2人で扉を開ける
障害者の方の可能性の部分を書く所で、コスプレみたいな感覚で自分は亜人だと書いてあります。自分と同じ人をこんな風に表記されるのは嫌な人も居ると思います。ごめんなさいm(_ _)m
フィクションだと割り切れる人だけ読むようにしてください。
『狭き門より入れ! 異世界ファクトリー秋季集団面接会場』
入口に掲げられた看板をくぐり抜けて、聾唖者の篠崎エルザは、同じ文学部1年で視覚障害者の野神沙弥香と、東都大学のサークルに入界するために小さな集会所にやって来た。(このサークルは入会を入界と呼ぶ)
この異世界ファクトリーと言うサークルは特別なサークルです。
まず私達二人の憧れの部長<アラクネ>先輩! 名前は新川久恵と言い、モデルのようなスラリとした身体とコケティッシュな顔立ちの短髪黒髪美人! 文学部4年で親しい人からはヒサエと呼ばれているが、一般部員や普通の学生からは<アラクネ>さんと呼ばれている。
彼女は足が不自由で車椅子を使用しているのだが、特殊な義脚車椅子に乗ってるので、その姿が蜘蛛の亜人のアラクネに似ているの! そして自分は亜人の<アラクネ>と宣言し、亜人も人と同じ権利を要求し実践する異世界ファクトリーと言うサークルを3年生の時に立ち上げてしまった。
現在では<ラミア>さんや<マーメイド>さんも居るし、来年には自作義脚車椅子の<ケンタウロス>君もこの大学に入学してくるらしい!
まさに異世界だわ。
そして副部長で工学部4年の飯山翔哉先輩。細マッチョの冴えない顔をしてるが、<アラクネ>先輩の義脚車椅子を2年間の歳月をかけて作り上げた凄腕職人! みんなから<賢者>と呼ばれています。
現在では、義脚車椅子制作時の工学部仲間がサークル内の各種ギルドで活動して、亜人さん達の装具や品物を開発制作している。
こちらはファクトリーだね。
サークル入界手続きが春季と秋季の年2回だけなのは、記入項目や補足が多い名簿作りが特殊で、事務をしてくれてる亜人さん達では対応しきれないからだとか。(事務専門の人が入界すると貴族とか言われるのかな?)
部員については興味本位で入界するのが流浪人と呼ばれます。大抵は各ギルドルームや談話室で賑やかに楽しんでるのですが、何処からか依頼を持ってきたりもしてくれます。
次に冒険者。亜人さんや各ギルドの手伝いをしたり、流浪人が持ってきた依頼をこなしたりします。それぞれがパーティを組んだりソロプレイで活躍しており、一応ランクも上級、中級、見習い、が有ります。
そして流浪人や冒険者の一般部員は簡単な手続きだけで入界できます。
最後にサークルの主要メンバーは、現地人の肩書を持つギルドマスター達や、特別な名称や亜人名を持つ<名前持ち>です。イベント企画や各種広報、そして社会奉仕活動を行っています。
この<名前持ち>は自称なので誰でもなれるのですが、皆に認知されて呼ばれるようになるのは非常に難しいです。一般学生にまで知られてるのは、<アラクネ>先輩や人気亜人の<ラミア>さんや<マーメイド>さんと<賢者>ぐらいで、ギルドマスターや有力パーティプレイヤー達は、サークル仲間から呼ばれるぐらいだからです。
そして今回の集団面接は<名前持ち>を目指す新人プレイヤーが、意志や能力それと実績で上位実力者に認知してもらう場所なのです。
部長と副部長、数名の<名前持ち>面接官の中から副部長の<賢者>が、黒板に面接の流れを書きながら話始めます。
文字と言葉を同時に使いながら説明を進め、日常会話ぐらいの手話なら出来るとの内容もありました。(さすが賢者だわ)
面接と言いながら自分には何が出来て、何になりたいのかを発表がするのがメインの面接です。
部長と副部長の2人の認知か、どちらか片方とここに居る<名前持ち>の過半数の認知で、合格と判断されサークル内で<名前持ち>発表会が開かれます。
黒板に文字を書き終え<賢者>が席着いて言葉を発する。
「少ない人数だが、覚悟を決めた人から面接を始めよう」
4人しかいない入界面接希望者の中で、篠崎エルザは親友の野神沙弥香の、手を握りながら静かにその手をあげた。