からまれる女の子を助ける。よくあるよくある
4回戦はロードナーっておじさんと魔族のキリカ
試合は終始キリカの火魔法をロードナーが防ぐ形で進むが威力も量も圧倒したキリカが次々と氷柱を破壊していき最終的にキングの氷柱も破壊されてそのまま試合終了となった。
これで準決勝進出の4選手は
僕、ロマネちゃん、魔王の娘、魔族。
おいおい、人外率高すぎだろ。PPおこってるじゃねーか。
準決勝と決勝は明日だ。対戦相手も今日は決めずに明日の試合前に決めるということだ。
「それじゃあ行きましょうかミクシリアさん。皆が待ってますからね」
「そうね。それじゃあねロマネちゃん。明日頑張ってね」
「はい。ミクシリアさんもマーシーさんもまた明日」
「ロマネくん明日の試合期待しているよ!マーシーくん!!僕に勝ったのだから明日も頑張ってくれたまえ!」
ゼアネル。もう二度と会うことはない・・・・・・かな。結構嫌いじゃないキャラだったぞ。
僕はミクシリアさんと観客席の方へと足を向けた。ぞろぞろと闘技場を出ていく観客が僕らを見るとチラホラ声をかけてくるものもいる。準決勝進出の僕よりもなぜかミクシリアさんへの声かけのほうが多いのはこれいかに。
「おお、マーシーは適当におつかれ!ミクシリアさんはホンマ惜しかったわー。あそこは問答無用であの黒いネーチャンごと雷の餌食にせな」
あ、こいつそこを掘り起こすか。
「無理よ無理無理。わたしはあそこで無慈悲に攻撃するほどの鬼畜にはなれなかったわ」
「大健闘だったなミクシリア」
ダルブさんがミクシリアさんに声をかける
「マーシーの試合よりも上級魔法を使った嬢ちゃんよりもミクシリアの試合が一番見ごたえあったよ」
グラブルさんもミクシリアさんに声をかけた。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
あ、ミクシリアさんの目からポロリと涙が。
「うう・・・・・悔しい。もうちょっとだったのに・・・」
口を尖らせて渋い顔を見せたミクシリアさん。さっきまで我慢してたのに同じチームの皆に声を掛けられて緊張の糸が途切れたのかな。
「よっしゃ!!呑もう!!今日は呑もう!!こういう時は酒に限るで!!」
タカシ。今日も・・・な、今日も。
「タカシの言う通りだな!呑もう!!なァ!マサルも!!」
グラブルさんも乗ってきた
「おう呑みましょう!!マーシー抜いて朝まで呑みましょう!!」
「え?俺も呑むよ」
「マーシーはダメよ!!アンタ明日試合なんだから今日はわたしの残念会なんだから!!」
僕らはそのままホテルから少し歩いたところにある居酒屋へ直行。ダルブさんが準備よく個室を予約しておいたようでミクシリアさんが「負けると思ってたのかー!」と騒いでいたが祝勝会のためだったと言われ、さらにそこで涙ぐんでいた。
僕はこの席では飲酒は禁止とされて渋々ジュースを飲みながら美味しい料理だけをつつくことに専念した。
夕方から呑み始めた面々は止まることを知らずずーっと騒いでいたが酒の入っていない僕は明日の試合のことも考えて早めに1人ホテルへ戻ることに。正直目の前で楽しくお酒を呑んでいる面々に苛立ちを覚えていたため早くこの場を離脱したい気持ちで一杯だった。
手持ちの銀貨数枚を手渡して居酒屋を出て暗い夜道を1人帰路に就く。
うん、お酒を呑みたい。
缶ビールの一本でも買って部屋呑みしたい気分だ。
それにしても明日が楽しみだ。ロマネちゃんとあたったらあのダイダルウェイブをどう対処するか。打つ前に止めるのもいいが打たせてやりたいしなぁ。
魔王の娘のあの水の剣。あれってどうだろう?僕にも使えるのかな?
夜道を物思いにふけって歩いていると何やら話し声が聞こえてくる。
薄暗くて見えにくいが人が3~4人いるな。
「いいじゃんかいいじゃんか。ちょっとだけそこで呑もうよ」
「そうそう。そこに俺たちが泊ってるホテルがあるんだよ。お酒も用意してるからさぁ」
「いやぁこんな美人に出会えるなんて今日はラッキーだよホント」
ナンパか・・・・異世界にもナンパはあるんだな。
「ヤメテクダサイ。ヒトヲヨビマスヨ」
女の子の感情のない返しが酷く冷たいな。
「イヤ、ハナシテクダサイ。ダレカ、ダレカー」
女の子と目が合った。
おい、何をしているんだ?魔王の娘。
じーーっとこっちを見て僕から目線をはずさずに
「ダレカ、ダレカタスケテクダサイ」
表情を変えず感情も込めずにこちらに視線を向け続けている。
僕は一応自分の背後に視線をうつした。
もちろん誰もいない。
やっぱり僕に言っているのか。そのくらい自分で対処できるだろーが。しかも男3人の方は今日魔術大会でベスト4に残ったソイツが分からないのか?
