ぐだぐだ考察を述べる相手を黙らせる。結構気持ちいい
僕の陣地のうち残ったのは前の3本。
すなわち前の3本のうちのどこかにキングが設置されているということだ。
「何を考えているんだ君は?相手の位置から最も近いところにキングを設置すれば下手すれば一発で勝負がついてしまうじゃないか!」
いやいや自分、後方の3本一気に狙って一発で勝負終わらせにきてたじゃん。
「前方の氷柱を守るよりも後方の自分の位置に近い氷柱を守る方が安全なのは分かるだろう?もっとも僕のように魔法の扱いがうまければさっきのように前方の氷柱も守ることも可能だが・・・・・・そうか、だから君はわざわざ前に出てきたというわけか。前方の氷柱に近い場所に居れば守ることもたやすい。そして前線から一気にこちらの氷柱を破壊しようというわけか!すばらしく頭がまわるようだな!マーシーくん!僕は君を甘くみていたようだ!!」
残念15点だ。
守りやすいっていう点だけで譲歩しての15点な。
正直スタート地点からこの前方の氷柱を守ることも多分できるし。ここから一気にそちらの氷柱を一気に破壊するってのもちょっと違う。
僕が破壊するのは
キングの氷柱のみだ。
「それじゃあ今度はこちらの番ですね」
僕は手を天にかざした
「サンダー」
ビシャーーン!!
と一筋の光がこちらから見て一番右奥。最も守りやすいと豪語していた3列目の氷柱を襲う。
氷柱は崩れ落ち大きなパネルのその部分が赤い表示に変わると試合終了がアナウンスされた。
「なななななななななななな!!!!なにーーーーー!!!!」
ゼアネルの悲痛な声が場内に響き渡る。
え!?
うそ、ゼアネル様・・・・
キャァァァーーー!!ゼアネル様――!!
おおおお!!
か・・・・雷魔法・・・・
観客も騒然としている。
「い・・・・一発で。一発で当てたというのか!!」
「いやぁ、そこが怪しいと思いまして」
とぼけた顔してばばんばんだ。
「しかも雷魔法だと・・・・・そんなの防ぎようが・・・」
「魔法打つ前からマジックガードを展開していれば防げますよ。まぁそれをしちゃったらキングの場所を相手に伝えてしまいますけどね。ああ、氷柱全部にマジックガードを展開すれば大丈夫ですね」
「く・・・・・・そんな・・・・・・・僕が・・・・・・負けるなんて」
申し訳ないが今大会は縁がなかったってことだな。次大会での優勝を目指してください。
僕は遠く離れてしまったスタート地点に風魔法にのって帰還するとゆっくりと歩いて通路の方に入っていった。
後方ではゼアネルが膝をついていたが、もうかける言葉はない。無駄話せずに最初から全力でくるようならもう少し違った展開になっただろうが完全にこちらを甘くみていた代償だな。
通路に戻るとネイさんが仁王立ちでこちらを見ていた。
「どうしました先輩?何かありましたか?ゼアネルの後方に鳥が飛んでるくらいでしょ?」
「あ・・・や・・・・・」
本当に大丈夫か?この人。
『火魔法に、光魔法に、雷魔法に、風魔法・・・そして召喚魔法・・・・・か』
「あの召喚魔法はちょっと反則かな?って思ったんですけど大丈夫でした?」
『説明を・・・・・・求めていいかな?』
「歩きながらでいいですか?」
僕はネイさんと並んで歩きながら参加者の観戦室へと向かった。
「まず始めにゼアネルが風魔法で登場したのを見て試合前に魔法の行使は可能か案内してくれた人に一応確認しました。まぁ別に構わないってことだったんであの火魔法と光魔法のパフォーマンスをしたわけですがそのタイミングでこっそりと召喚魔法で小鳥を1羽。それを上空に放って見えなくなるくらい上空に飛ばしてばれないようにゼアネルの背後へ。そしてゼアネルがどこにキングを設置したのか盗み見ました」
『何か別の魔法を発動したようには見えた。けれどその時はそれが光魔法だと思ったよ』
「そう思うようにしましたからね」
『キングを前方に設置したのは?』
