そろそろ打ち止めかな?
地面に右手をあてて左手はこちらに向けているキリカ。
するとニヤリと笑みを浮かべると左手にとても大きな魔力が集束した。
「焼き尽くせ、フレア!!」
フレアか!!火魔法の上級か!
キリカのかざした左手から直径2メートルくらいの熱線が猛スピードでこちらに迫って来る。
ビームかよ!
「アイスロック!!」
僕は咄嗟に前方にどでかい氷の岩を作り出す。
しかしキリカから放たれた熱光線は氷に触れた瞬間一瞬勢いが弱まったと思ったが軽々と氷を消滅させながら直進してきた。
マジか。
「じゃあフレア」
ドオォォォォン!!と爆発音が響き僕の作り出した氷が全壊して氷の欠片だけが四方八方に弾け飛ぶ。砂煙と水蒸気が視界を奪うがそれもすぐに晴れてきた。
キリカとほぼ同じ出力のフレアを放ち相殺したがその前のアイスロックが微塵も効果がなかったのが悔やまれる。氷にももっと魔力を込めればフレアを通さないくらいの氷になるのかな?氷魔法はほとんど使ったことがないため仕様が分からないな。今度ミクシリアさんに聞いてみよう。
しかし良いもの見せてもらった。フレアって火の上級魔法ってのは知っていたが使ったことがないためどんな風に放つのか初めて見せてもらえたよ。中級のファイアボールがあの恐怖の10メートル級の火の球だったため一体どんな被害が出るのかが怖くて使ったことなかったんだよなぁ。フレア=レーザービームって感じね。今度使う時はレーザービームって叫ぼう。
それに右手で土魔法。左手で火魔法。そんなこともできるんだな。ちょっと考えはしたがまだ試したことなかったんだよな。ほとんど無詠唱で魔法は使うため同時に2つの魔法を放つ場合『火、光』って順番に放つだけだったから2属性の魔法を同時に使うこともちゃんとできるんだな。
「ばかな・・・・一体どうやって防いだ!?」
お、結構かわいい声してるな。
「フレアだけど」
「フレアだと!詠唱も無しにフレアを放ったのか!!」
「詠唱?ああ、してたしてた。詠唱したよ、うん」
ズガァン!!!とゴーレムが動きを止めていた岩を砕いてこちらに近づいてきた。
ゴーレムくんはもういいかな。壊すのもったいないけど殴る以外の動作はどうやらなさそうなんだよな。これじゃあただの壁レベルだ。もっと色々とできそうだけどなぁ、武器持たせたりゴーレムが魔法を使うとかさァ。あ、武器はルール的にダメだったか。
「ウィンドボール」
目の前に2メートルくらいの風魔法でできた玉を作り出した。
ボール系で一番威力が高いのはこいつだ。ファイアボールも恐怖だがあれは燃やすという攻撃になるがこいつは。
ズガァァァーーーン!!
その風の玉を受けたゴーレムはその場に足だけ残して胴体と頭部は消し飛んだ。そしてゴトンゴトンと残った腕が地面に落ちる。
僕は空気砲と呼んでいたりする。
「くっ!」
顔をしかめたキリカは地面から手を離すとスッと立ち上がりこちらに正対した。
さてと後は闇魔法くらいしか残ってないけどどうするのかな?
キリカのダラリと下ろした左右の手に魔力が循環しているのが分かる。
「ダークウィップ」
左右の手それぞれから真っ黒の触手のようなウネウネと動く鞭が伸びた。
障壁によって聞こえにくくはあるが外の観客がざわざわとしているのが分かった。闇魔法はやっぱり珍しいものなのかな?