ああ、会場で見てなかったってことかな。
僕は渋々そちらに近づいていく。
ええーっと、確か名前は・・・・・・・
僕はステータスを確認した。
長っ!!長すぎるよ!!
ミラネル・ヴュール・ジョーホール・クルマンストリー・ヴィングラント・デル・・・・・・・・・・・・・
そういえば大会では『ミラ』って登録されていたな。頭文字のミラか。
「ミラ、お待たせ。ん?何?この人たちは?知り合いかい?」
男にからまれている女の子を知り合いを装って助ける図。なんてベタな展開なんだ。
「いえ。知らないわ」
「そうか、じゃあ行こうか」
僕はミラの腕を掴んでこちらに引き寄せた。
「おいおいなんだよニーチャン」
「こっちが先約なんだよ」
「失せろよ・・・・・殺すぞ」
よし、3人目のヤツは少し痛めつけてやろう。
「んーー、君たち。彼女はそこそこ腕の立つ魔法使いなんだよ。手を出すのはやめておいたほうがいい」
僕がそう言うと、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるその男たち。顔は悪くはないんだが性格は最悪そうだな。
「へー、そうなんだー。俺も実はそこそこ魔法に自信があるんだよなー」
「へっへっへ、コイツはなぁ、去年の魔術大会の本選出場者なんだよ」
「俺たち2人も本選にはギリギリ出れなかったが結構魔法には自信があるんだぜ。お前たちも痛い目に遭いたくはないだろ?」
本選出場・・・・・・。初戦敗退ってところかな?それにギリギリ予選敗退ってのはどう転んでもただの予選敗退だろ。今お前たちの目の前には今年のベスト4が2人いるんだけどな。
僕の後ろに身を隠したミラが魔力を練り始めようとしたが僕は手で制止して男たちの前に歩み出る。
「おい、俺の顔を覚えておけよ。明日の魔術大会の優勝者の顔だからな。そして俺の顔を見かけたらすぐさま逃げることをおすすめする。次会ったときは手加減してやらないからな。パラライズ」
左右の男2人をパラライズで行動不能にして目の前の男の口をすぐさま右手で塞いだ。
「テメーはさっき俺に『殺す』って言ったよな?」
男はフガフガ言いながら口を塞いだ僕の右手を両手で掴んでいるが僕の力のステータスは補正もされているため普通の魔法使いの何倍もあるわけで。
「口の中に火を放り込まれるとどんなリアクションしてくれるのかな?」
僕は小さいファイアをその男の口の中に作り出すと悲鳴にならない悲鳴を上げてその男はジタバタもがきだす。
フガフガガガガガ!!
ブフーブブブア!!
焦げた匂いがかすかにした時点でちょっとかわいそうになってきた。
ファイアを解除してやるとどうやら失神してしまったようで白目をむいている。顔を掴んでいた手を放すとぐったりと地面にうなだれてビクビクと痙攣し始めた。
あ、やばい。
「ヒール」
まずいまずい。死なれたら困る。
左右の男たちのパラライズを解除すると1人はよっぽど怖いものを見たのか逃げ出していった。
「おい、コイツも連れて行けよ。一応回復してやったが今後熱いものは一生食べれないかもな」
「す・・・すんませんでしたー」
失神したかわいそうなヤツを抱えて小物感丸出しで去っていく。漫画でこういうヤツよくいるよくいる。
僕は振り返って「大丈夫か?」と声をかける
「口の中に火魔法って・・・・・・・発想が異常者・・・・・」
魔王の娘にそんなことを言われるとよほどの異常者に聞こえてしまうじゃないか。やめてくれ。
「ああいうやつは怯えるくらいに痛めつけるくらいがちょうどいいんだよ。ちゃんとヒールもかけてやったろ?」
「そうね、ありがとう。私だったら殺してた」
「物騒なこと言うなよ。それより1人で何してるんだ?連れの2人はどうした?」
「もう寝てる。私は・・・・・」
グーーーーー
これはあれだな。腹の虫ってヤツか。
顔を真っ赤にして視線を逸らす姿がかわいい。
「腹減って飯食いに出て来たってことか。良い具合に目の前に居酒屋があるぞ」
「べ・・・・別にお腹が減ってるわけじゃ・・・・」
グーーーーー
「はいはい、じゃあな。また明日な」
僕は後ろを振り返って軽く手を振った。
グイッと。
どうやら服を掴まれて止められたようだ。
「どうした?まだ何か用か?」
「お金・・・・・・・・忘れた」
え?何?この娘?ドジっ子キャラ推奨してるの?それにまた腹の虫も鳴ってるよ。めっちゃお腹空いてんじゃん。このまま放置・・・・・・・できないよな。
お金だけ置いていく選択肢もあるんだが・・・・・・。
「よし、じゃあ飯奢ってやる」
「え?いいの?」
「そのかわり今日使ってた魔法ちょっと教えてくれる?」
「くっ、背に腹はかえられないわ」
意外にも簡単に教えてくれるもんだな。まぁ僕も少し呑みたいって思ってたところだしな。あれだけ目の前で酒飲まれていてちょっとイライラしてたんだよな。
そして僕は魔王の娘を連れて目の前の居酒屋に入った。




