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【二つ扉の百葉箱】

-灯ル-




モテない可哀想な帽子くん(二見川望夢)を購買に行かせ、自分は教室でダラダラする。

いやぁ楽だわ部長。職権乱用してる自覚あるよ。仕方ないね、ディオニスだもん俺。


「暴君部長」

「何だ」

「焼きそばパン売り切れてたんだけど」

「うわ最低」

「俺のせいじゃなくね!?」


いつの間にか帰ってきてた望夢の手にはメロンパンが握られていた。

…そう、握られていたのだ。

もう原形を留めていない程に潰れている。なんで握り潰したんだお前は。


「はい、代わりのメロンパン」

「…ありがとう」


乱雑に受け渡されたメロンパン。悪意が凄い。袋を開けなくても分かるほど手形がくっきり残ったメロンパンに、俺は食欲が一瞬にして失せた。

もしかして望夢は数日前、俺とレイで下駄箱にラブレター入れたのをまだ根に持っているのだろうか。


「で、暴君王さんとやら?」

「ん? 何だ」

「今日こそしっかり考えてもらうからなおめー」


素晴らしい笑顔で俺の肩を掴んだ望夢。目は笑っていない。そして握力が強い。あ、やばい肩が砕けそう。

…望夢の言っている「考えてもらう」とはきっと部活動の事だろう。


「えぇ、めんどくさい」

「なんで先輩方はこんな奴を部長に選んだのか疑問でならないよ」

「今日は部活無しでも良くね」

「今日“も”だろうが!!」


そんなんだから顧問も辞退したんだよ!と言われるがあれは俺のせいじゃない。多分。


「というか、このままだと来年の時点で廃部は確定だから!」

「…まぁ、今年の一年生部員レイだけだしな」

「来年あいつが部長やるとか考えたくもないよ…」


まぁ、レイが部長になるその前に廃部か。

俺は潰れたメロンパンを食べながら望夢の声を聞き流していた。いや本当よく喋るなこいつ。


「目立った功績が無いと、来年も一年生集まらないよ」


飽きれ気味に言われてしまえば、なけなしの良心から少しだけ罪悪感が沸いた。

望夢は部活の為に声を荒げてるんだもんな。そうだよな、俺も何か出来ることをしないと。


「怪奇現象でも捏造するか」

「おいそれヤラセだからな!?」

「だってお化けなんて呼んで出てくる様なモンじゃないだろ」

「だからって虚偽の功績掲げるのは不味いでしょうが! この暴君野郎!」

「誉め言葉だな」

「違ぇわ!」


でも実際、近所で怪奇現象が起こったなんて話聞かないからなぁ。功績を残そうにもまず目標が居ないんじゃ無理だ。

気長に待つしか無いだろう、と考えていれば肩を叩かれる。


「俺、一個知ってる」


突然過ぎてメロンパン吹いた。

だって後ろにガタイの良い、でっけぇ筋肉が立ってるんだもん。家でそれやられたら情けなく叫び散らしながら町内を走り回る自信あるぞ。


「何がだ? 幸太」

「…心霊現象、起こる場所」

「嘘だろお前が…!?」


お前一番オカルトから離れてる存在だと思ってた、とさらっと酷い事を言う望夢。

いやこう見えて幸太は心霊スポット巡りしてるからな。じゃなきゃオカルト研究部なんて入らないだろ。

こいつ幽霊見えないそうですけど。


「幸ちゃん、それどんな現象?」

「“二つ扉”…学校の、百葉箱」

「百葉箱に心霊現象が起こるのか」


詳しい説明は単語しか喋らない幸太から聞いて解読するよりも、情報を集める方が速そうだ。


「よし、帽子野郎」

「望夢な? せめて名前で呼んでくれよ」

「今から一年生の教室向かって、レイに伝達してこい」


あの犯罪者予備軍、ああ見えて友達多いからな。情報ならすぐ集めて来るだろう。

家宅侵入罪犯した癖に。


「…パシられろと?」

「ああ」

「休み時間終了まであと五分無いと思いますが?」

「ああ、はよ行け」

「最低だな! 誰だこんな暴君を部長に推薦したのは!」

「二見川」

「ああそうだよ行ってきます!」


幸太からとどめの一撃を喰らい、走り出した帽子くん。

いやあの速度はヤバかった。陸上部も顔負けレベルで廊下走ってた。

絶対先生に怒られるなあいつ。


「あれ、そう言えば」

「なに」

「レイっていっつも飯は屋上で食ってたような気がする」


あいつ一年の教室向かったよな、と隣の巨人に尋ねれば無言で頷いた。


「…二見川、絶対遅刻」

「それな」


次は移動教室だ。あいつ終わったな。







―――――活動報告書―――――


活動内容:【二つ扉の百葉箱】学校の百葉箱を調査する。


周知の情報:学校の百葉箱に物を入れると低確率で消える。また、学校の百葉箱に見知らぬ物が入っている。百葉箱には鍵が掛かっているため、誰かが入れた可能性は低い。

別の学校の百葉箱と繋がっているとの噂。

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