ねぇ知ってる?目の前にいる娘、実は魔王の娘です
僕と魔王の娘はすぐ目の前にあった居酒屋に入ってとりあえず僕はビールとおつまみを。彼女は普通に肉やら魚を注文した。
「ほうほう、魔力濃度を高めて強度を増す・・・・ねぇ」
「後は刃をモグモグ、イメージするだけ。慣れれば簡単にゴクン、できる」
「普段からそんなによく食べるの?」
「そそそ・・・そんなことない。今日は朝から何も食べてなくて・・・・・。魔法も使ったから・・・・」
「いやいや、遠慮しないでじゃんじゃん食べていいよ。今日は良いもの見せてもらったから。水の剣ねぇ」
「今日対戦した人、スゴく強かった。魔力はきっと私の方が高いけどどう言ったらいいのか難しいけどすごく・・・・・上手い」
「俺もそう思うよ。あの人俺の先輩になるんだけどね。ミラ・・・・・・・・。そういえば名前はミラでよかったかな?」
「ええ。私の名前すごく長いから」それは知ってる。「皆にもミラって呼ばれてる」
「ミラはさぁ、ベスト4に残ってるあのキリカって選手は知ってる?」
「キリカ?さぁ?知らないわ」
「そうか」
魔王の娘と魔族だが関係者ではないのか。嘘言ってる感じもしないんだよな。
「私の対戦した人もそうだしダイダルウェイブを使った子もそう、そしてあなたも人間の魔法使いがこんなに強いなんて驚いたわ」
「人間のってなんだかミラが人間じゃないみたいな言い方だね?」
「そそそそそんなわけないじゃない。わわ私以外の人間がって意味よ」
「はははは、そうだね。皆強いよなー」
魔王の娘って分かってる僕は笑えないけどね。
ビールを一杯呑んでこれで気持ちよく寝れるぞと僕とミラは店を出た。
「お金は・・・・ちゃんと返す」
「いいよ。奢りっていったろ。そのかわり明日の試合で俺をあっと驚かせることをしてくれることを期待してるよ」
「じゃあ・・・・・・・・そうする」
「送っていこうか?」
「大丈夫。次また声をかけてくる男がいたらその男が不運なだけ」
「ははは、そうか。それじゃあ明日いい試合を期待してるよ」
少し寄り道になったが僕はホテルに戻ってきた。ウチのバカ2人はまだ帰ってきていないようだ。
ミラ・・・か。中々普通の女の子って感じがしたな。黒髪だからどことなく日本人を思わせるんだよなぁ。
武闘大会の時のこともあるから魔族のキリカってのは少し心配だが明日の試合が楽しみだ。きっと誰とあたってもおもしろい試合になるだろうと予想ができた。
風呂に入ってベットに横になる。
そしてそのまま僕は眠りについた。
翌朝。起床は8時半。
「ん。目覚めスッキリだ。今日は絶好調」
準決勝は11時。そして昼を挟んで14時から決勝戦。その後に閉会式みたいなのがあるって言っていたか。
顔を洗って準備をしていたら突然部屋の扉が大きな音をたててバタンッと開いた。
「マーシー!マーシー!起きてるか!!」
「うるさい。起きてるよ」
マサルが部屋に入ってきたがもうすでに外に出る準備ができているようだ。
「早いなマサル。試合まで時間はまだあるぞ」
「ダルブさん達が言うには9時には会場に行かなきゃ良い席とれないってことらしい」
「そうか。ならもう出るのか?」
「はい。タカシも待ってます」
「なら俺も一緒に出ようか。早く行ってもやることないかもしれないけどな」
タカシも準備を済ませて廊下に出ていた。タカシもマサルも服装はラフな感じでタカシはカーディガンにジーパン。マサルはトレーナーに前掛けだ。
僕はいつもの冒険者ルック。
「おおマーシー、調子はどうや?」
「夜遅くまで呑んでたお前たちよりはいいよ」
「はっはっは。三時間は寝たから俺も十分調子ええで」
こいつら5時まで呑んでたのか。
ダルブさん達の部屋の前に着いてノックをする。
「返事がないな」
再びノックをするも返事はない。
ガチャっと扉はカギがかかっていない状態だったようですんなりと開いた。
「不用心やなー。泥棒入られても知らんで」
タカシは扉を開けてズカズカと入って行く。
うわ、酒臭い。
「ううーーん」
「おえっ、ぎもぢわるいー」
ソファーで酔いつぶれているダルブさんとグラブルさん発見。
個室の方からはミクシリアさんのうめき声が聞こえてくる。
他のメンバーも部屋やトイレでぐったりしていた。
「おい。タカシ、マサル。お前たち何をした?」
「え?なんもしてへんで」
「そうそう。さっきまで楽しく呑んでただけ」
「せやで。そんで皆フラフラやったからこの部屋まで運んでやったくらいやで」
イコールそれはお前たちに付き合わされていたということじゃないのか?
