おっさんの半ズボンとか見苦しいだけだが、子供の姿なら定番っちゃ定番だよな。
それならば、二人のリクエストの最大公約数にもなりそうだった。
俺もモデルもなにもないところから、架空の人物に変身とか難儀すると思うけど。
目の前にモデルが居るなら、別に問題ないな。
「オーケー、オーケー。なかなかのグッドアイデアだ。ならば、お子様モード……とんがり耳で、アリアみたいに美形で……。アリアを参考にするから、ちょっと似ちゃうかもしれないけど、そこは勘弁な……」
何故か、二人共ワクワクって感じで見守ってる。
と言うか……女子って意外とこう言うの好きなんだな。
そう言う事なら、もっと早くマイルドな容姿にしておくんだった。
「……トランスフュージョン! イケメン、ショタエルフになーれっ!」
口に出す言葉には何の意味もないんだがな。
ロン毛執事風の姿から、半ズボン姿のトンガリ耳、黒髪に青い瞳のショタって感じのエルフ少年の姿になってみた!
一気に目線が下がって、ちっこかったアリアと並ぶくらいになった。
目の前のアリアの姿を参考に、男の子風にした感じなんだが……どうなんだこれ?
髪の色は同じく金色にしようとしたんだが、黒になっちまった……なんかエルフっぽくないな。
多分、闇属性が濃すぎるからだろうな……むしろ、ダークエルフとかそんな感じだぞ? これ。
目の色は……アリアは緑色だから、俺は青にしてみた!
うーむ、手足も短いし、頭身も明らかに下がった……ぶっちゃけ弱そう。
手をグーパーしてみる……ちっちぇええっ!
子供の体ってのは、貧弱な上に非力……まったく、名探偵は凄いよな。
頭は大人で、子供に混ざって事件解決とかよくやるよ。
「ど、どうだ? アリアの同年代の少年エルフって感じにしてみた。リクエスト通りかどうかはなんとも言えないが、そこら辺は色々調整も効くぞ?」
「か、可愛い……っ! なにこれ! 超好みなんだけどっ!」
アリアじゃなくて、イスラの方が釣れてるーっ!
ひょいっと背中から抱き上げられて、そのまま思い切り抱きしめられて、頭に頬ずりされてる。
な、なんなんだ! さっきまでどこかツンケンしてたのに、思いっきり手のひら返してないか?
ツンデレちゃんが秒で陥落って、どういうこと?
つか、こんな黄色い歓声あげて、きゃわわーって感じで……イスラちゃんってこんな子だったのか……。
何気に距離空けられてるって思ってたけど、一気にこんなゼロ距離まで……。
ちょっと、嬉しいな!
「あっ! イスラ、ずるーいっ! アタシも抱っこしたい!」
「なんか、めっちゃ可愛いっ! うん、こっちの方が断然いいっ! ねぇ、名前……ジョージくんって呼んでいい?」
俺、モテ期到来……?
ジョージくんって……呼び名まで変わっちまった。
イスラも別に大きくは無かったんだが、こっちが縮んだせいで、なんだか年上のお姉さんみたいに見えるような気がしてきた……。
背中越しにふにょふにょ当たってるのは……さっきまで気にもとめてなかった、あの貧乳かっ!
しかも、今のイスラ……ペラペラのボロ布みたいなワンピース着てるせいか、ダイレクト感が凄い!
と言うか、布切れ一枚下……ほぼ全裸だったような。
つか、この子……パンツ履いてなかったよな……。
って、おい待て。
なんでそんなの想像したくらいで、ドキドキしてんだ……俺っ!
相手はいいとこ中学生……思いっきり子供じゃん!
けど、アリアもガキンチョ……とか思ってたんだが、背丈が並ぶとむしろ……美少女に見える。
そ、そうか……ガワが変わると、中身も相応に影響を受けるのか。
そう言えば、確かに小学生ぐらいの頃、孤児院で暮らしてたけど、中学生や上級生の女の子達って、大人と変わらないようなお姉さんに見えてたもんな……。
大人の目線だと、中高生なんて思いっきりガキなんだが……。
アリアなんか、むしろ超可愛く見えて……ドキドキが止まんねぇっ!
「はい、交代っ! いいじゃん、抱っこくらいいつでも出来るんだし! ねーっ!」
イスラが名残惜しそうに、降ろしてくれるなり、今度はアリアに思いっきり抱きしめられる。
うわ……美少女御主人様の包容とか、どんなご褒美ですかっ!
髪の毛とかなんか凄いイイ匂いがするし、その身体の感触は痩せ型のイスラと違って、程よくお肉が付いてるらしく、割とふわっふわで……。
挙げ句に、唇に柔らかい感触! ついでにチロッと舌まで入れられる。
こ、こいつ! 何してくれてんだよっ!
慌てて引き剥がすと、小悪魔のような笑みを浮かべながら、ペロッと舌なめずり。
こんなん、同年代の男に平然とやるなよ……。
ちょっとショタ化した今の俺には刺激が強いぜ……。
うーむ? ちょっと姿形が変わっただけで……ここまで対応が変わるなんて……女って怖いな。
でもまぁ、彼女達との関係を考えると、当面はこの姿で固定にするか。
気分的には、保護者だったんだが……まぁ、いいか。
……かくして、暗黒神様の下僕だった俺は、今度は地上で美少女たちの下僕になったのだった!
しかも、なんか超愛されてる感じだし! 俺、幸せになれそうな予感!
だが……いいのか? それで……?
思いっきり流されてるし、内心では物凄く葛藤してる気がする……。
……だが少なくとも、俺は現実を受け入れ、納得している。
そうだな……ラノベ風タイトルを付けるとしたら……
「俺、オッサンヤクザだったけど、美少年エルフとして、美少女お姉様達に愛でられる奴隷ライフ始めました!」
とかどうだろう?
願わくば……18禁展開とかは避けねばならん。
いきなり、ディープなキスはやられちまったが、そこら辺は厳守しますよー! 俺!




