【二つ扉の百葉箱】弍
【地獄の世界で僕らは行く】→https://ncode.syosetu.com/n3179fu/
友人の作品になります。
目を覚ますと何故か地獄のような世界(?)にいた高校一年生である主人公が様々な壁に対面し、乗り越えていく…といった話です。
パンデミック系異世界小説なのですが、主人公の冷静かつ沈着な性格もあって展開のテンポが良く、読んでいて疾走感のある作品です。
お時間ありましたら是非読んでみて下さい。
-灯ル-
「痛い痛い! ヒロインに暴力とか何事よ!」
やべぇ、部室開けるタイミング間違えた。
鬼の形相で望夢がレイを殴りまくってる。い◯めか。
あ、でもレイめっちゃ笑ってる。同意なら◯じめじゃないな。あいつMだったのか。
「うるせぇよレイ…お前のせいで授業間に合わなかったんだからな…?」
「あ、評価ガタ下がりですね先輩…ちょ部長、二見川書記の顔がやべぇっす」
「鬼ババみてぇだな」
「怪異より怪異みたいな表情してるね先輩!」
「マジぶっ殺してぇこいつら…」
おいおい望夢、そんなことしたらオカルト研究部の犯罪者が二人に増えるだろ? なんて茶化せばお前のせいでもあるからな! とポケットからメロンパンを出して投げつけられた。
痛くないけどガッチガチに凝縮されてた。お前メロンパン好きだな。
「え、うっわ、なんすかそれ…ビジュアルが不味そう」
「ああ、望夢の好物だ」
「待って灯流、その言い方は誤解を生むよね」
「なるほど、帽子くんはガッチガチのメロンパンが好きなんですね!」
「せめて先輩と呼びなさい伶斗君」
レイの中で望夢の好物は潰れたメロンパンになったな。すばらしい、計画通りだ。
一瞬デ◯ノートの例のゲス顔が頭の中で浮かんだ気がしたが、これ以上脱線すると本題に戻れなくなるので、話の路線を戻すことにしよう。
「それで? ドMで犯罪者予備軍なレイくん」
「誤解です暴君王」
「情報の収穫はあったか」
「…なんの成果も得られませんでしたっ!!」
「よし幸太、こいつを吊るせ」
待って部長冗談だって、と命乞いを始めるレイ。
可笑しいぐらいに慌てる後輩の態度に笑っていれば、後ろから肩を捕まれる。
「幸太、レイと一緒にこの糞部長も吊るしといて」
振り向けば、清々しい笑顔でそう言い放った望夢の姿が。あ、死ぬわ。これは確信したわ。うん。
幸太は無言で腕捲りをした。いやあの幸太くん、これ冗談だから、ただのお遊びだよ。
やべぇ、普段から無言の奴が悪ノリしたときどういう反応とって良いのか分かんねぇな。
「なんかね、僕が聞いた話によるとね? もうすでに百葉箱ん中に何か突っ込んで検証した奴等が居たんだって」
そして空気の読めない自称ヒロインが話の流れをぶち壊してくれた。ありがとうなレイ。
荒ぶっていた望夢も目を丸くしてレイの方に向き直る。
「ちゃんと情報収集はしてくれてたんだね、レイ」
「そいつ行方不明になったってさ!」
「急に怖いなおい」
「そしてレイのテンションが異様に高い」
こいつ頭のネジ何本か吹っ飛んでるな、と既に何度感じたかも分からないマンネリ化した考えが脳内を過る。
レイは付け足して、「ま、聞いてきてくれたの僕じゃないんだけどね」と言う。なんだあれか、レイにだけ見えるっていう幽霊部員(マジな方の幽霊)に頼んだのか?
(…………)
それともうひとつ。
本当は考えない方が利口的で良いんだが、結局“あの日”の感情が俺を後押しした。
「めっちゃ面白そうじゃねぇか、行くぞ」
「流石は暴君ディオニス」
「脳筋ディオニス」
「決断早いっすね暴君王!」
「おい誰だ脳筋ディオニスとか言った奴」
てか脳筋ディオニスって何だ。
確かに走れメ◯スであいつは「みんな信じらんないから皆殺しにしちゃうぞ☆」みたいなことしてたけどさ、脳筋王? どんなパワーワードだよ。
望夢がさも呆れたかのように、こいつ好奇心が小学生レベルだから危ないことすぐしたがるんだよなぁ、と吐き捨てる。
聞き捨てならんな、俺はガキじゃないぞ。
「百葉箱、鍵は?」
「あ、」
幸太の一言で全員がはっとした。いやこいつら阿保か。俺もだけど。
そう言えば百葉箱は鍵が掛かってて、普段は使えないんだもんな。職員室から持ってくるのは…
「借りてくる? 灯流」
「…俺らあのオカルト研究部だぞ?」
「顧問にすら見捨てられた伝説の部活」
「そう、幸太の言う通りだ」
「貸してくれる訳無いかぁ」
早くも手詰まりか、検証すらできないとは。流石オカ研。
さてどうしたものかと頭を働かせるも、そう言えば俺は馬鹿だったので意味ないなと思いやめた。
「え、何で?」
「は?」
レイが困惑した表情でこちらを見ていた。
どういう事だと言わんばかりに、自然と望夢と幸太の視線もレイに集まった。
レイは当たり前だと言わんばかりに、
「貸してくれないならパクってこようぜ」
名言出ちゃった。
そう言えばこいつ犯罪者予備軍だったわ。