第三話「あたらしい仲間?」②
「それにしてもなんだか、無駄にすっごい魔力使ったみたいだけど……さっきまでの悪魔みたいな姿よりはマシよね。変身まで出来るとか、凄いし、なかなかイケてるじゃん! あ、アタシ……アリアね。変なお兄さんのお名前は? ちなみに、別にお漏らしとかしてないからねっ! 生贄されかけた時、油ぶっかけられちゃってさー!」
アリア……まだ言ってるよ……。
けど、獣人は鼻もいいからね……この匂いはやっぱりおしっこだよ! アリア先生っ!
濡れ濡れどころか、もう大洪水だよっ!
ズロースとズボン、早く洗わないと、お洗濯しても匂い残っちゃうよ?
もう、この時点で女子としては終わってる気がするね。
もっとも、私だって人のことは言えない。
この奴隷服……ノミ湧いてるし、なんだか異臭がこびり付いてる。
と言うか、なんで私だけ身ぐるみ剥がされたんだろ? アリアはスルーだったのにさー。
ああ、荷物や服とかも取り返したいんだけど……探してる余裕はなさそう……。
でも、この服、丈が短いから、うっかり尻尾に気合いれると後ろからお尻丸見えとかなりかねない。
出来れば、着替えたいし、水浴びしたーいっ! それか、もしくはサラサラの砂の上で砂浴びでもいいやっ!
アリアとかスラムの子達は、何が良いのか解らないって言うけどさ。
お砂の上で砂まみれになってゴロゴロするのって、とっても気持ちいいのー!
「うむ! 俺は変なお兄さんではなく、スガタ・ジョージだ! アリアちゃんか……こうしてみると、意外に可愛いじゃないか。助けてやった甲斐があったな! だが、人を変な人呼ばわりは良くないと思うんだ」
そう言って、ジョージさんはアリアの軽く頭をなでながら、そのトンガリ耳をさわさわする。
うわっ! エルフの耳触るとか、超セクハラなんだけど!
と言うか、アリアもアリアだ……今、頭動かしてわざと触らせてた。
ジョージさんは物珍しそうにアリアの耳を触ってるし、アリアも、真っ赤な顔してプルプルしてる。
その口元からはヨダレがツイっと……。
「うへへ、頭、撫でられちゃった上に、お耳まで弄くられちゃったわ……。じゅるり……これはもうシてもらうしか無いわね。でも、ちゃんと入る……へぶっ!」
とりあえず、もう一発! 今度はグーでガツンと行った。
「……アリアお下品」
ちょっと強くやり過ぎたみたいで、アリア白目剥いて倒れちゃったけど、これ以上は言わせちゃいけないって気がした。
……私、たぶん大正義っ!
エルフって、本来もうちょっと上品だって言う話だけど……。
アリアの話だと、概ねこんな調子らしい……。
確かに、アリアの知り合いとか言うエルフのイケメンお兄さんなんて、会うなり……。
「君のおっぱいは70点ってところかなー」
なんて、爽やかな笑顔で言ってのけた。
つい、ぶん殴っちゃったけど、許されると思う。
でも……なんだか無性に悔しい。
私だって……私だってーっ!
「ジョ、ジョージさんだっけ? ちょっといい? そこに……跪きなさいっ!」
いきなり、目の前でアリアがKOされちゃって、オロオロしてたジョージさんに向かって、屋外劇やってた時に見た、お姫様が王子様にやってたように胸を張って、手を差し伸べる。
ん? 何してんの? 私……。
「……う、うむ? 跪けとな……了解した」
ジョージさんは、何の疑いもなくと言った様子で、本当に私の前に跪くと片手を背中に回しながら、私の手を握り返すと、手の甲に軽くチュッと。
ええっ! マジでやっちゃう? 私、手も洗ってないのに……。
思わず、言葉を失い……ワタワタする。
ほっぺが! お耳まで、熱いよーっ!
「ああ、すまない。淑女への挨拶のつもりだったのだが……驚かせてしまったかな?」
「うぇっ? あ、うん……そうよね。淑女……そう! レディへの紳士のご挨拶よね……えへへ、どう致しまして……御機嫌よう! だっけ?」
戸惑いながらも、奴隷服の裾をつまんで持ち上げて、それっぽい返礼を返してみる。
うん、確かこんなんだったはず。
けど、今度はジョージさんがぎょっとすると、その視線が思わずと言った感じに下に向かった。
あ……私、下、何も履いてなかったんだ。
み、見られたーっ! でも、ここは気付かないフリっ!
そもそも、獣人って毛深いからね……。
獣人も服くらい着るけど、あれは単に人間の習慣を真似てるだけ。
本来は服なんか着ないでも、全然気にならないのだ。
だから、別に下見られたって、恥ずかしくないしーっ!