その黒い鞭は奇妙な動きをしながら二本とも僕に向かってきている。
「軌道が読みずらいな」
身を屈め一本目を躱すとすぐに僕は右方向にダッシュし鞭の軌道から逃れる。
綺麗に躱し続けるのは無理だな。
「サンダー」
僕は左手を前に出し雷の球を目の前に作り出した。バチバチと放電しているバスケットボールくらいの電気でできた球体。
キリカの作り出した黒い鞭は案の定と言うべきか生き物のように二本ともこちらへ軌道を移すとウネウネとうごめきながら向かってくる。
「蹴散らせ」
ビシャーーーン!!!
目の前の雷の球から黒い鞭へと雷が落ちる。
眩い光と雷独特の轟音を轟かせ光の帯が黒い鞭に触れると触れた部分から消滅していった。
キリカを見るとひどく苦い表情でこちらを見ている。そろそろ打ち止めかな?まぁこちらとしてはゴーレムとフレアを見れただけでも収穫はあったけど。
キリカはなにやら再び魔力を練り始めた。今度は体全体に魔力を循環させている。
「まだ何か・・・・・・・・!!!まずい!!」
僕は現在出せる最速でダッシュしてキリカに詰め寄った。
魔力発動前のキリカの肩を掴み押し倒す。
ダーク
無詠唱で放ったダークは僕とキリカを包み込み直径10メートルくらいの真っ黒な半円が闘技場に生み出された。観客席からはただの真っ黒の半円状の物体が現れて僕とキリカの姿は全く分からない。
パラライズ
ビクンと体を震わせたキリカ。
キリカを掴んだ状態でダークを発動させたためこの暗闇の中でも僕とキリカはお互いを認識できている。
「うぐっ」
うめき声も聞こえてくるため声もお互い通るが視界は真っ暗なため姿は確認できない。
さきほどキリカが魔力を身体に循環させた感じが武闘大会の時の魔族の変身した時と全く同じだったためキリカも真の姿を晒すつもりだったのだろうがそうはさせない。
「おい、聞こえているか?」
僕はパラライズを弱めた。
「き・・・貴様!ダークを使えるということは魔族だったのか!?」
あれ?そうなの?闇魔法って魔族しか使えないの?人前で使っちゃダメじゃん。
「こんなところで魔族だってバラして暴れたってすぐに取り押さえられるだけだぞ。やめとけやめとけ」
「貴様もバーウェン様の使いのものか?」
バーウェン・・・・・???まずいな。誰それ?貴様も?『も』ってことはコイツはそのバーウェンの部下的な?
「あー、はいはい。そうそう。バーウェン様ね。お前の役目は終わりだから試合が終わったら何もせずに速やかに帰れよ」
「そうか、貴様ほどの使い手を出していたのなら私の役目はもうないな」
「えーーっと、ちなみにお前への命令はどんな内容だったんだ?」
「・・・・・おそらく貴様と同じだが」
・・・・・・・・変な詮索はしない方がいいのかな。
「そうか、ならミラ絡みか?」
「ミラ?ミラネル王女か?」
ミラネル?・・・・そういえばミラの名前はミラネルなんとかかんとかだったか。
「準決勝に残っているミラのことだろ?」
「ミラネル王女がミラ!?・・・・そうか・・・・・・・なら私の使命よりも貴様の使命が優先されるな。私はこの魔術大会で1人でも多くの魔法使いを、特に魔法騎士団を殺すことだったからな」
おいおい、なんて命令受けてんだよ。
「ならとっとと失せるんだな。闇魔法を人前で使ったから疑われるだろう」
「了解した・・・・速やかにここを離れよう」
「賢明な判断だ」
すでにキリカに纏われてた魔力は霧散していた。
僕は肩を掴んで押し倒していたキリカを解放しダークを解除した。
黒い物体が解除されて姿を現した僕とキリカに観客が声を上げている。
なんだなんだ?
どうなったんだ?
地面に座り込んでいるキリカは視界が晴れると
「参った。降参だ」
降参を申告し試合終了の合図がされた。
観声が響き渡るが、黒い物体の中で何が行われていたのか分からず観客たちからはどよめきがたっていた。




