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俺、最強無敵の異世界転生ヴァンパイア! のはずが、ショタエルフになって、ロリっ子お姉様達の尻に敷かれる奴隷ライフ始めましたッ!  作者: MITT


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第三話「あたらしい仲間?」⑤

「うふふ……ありがと。なんか少しは報われたって気がする……」

 

「そうか? だが……感謝するにはちと早いぞ? 状況報告だ……敵はどうやら態勢を立て直したらしい。敵はリーダーを失い俺にビビって、恐慌状態になっていたようだが、どうやら持ち直したようだ。おそらく、統率者が他にもいたのだろう。ひとまず、この場から、一刻も早く逃げることを提案するぞ!」


 こっちがもたもたしてる間に敵は態勢を整えつつあった。

 入口付近に残ってた奴等も、一旦撤収したらしく、建物内はもう誰も残ってないのだけど……。


 周囲には着実に包囲網が作られつつあった。

 具体的には、建物の周囲がぐるりと人垣で、囲まれてるみたいになってる。


 そして、出入り口の前にはずらりと横隊が何重にも並べられている。


「……確かに、完全にこの建物自体が囲まれてるわね。アリア……行ける?」


「アタシの戦力なんて、大したもんじゃないけど、魔力封印も解けてるから、それなりに戦えるわよ。けど……ここって、三百人だか四百人くらい兵隊いるんでしょ? ほんとに無事に脱出できるの?」

 

「そうだな、ざっと数えた感じだと三百人ってところか……片っ端から、ぶっ殺していいなら、この程度の数、なんとでもなるぞ? 簡単な話だ……俺に皆殺しにしろと命じるだけでいい。お前らは、奴等の始末が終わってから悠々とのんびり町にでもなんでも帰ればいい」


 人数も解るんだ……私の猫耳も結構高性能だって、自信あるんだけど。

 ジョージさんはそれ以上なのかも。


 ちなみに、アリアも似たような感じで、索敵能力はかなり高い。

 そこら辺が私達の強みだから、索敵能力が高い事がどれだけアドバンテージがあるのかは、説明されるまでもなく解る。


 アンデッドともなると、夜の戦いはお手の物だろうし、ジョージさんにやらせたら、皆殺しくらいは軽くやってのけると思う……でもっ!


「ダ、ダメっ! 皆殺しなんて……隷属させられてる罪もない人達がほとんどなんだし……。無理な注文かもしれないけど、出来れば殺すのは最低限で……街道まで逃げて、冒険者ギルドの本隊に合流出来れば、それで十分なんだけど……出来る?」


「極力殺さずか……この状況で甘っちょろい事を言う……と言いたいところだが、縛りがある方が燃えるし、そう言う甘い御主人様の方が非情なヤツよりも好感は持てる。相解った! では、命令を受領……あとは、どちらでもいいから、明確に命じるのだ……なるべく殺さず、ここから自分達を無事に逃がせとな! 安心しろ、殿は俺が務める! お前らは確実に生き伸びる……これは決定事項だ!」


「……あんた、無駄に偉そうね。それになんなの? その自信……。でも、いいわ……なら、命じるわ! なるべく殺さずにアタシらを守って、ここから脱出させなさいっ!」


 その言葉を聞くと、ジョージさんはブルッと身震いをすると、ものすごく嬉しそうに跪く。


「くっくっく、しかと承知っ! 実にいいな、これ……漲ってきたぞーっ!」


 そう言ってガバっと顔を上げると、もうニッコニコ。

 傍目にも超嬉しそうだった。


「えっと……あんまり張り切らなくていいからね。出来れば、こっそりと穏便に逃してほしいなぁ……みたいな」


「ああ、任せろ! ならば、バカ正直に正面突破は避けるべきだな。まずは俺についてくるがいいっ!」


 そう言って、ジョージさんはゆっくりと入り口と正反対の壁に向かう。

 

 確かに、主力と思わしき奴等は、入口側にギッシリと固まってる……恐らく、私達がそこから出て来る事を想定して、準備万端の上で陣形を組んで立ち向かうつもりなのだろう。


 恐らく、さっきの生き残りがジョージさんのヤバさを伝えたのだろう。

 その上での十重二十重の包囲陣……まさに総力戦の構え……本気すぎるよ。


 けど、それでもジョージさんは軽く全滅させるとか言ってるし、多分この程度なら蹴散らせると思う。

 でも、その方法だと、皆殺しと大差ないことになる。


 無茶振りなのは解ってるけど、最小限の犠牲で包囲を突破……となると。

 裏口か何かから出ていくのが正解なんだけど……そんなのどこにも見当たらない。

 

 けれど、ジョージさんは自信満々と言った様子で、黙々と壁に向かって歩みを進めていく。


「な、何をするつもり? こっちに出口なんてないよ。ここ出入り口はひとつしか無いみたいなの……」


「ハッ! 無ければ作れば良いのだ! 喰らえ、本職ヤクザキーックッ!」


 ジョージさんがポケットに手を突っ込んだまま、唐突に石壁を蹴り飛ばすっ!


 ……それだけで、かるく壁に大穴がボコーンと空く!