僕は部屋でぐったりしているメンバー全員にキュアとヒールをかけていった。
「ああー、死ぬかと思った」
「途中からほとんど記憶がない・・・・・」
ナイトガードの皆さんがここまで酔いつぶれているのにどうしてタカシとマサルはケロッとしているんだろう?
「俺は一晩寝たら酒はリセットされるんや」
「俺も風呂入って寝たら全然平気」
そんな体に生んでくれた親に感謝しろよ。
「皆さん大丈夫ですか?会場の席取りに行くんですよね?」
「おお、そうだそうだ。早く行かなきゃ良い席が埋まってしまうからな」
「ごめん!マーシー!試合前にこんなことで魔法使わせちゃって!!」
ミクシリアさんは申し訳ないと謝ってくれているが大して影響はないので大丈夫だ。
すっかり元気になった全員でホテルを出て会場へと向かう。
チームの違う僕の応援ですみませんと僕が言うとグラブルさんは
「もう俺たちは仲間みたいなもんだろ?マーシーが優勝したりしたら俺たちも嬉しいし俺たちも誇れるってもんだよ。それにミクシリアのためにもなるしな。マーシーが出場してなくても今日は観戦に来ていたさ」
「ああその通りだ。まぁ今日はマーシーも出るから楽しみは倍増だな」
ダルブさんも渋い笑顔でかえしてくれた。
会場に入ると客席は徐々に埋まりつつあった。開始2時間前でここまで客が入っているのか。徹夜組とかいたかもしれんな。
まぁそれだけ注目されているってことだよな。俄然やる気が出てきた。
「よしよしなんとか良い席がとれそうだな」
ダルブさんが闘技場中央の前の方の席を確保してメンバーがそれぞれ座っていく。
「マーシーどうすんの?まだ結構時間あるやろ?俺らは一杯ひっかけるつもりやけど」
「朝から酒。俺はなんて幸せ者なんだ」
タカシとマサルの言動をナイトガードの皆さんはげんなりした表情で見つめている。
「そうだな、控室に入っておこうかな」
タカシとマサルは席をグラブルさんに任せて屋台へと走っていった。
「グラブルさんすみません。迷惑だったら本気で怒鳴りつけていただいて構いませんので」
「いや、いいよ。俺たちだけで居るより、あいつらが居るだけで場が和むしな」
「すみません、それじゃあ少しの間あいつらのお守りをお願いします」
「おお任せとけ。マーシー、期待してるぞ」
「期待しててください。優勝してきますから」
「はっはっはっは!武闘大会の優勝者と魔術大会の優勝者の居るEランクか!!おもしれーじゃねーか!!」
「優勝以外ゆるさないわ。そして手加減もゆるさない。マーシーって適当に力抜いてるところあるでしょ?本気が見たいの!私はマーシーの本気が見たいの!」
本気出したら闘技場くらいなら消し飛ばせるかな?
「大丈夫ですよ、先輩。オレ優勝するって言ったでしょう。本気出すかは別ですけどね」
僕は乾いた笑顔で返す。
「マーシーあんたロマネちゃんには絶対手加減するでしょ!かわいいからってそんなのは許しません!!ちゃんとボッコボコにしなさいよ!!」
「かわいいから手加減って、それじゃあミクシリアさんと対戦したら全然本気だせないじゃないですか」
「キーーー!!その余裕の物言いが気に食わない!!はいはい、さっさと優勝してきなさい」
「じゃあ行ってきます」
僕は後ろ手に振りながら観客席から控室へと向かった。




