一泊おいくらでしょうか?ええ、全然余裕です
詳しい話は全て大会が終わってからに。ということでその場はそのまま別れることにした。
いらぬ情報を大会前に頭に入れたくなかったこともあるし今日は今日でまだやることも残っている。
タカシの鶴の一声で決まってしまったことだが、まぁ1つのイベントだと考えて諦めよう。特に他にやりたいこともないし、ジパングに行くのもそんなに急いでいるわけではない。
先ほどの人が通れるほどの小さな門で門番に通行証を見せてもう一度リアに入りそのまま僕たちは冒険者ギルドに向かった。
リアの冒険者ギルドは帝都ほど広いわけではなかったがすごくお洒落。OLがランチでもしていそうなカフェが併設されていて受付のカウンターも単純に木製ではなく木目調のシックな感じが高級感を出していた。
「なんか今までの所とちゃうな」
「一見してマッチョなヤツがいないですね」
「確かにむさくるしくないって感じだな」
僕は空いている受付に足を運んだ。
「すみませんよろしいでしょうか?」
「ええどうぞ。本日はどうされましたでしょうか?」
黒いベスト姿に眼鏡が似合うキリッとした仕事のできそうな男性スタッフ。
「宿の空いていそうなところを探しているのと明日の大会のエントリーをしたいのですが」
「かしこまりました。宿はこの時期空いているところは少ないと思いますので少々値ははりますがこのギルドの横にございます冒険者専用の施設がいいかと思います。明日の魔術大会のエントリーでしたらここで行えますので今からいたしましょうか?」
「そうなんですね、ありがとうございます。じゃあエントリーお願いします」
魔術大会はどうやら冒険者ギルドでエントリーをそのまま受付しているようで僕は銀貨5枚を支払い銀製の札を受け取った。『129』と書かれた札。
すぐにそのまま2人の所に戻る。
「大会のエントリーはここでやってたよ、ほれ」
僕は銀製の札を見せた。
「簡単でよかったやん」
「『129』・・・。良い肉か・・・・。縁起がいいですね。今日は肉に決定で」
昼過ぎにリアに着いてそこから門の外で待たせれ、魔王の娘に追われて色々しているうちにすでに時間は5時前。とりあえず宿だ。ナイトガードの人たちも多分横の宿にいるんじゃないだろうか?
「宿はここのすぐ横にあるらしいからとりあえずそっちに行こう。ナイトガードの人たちが居れば挨拶してそれから飯にしよう。肉だな?肉にしようか」
「よっしゃ!!肉や!!」
「新しい街で新しい肉に出会う!これぞ旅の醍醐味!」
僕達は冒険者ギルドを出て並びの宿に・・・・・いや、ここもこう呼んで差し支えなさそうだ、ホテルと。
「メッチャ高級そうやん。帝都より高いんちゃうの?」
「ダメですよ。僕たちが入っていい場所じゃないですよ」
「確かに前掛け姿じゃちょっとなぁ」
「前掛けは関係ない!!」
まぁ入ってみよう、と大きなガラス貼りのドアを開けて中に入ってみる。
高級感あふれる内装。でかいシャンデリアに高級ホテルを思わせる待合スペースにカフェ。受付に居るスタッフも帝都に負けないくらいビッチリしていて皆さん姿勢がいい。
「え?帝都よりやばいんちゃう?」
「一泊金貨1枚とかとりそうなんですが」
「流石にそれは・・・・」
とにかく受付に行ってみよう。
「すみません。宿をとりたいのですが」
「いらっしゃいませ冒険者の方でしょうか?でしたら契約紋を確認したします」
僕は腕をまくって契約紋を出した。
「ありがとうございます。当ホテルは一泊銀貨2枚になりますが大丈夫でしょうか?」
大丈夫か?聞いてくるあたりは僕たちがEランクだからだろうな。しかしまぁ帝都と同じ金額か。こっちの方が高そうだが。
「大丈夫です。3泊4泊くらいは考えているんですが」
「それでしたら本日1泊分の料金のみ先にいただきましてチェックアウトの際に残りの宿泊数分をお支払いください」
「分かりました。それじゃあ先に銀貨6枚ですね」
どうやらここは冒険者なら1割引きとかは無いようだ。
僕は3人分のカギを受け取った。
「すみませんがもう一つ。ナイトガードっていう冒険者チームが多分ここに泊っていると思うのですがご挨拶に伺おうと思っていまして。取り次ぎってできたりします?」
「ナイトガード様ですね・・・・少々お待ちください」
スタッフはスタスタと中に入っていった。
多分教えてくれないんじゃなかろうか?Eランクの不審な男3人に個人情報簡単に流したりはできないよな?