 ついでに、壁をガシガシ蹴っ飛ばして、人が通れるくらいまで、穴を広げてくれる。


「ふははははっ! 脆いなっ! さすが俺、本職っ! さぁ、二人共いくぞっ!」


「……すっご! 結構分厚い壁だったのに、こんなあっさり!」


 普通のレンガ造りじゃなくて、一枚岩みたいな頑丈そうな壁だったのに!

 ……それを文字通り一蹴だった。

 

 この姿でも十分、人間離れしてる……ジョージさん、凄いっ!


「む、無駄口は叩かない! 私達も彼に頼り切ったりしないで、周辺警戒は怠っちゃダメよ! ほら、すぐに敵が来るよっ! ジョージさんも気をつけてっ!」


 そう声をかけると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて、姿勢を低くして外へ飛び出していく。


 私達は、壁の穴ギリギリで一旦待機。

 幸い壁の外には敵はいない……ジョージさんも、一番敵が手薄だからこそ、ここを脱出口に選んだらしい。


 向こうもこんな簡単に壁を壊して、反対側から脱出するなんて思ってなかったんだろう。

 完全に裏をかけた……先に外に出たジョージさんが手招きするので、急いで外へ駆け出す。

 

 ジョージさんは立ち止まると振り返って、周囲を警戒……付近の敵の動きが慌ただしくなってきてるようで、あっちこっちからザワザワと人の気配が立ち上る。


 こちらの動きが想定外だったようで、割と無秩序に動いているのが解る。


 けど、相手も馬鹿じゃない……しっかり、屋根の上に射手が配置されていたようで、外に出て、十mも進まないうちに、頭上から矢が次々と飛んでくる。


「止まるなっ! 射手だ! 上から来るぞっ!」


 神殿の屋根の上……それも反対側から、慌てて射掛けてきた牽制射のようだった……。

 けど、やたらと数が多い……避けきれるかな?


 と思っていたら、ジョージさんが飛び上がりながら、素手ではっしはっしと飛んでくる矢を払い、掴み取る。

 

 一発、駆け抜けようとしていた私の頭ギリギリを矢が掠める……!

 本来なら直撃コースだったけど、一瞬早く気付いて身体を投げ出すような前転回避で、その矢をかわし切った!


 転がった勢いのまま、立ち上がると一気に走り抜ける!


「……やるねぇ、うっかり一発落としきれなかったんだが、ノールックで避けるとは、いい勘してるじゃないか」


 ジョージさんが感心したように呟きながら、自分の眉間目掛けて飛んできていた矢を無造作に掴み取る。


「あ、危なかった……と言うか、素手で飛んでくる矢を掴むなんて……凄いね!」


 飛んでくる矢なんて、普通は見切れない。

 余程近くでもない限り、早々当たるもんじゃないけど、なんだかんだ言って飛び道具ってのは脅威。


 ジョージさんが何か術式でも使ったらしく、バラバラと飛んでくる矢は次々と不自然な方向に逸れて、明後日の場所に突き刺さっていく。


「矢避けの加護? いつ呪文唱えたの?」


 アリアが振り返りながら、感心したように呟く。


「言ったはずだ……俺は強いぞ? お前らには傷ひとつ付けさせねぇよ! とにかく、ここは俺に任せろ……森の中に逃げて、後は振り返らずにひたすら走れ……! と言うか、夜の森、明かりも点けられない……なんて状況なんだが、お前ら大丈夫か?」


 ……夜の森ってのは、思ってる以上に暗い。

 けど、明かりなんて点けたら、格好の的になる……。


 となると、この場は明かり一つなく深い森を駆け抜けるくらいのことはやってもらわないと厳しい……ジョージさんはそう言いたいんだろう。

 

「大丈夫、私達は夜の森を軽く走り抜けられる程度には、夜目が効くのよ。伊達に暗黒神の眷属じゃないし、この森も慣れてる……逃げ隠れするのは、割と得意なのよ!」


 まぁ、どっちかと言うと夜のほうが本領発揮って気がするんだよね……。

 

 黒い体毛と浅黒い肌の色は夜の闇に絶妙に溶け込むし、夜目も利く。

 おまけに気配消しもお手の物……夜間戦闘なら普通の人間なんてまるで相手にならない……そのくらいの自信はある。


「エルフと森、それも夜なんて言ったら、もう独壇場よっ! じゃあ、殿よろしくね! 一応、この先で待っててあげるから、ちゃんと追いついてきてね!」


 アリアが調子良く応えると走り出す。

 アリアもその辺は似たようなもん、だから普通にコンビ組めてるんだよね。


 先の偵察だって、夜間私達二人だけなら、むしろ余裕だったかも知れない。

 まぁ、今更言ってもしょうがないんだけど。


 ジョージさんに関しては……心配するだけ無駄だろうし。

 戦いとなったら、私達は足手まといにしかならない以上、この場は全力で逃げるしか無い。


「ああ、任せとけ! おい、聞けっ! この雑魚共! ……あの二人を追いたければ、まずはこの俺が相手だ! 死にたいヤツからかかってきな!」


 背中を向けて、敵に立ちはだかるジョージさんの声を聞きながら、私達は夜の森をひたすらに駆け抜けた……。

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