「あ、あれ……返礼って、こうだよね? 何か間違ってた?」
とりあえず、気付いてないふりで乗り切ることにした!
けどまぁ、いくら獣人で裸見せても平気っても、私みたいに親の片方が人間だったりとかで、長いこと人間に混ざって生活してると、常識なんかも人間よりになる。
要するに、恥ずかしい……。
相手が妙な反応されると、余計に……だ。
これが普通にスルーだったら、何ともなかった! 何ともなかったんだよーっ!
流してください、ホントまじでお願いします……。
「ん? ああ……あってるけど、そのカッコでそれやっちまうと……その、なんだ……」
被弾っ! 被弾ーっ! 直撃弾だよっ! うにゃあーっ!!
もう、このまま穴掘って潜りたい……空気読んで! ジョージさんっ!
「な、何の話かな? 人間、スルー力って大事だよね? 別に見てないよね? アレとかソレとか……見てたら、殴らないといかないんだけど、どう?」
もうこうなったら、笑ってごまかす!
こう言う時は、女子が無かった事にすれば、大抵大丈夫って、お母さんも言ってた!
こんな奴隷服……普通にしてるだけでも、太ももまで丸見えなんだから、裾つまみ上げたりなんかしたらどうなるかなんて、解ってるよーっ!
「ああ、見えてないぞーっ! つか、意外と毛深い……じゃなくて、君達は我が主だからな。これでも敬意を示したつもりなのだ! いいぞ! その調子でもっと何なりと命令をするがいいっ!」
……よかった! 合わせてくれた。
ありがとうって、言いたいところなんだけど……。
なんか、さらっと変な事言ったよ? この人。
「うう、相変わらずイスラのグーパン効くわー。って、命令? それに我が主って? え、どういうこと?」
私がツッコむ前に復活したアリアが口を挟んでくる。
アリアって、小さいのに結構タフ。
けどまぁ、言いたいことは代弁してくれた。
と言うか、なんで、いきなり命令したまえとかそんな話になっちゃってるの?
「ああ、言葉通りだよ! エルフちゃんと猫耳ちゃんは、俺のご主人様なのだ。君達が主であり、俺は君達の言葉に忠実に従う……奴隷とかそんなのに近いかな? すまない、これ以上解りやすく説明できないな……」
ファッ? だから、なんでいきなり、奴隷とかそんな話になってるの?
ちょっと軽く私の理解を超えたよ?
思わず、アリアと見つめ合うのだけど、どっちも理解してないって解っただけだった。
「アリア? 意味分かんないんだけど……」
「アタシに聞かないでよ……。と言うか、こいつ……魔力の色からすると多分……アンデッドなんだけど。え? 我が主って……もしかして、支配でもしちゃってるの? イスラ……もしかして、アンデット支配なんて、上級魔術でも使えたの? 一応アレって、黒の術式だから闇の眷属のアンタなら使えなくもないと思うんだけど……」
アリア達エルフって、人間や魔物の持つ魔力を色として見えるらしい。
どうも、それでこの人の正体を見抜いたらしい……。
ア、アンデッドなんだ……全然、臭くないし、そう見えないんだけど……。
って言うか、そんなアンデッド支配なんて使えないっての!
思わず、全力で首を横に振る。
……死者を蘇らせて、死者を使役する。
アンデッド・クイーン・イスラ!
うん、ちょっとカッコいい?
決め台詞は「この腐った汚物共め~! 私の足を舐めなさーい!」
こんな感じ?
でもさー、ゾンビに足舐められるとか嫌だなー。
どうせ舐められるなら……。
「ほぅ……俺の正体によく勘付いたな。俺は吸血鬼とも呼ばれる最高位アンデッドだ……だが、案ずるな。少なくとも俺は君達に危害を加えるつもりはないっ! 俺は君達の味方なのだ!」
……なんだか、いかがわしい妄想に浸りかけてたんだけど、ヴァンパイアさんの言葉で現実に引き戻された。
ふぅ……ゾンビでもイケメンなら、許せるって結論だったよ。
確かに、覚えられるなら、覚えてみてもいいかも……アンデッド支配!
って、誰が味方なのだって? ん? ん?
「よ、良く解んないけど……そ、そうなんだ。確かにやけに素直に言う事聞いてくれたしね……アタシが主様……ねぇ……」
「ああ、そうだ! 主様よ……この俺に何なりと命令を……。と言うか、命令してもらえないとなんだか不安になって来るんだ……。は、早く命令をっ! お願いだ! 頼むっ!」
……なんだこれ?
イスラ……こう見えて、暴力系ヒロイン。(笑)
あとタイトル変えました。