「それは・・・・・演出・・・・・・・ですね。腕のたつ魔法使いなら俺が真ん中の氷柱に立ったら直接後方の氷柱を攻撃してくるんじゃないかと思いましたんで。ちょっと意地が悪かったかもしれませんが相手が勝ったと思わせて逆転した方が良い演出にはなるんじゃないかと思って」
『そして後方6本全部破壊させてからのキングの単独撃破か。本当に意地が悪いな』
「否定はしませんがあっちにもちゃんと勝ちの目はありましたよ。普通に前方から破壊していけばすぐにキングが破壊できた可能性があるわけですから」
『そんな攻撃が来れば君はきっちり防いでいたのだろう?』
「・・・・・・・・・あの、本当に普通に喋れないんですか?なんか俺一人で喋ってる変な人に周りから見られそうなんですが」
「え・・・・あ・・・・・・・・・ごめ・・・・・・・・・」
顔を赤くさせて俯くネイさん。
かわいいじゃないか。
「えっと、続きですけど。もちろん前方のキングが狙われたらちゃんと守ってましたよ。どうやって守るかはその時次第でしたが。まぁ、こっちの望んだ展開になったので最後は召喚魔法のトリ君に盗み見させた場所の氷柱を打ち抜くだけでしたから簡単ですね」
『あの位置からの後方の氷柱への攻撃は難しい。普通に火魔法でいけばゼアネルの風魔法に撃ち落される。だから雷魔法で攻撃した?』
「うーーん。半分正解。後方1本の氷柱狙いならサンダーが一番狙いやすいと思ったのは事実ですね。もう半分は準決勝、決勝に対しての挑発ですかね?俺は雷魔法が使えるぞっていう。実は雷魔法は初級しか使えないんでメインとしては使わないんですよ。それでもこれで雷魔法っていう切り札があるって思わせれたら次の試合で対戦相手が色々深読みしてくれると思うので。準決勝、決勝がこれでおもしろくなりますよね」
『おもしろく・・・・ね。随分と試合を楽しんでいるんだな』
「楽しいですよ。こんな機会今まで全くなかったので。それじゃ、俺はこれで」
前方からこちらに向かって歩いてくるロマネちゃんを発見した僕はロマネちゃんの方へと足を向ける。
「おめでとうございますマーシーさん。凄かったです。どうして相手のキングが分かったんですか?」
「たまたまだよ。後ろの3本順番に全部破壊しようと思ったけど一発目で運よくキングを引いちゃっただけだよ」
「素晴らしい雷魔法でした。私も負けないように頑張ります」
「うん、頑張って。一緒に準決勝に行こう」
「はい!」
ロマネちゃんを見送り僕は控室へと足を向ける。
『君は口が達者だな』
聞いていたのか。ネイ先輩。
遠目に見えた鎧姿の金髪騎士。
『次対戦するかもしれない相手に全部は見せませんよ』
念話で答えて僕は観戦室へ。
たどり着いた参加者の観戦室。中に入るとミクシリアさんが笑顔で迎えてくれた。
「負けるとは思ってなかったけど随分と余裕ある勝ち方してくれたわね」
「いやいや、6本も破壊されてるんですから余裕なんてなかったですよ」
「キングの位置どうやって探ったの?教えなさいよ」
ガッと僕の首を右腕でロック。
「順番に後方の3本破壊しようとしたら一発であたっただけですよ」
「いいえ、あれは絶対分かってて一発で当てたわよね?おねえさんには分かるわよ。言いなさい」
くそ、妙にするどいじゃないか。それにそんなに胸を押し付けないでください。
「終わったら。大会が終わったら言いますよ」
僕は他の参加者に聞こえないように小声で言った。
「くっ!ってことは本当に相手のキングの位置が分かってたってこと?マーシーと当たらなくてホント良かったわ」
解放してくれたミクシリアさんは苦い顔で僕を見つめていた。
「さぁ、次の試合を見ましょう。明日対戦することになるかもしれませんしね」
次はロマネちゃんとミーシアさんって人か。紅蓮炎舞って言われてるくらいだから火魔法使いなんだろうけどロマネちゃんは水魔法ってことだからやっぱり水の方が有利なのかな?
両者はすでにパネル位置でスタンバっておりカウントダウンが始まった。




