盤上ゲームみたいで楽しそうだ
僕達の次に控室に入ってきた魔法使いは20代後半の男の人と僕と同じくらいの年齢の女の人。2人とも長いローブ姿でいかにも魔法使い風だが男の人の方は少々うるさかった。
「いやぁー、ここで予選が終わるまで待機ですか?お、ロマネちゃんじゃないか!流石だね!あれ?もう一人は見たことないな。初めまして!僕はゼアネル。人呼んで『疾風のゼアネル』だ!」
自分で自分の二つ名を言うヤツほど寒いヤツはいない。
「初めまして、マーシーです」
しかし僕はめんどくさそうなヤツだなとは思いながらも笑顔で対応するよ。
「初めましてマーシーくん。あと彼女は『紅蓮炎舞ミーシア』だ」
「やめてよ!そんな名前で呼んでるのはあなたくらいよ!」
なるほど。やっぱりめんどくさいヤツなのか。
「ミーシアさん予選通過おめでとうございます」
「ロマネもね。予選1組にはドロルが居なかったかしら?」
「ドロルさんは残念ですが」
「そう、良かったわ。私アイツ嫌いなのよね」
ふむ、ドロルとはマッチョくんのことか。
僕以外は見知った仲なのかな?まぁこの国の中で魔法使いとして有名な人達が出場していれば知っていて当然か。外部からの参加者よりもここリアで訓練している人の方が魔法使いとして優れているということだろう。
そしてずっと喋り続けるゼアネルを躱しつつ時間は流れる。
3組目の予選が終了しさらに2人が控室に入って来る。
「ミクシリアさん、予選通過おめでとうございます」
「マーシーも。流石ね」
3組目の予選通過はミクシリアさんと40代くらいで短髪茶髪の長身のおじさんだった。服装は魔法使いというよりは首元から長い前掛けをしていて神官って感じだ。
「最近は若い魔法使いが本当に優秀だな。おれだけおじさんじゃないか、はははは」
「ロードナー殿、それを言えば僕ももう30になりますからね。若い才能がうらやましいですよ!」
「まぁこの国だからこそ小さい頃から魔法の英才教育を受けた子供たちが育つわけだしな。魔法使いの水準が上がるのはいいことだ。けれどおじさんも負けられないがな」
そして最後の4組の予選通過者が現れる。
特に表情を変えずに入室してきた魔王の娘。流石に予選は突破するよな。こいつの魔力600あるしな。
そしてもう一人はボリュームのあるパーマ、胸の大きく開いたドレスのような真っ黒な服装。20代後半の綺麗な女の人だった。名前はキリカというらしいがこの人・・・・・・種族が魔族なんだが・・・・・。
「おやおや最終組は2人とも見たことのない人たちだね!それに2人とも美人ときたもんだ!私は『疾風のゼアネル』だ!」
2人に握手を求めるゼアネルだったが女性2人は2人ともそれを無視してゼアネルを通過した。
差し出した手を引っ込めるゼアネルがひどくいたたまれないな。
「予選通過おめでとう諸君。適当に掛けてくれ」
ホールドさんとネイさんが控室に入ってきた。
僕達予選通過者はそれぞれ用意されていた椅子に座って2人の方に目を向ける。
「それではこれから本選について説明させていただく。私は魔法騎士団第2支部の支部長ホールド。そして彼女は第1支部の支部長ネイだ」
ネイさんは表情をかえずに一言も喋らない。いや、喋れないんだろうな、きっと。
「まもなく会場に観客が入り、闘技場が特設リンクになる。前回大会を見たものなら知っていると思うが今回も氷柱バトルを行うことになる。今日は本選の1回戦のみ行い、明日に準決勝と決勝を行う予定だ」
氷柱バトル?なんだろうか。
「今大会初出場のものもいるので今から概要を説明する」
ホールドさんが壁の黒板のようなものに絵を描きながら説明してくれる。