??
なんだ?僕の感知能力が反応した。
危険が近づいてる?
「マーーーーーーシーーーーーーーーーー!!」
「ぐえっ」
何者かが僕の首に巻きついてきた。
「マーシー!!来たのね!遅いわよ!」
「ミクシリアさん、苦しい苦しい」
チョークスリーパーの正体はナイトガードのミクシリアさんだった。
「おいおい急に飛び出していったと思ったらお前たちか」
「お久しぶりですグラブルさん。とりあえずこの人を引き離してもらえますか?」
タカシとマサルも気が付いてこっちにやってきた。
「グラブルさん私服姿めっちゃかっこいいやん!そんなん何処で売ってんの?」
グラブルさんは細身のジーンズみたいなパンツに真っ黒のTシャツ、そしてシルバーアクセサリ。マジか、確かに普通におしゃれじゃねーか。グラブルさんは高身長に癖のある茶髪、白い歯の光るイケメンだ。めちゃめちゃイケてるよこの人。
「3人共良い装備じゃねーか。ちゃんとそろえたんだな?」
「装備じゃなくて俺はその私服がええんや!!何処なん?何処で売ってんの??」
「分かった分かった後で教えてやるからとりあえずここじゃなんだしな」
「ミクシリア様、グラブル様。お連れの方だったのですね?これは失礼いたしました」
受付の人が頭を下げていたが2人に会えてちょうどタイミングが良かった。
「お前らもここに泊るのか?先に団長に挨拶に来るか?」
「部屋を確認したらすぐにお伺いさせていただきます。それじゃあ先に部屋に行こう2人とも」
僕はグラブルさんに部屋番号を聞いて後であいさつに行くと伝えるとタカシとマサルを連れて自分たちの部屋へと向かった。
階段を上がり自分たちの部屋の前で立ち止まる。
「ここも帝都に負けへんくらい豪華やな」
床はすべて絨毯。所々付いてるランプが豪華。
「それじゃあ、開けるぞ」
僕はカギを開けて中へと足を踏み入れる。
「「「おおーー」」」
コの字に大きなソファ。ガラス張りの大きなテーブル。
本棚がありそこにはいろんな参考書が敷き詰められている。
「魔法書や歴史書、伝記、絵本まであるな」
入って向かいの壁に取り付けられた壁一面のカーテン。
シャーーーっと開けてみる。
「おおおお!一面ガラス張りや!!リアの街が一望できる!!」
カラフルなリアの街並みが絵画のように現れた。
「良いな。良い。こんな景色を見ながら肉を食いながら酒を呑みたい」
「とりあえず今から一杯やろうや」
「まぁ待て。まずはこっちの部屋も確認するべきだ」
そして僕はクイッと横に見えるドアを指さした。
「寝室・・・か・・」
満を持してドアノブに手をかけて扉を開ける
「ヒャッホーー」
「ヒャッハーー」
タカシとマサルが3~4人は寝れそうな巨大なキングサイズのベットにダイブした。
ここにもさっきよりは小さいがテーブルと1人用のソファ。枕元にライトも付いており完全にホテルのスイートルームを思わせる。
そして・・・・・・寝室からさらに見える扉。
僕はその扉をゆっくりと開ける・・・・。
「よしっ!!」
僕は珍しくガッツポーズが出た。
「なんやなんや?おお!!風呂やん!!ここも風呂ついてんのか!!」
「これは・・・帝都よりいいかもしれませんね。ミレーヌさんとぜひ来たい」
帝都のホテルも満足いく最高のホテルだと思われるが、ここリアのホテルは帝都の2割増しってところか。
「ベットの大きさとあのガラス張りの壁の分こっちのほうがええ感じやな」
「あとこの本だ。流石魔法都市って感じがする」
一通り感動をし終えた僕たちはナイトガードの皆さんに挨拶するために別の階にある先ほど聞いた部屋へと向かうことにする。