「予選1回戦は氷柱バトルだ。長方形の闘技場にセンターライン。センターラインを挟んで自身の陣地と反対側に相手の陣地がある。そこに自身の陣地と相手の陣地に高さ5メートルの氷柱が3×3本、計9本。相手と合わせると18本セットされる。簡単に言うと相手側の氷柱を破壊するゲームだ」
へェ、魔術大会って単純なバトルじゃないのか。予選もシンプルな魔力勝負だったしな。
「術者はこの氷柱のさらに後ろ。この位置にスタンバイになる」
双方の術者の間に18本の氷柱か。なんだか盤上ゲームみたいで楽しそうだ。
「そして勝利条件だが、対戦時術者には9本のうち1本氷柱を選んでもらう。それがキングとなり、そのキングが破壊されれば他の氷柱が残っていても敗北となってしまう」
キングねぇ。9つでやるチェスって考えればいいのかな?ただし手番は関係なくただの殴り合いになりそうだけど。
「9本すべて破壊すれば自ずと勝利になるしキング狙いで破壊するもよしだ」
どういった攻め方がいいんだろうか?一気に全破壊が一番効率よさそうだが、一番奥の氷柱は自分の位置からは遠くなるから狙いにくいか。そうなるとキングの位置は奥に設置するのが妥当なのかな?
「それじゃあなにか質問はあるかね?」
僕はすっと手を挙げた。
「相手の魔法を妨害するのはありですか?」
「術者を直接攻撃するのは禁止だ。けれど相手の放った魔法はもちろん迎撃してもらって構わない。もちろんマジックシールドもありだ。魔法であればなんだって使用は可能だと考えてもらってかまわない」
「試合中術者は移動はできますか?」
「移動は構わない。ただし陣地を超えるのは禁止だ。自身の陣地の中ならどう移動してもらってもかまわないが最初のスタンバイの位置は氷柱よりも高い位置にあるため魔法で相手の氷柱を破壊するのも相手の魔法を迎撃するのもここが一番全体を見渡せて勝手の良い場所だとは思うがな」
いや、地面に降りて相手から見えないところからバシバシ魔法放ってもいいんじゃなかろうか?いや、そうなると自分の方もノーガードになるか・・・。
「氷柱はどれくらい破壊すれば破壊の判定になりますか?」
「マーシーくん、色々聞いてくるな。氷柱はだいたい半分破壊すれば破壊されたと判断する。上の方を削った程度では破壊とは判断されない。根本を破壊して倒れればもちろん破壊と判定するためできるかぎり足元の方を狙った方がいいかもしれんな。一応会場に大きなパネルが設置されていて破壊された位置は赤くなるようになっているからそのパネルを見てもらったらちゃんと破壊になったか分かるはずだ」
破壊は下半分を狙ったほうがいいか。
「マーシーくん、もういいのかな?他の参加者も何か聞いておきたいことがあればなんでも聞いてくれて構わないぞ」
参加者は特に口を出すこともなくこれで質問は終了。
「それでは今から対戦相手の抽選を行う。まず先に予選1位通過のメンバーからだ」
ホールドさんは4枚の札を机に伏せて置いた。
「1枚づつとってくれ。数字が書かれているから予選2位通過のメンバーも同じように引いて同じ数字のものが対戦相手になる」
ロマネちゃん。ゼアネル。ロードナー。ミラ。魔王の娘はどうやらミラというらしい。そういえば名前確認してなかったな。
そして僕達予選通過2位が同じように札を引く。
「それじゃあ皆、札を出してくれ」
1回戦
僕対疾風のゼアネル
2回戦
ロマネちゃん対紅蓮炎舞ミーシア
3回戦
魔王の娘ミラ対ミクシリアさん
4回戦
ロードナーのおじさん対魔族のキリカ
「それじゃあ皆の健闘を祈っている」
そしてホールドさんは控室を出ていった。ネイさんに至っては一言も喋らなかったな。




