生エルフ。決して食べ物ではない
帝都からリアへの道は迷い道なくほぼ一本道。
というわけではないのだがほとんど数メートル間隔で馬車が並んでいるため迷うことはない。
時折前方の方で何か獣が出たとか言っていたがこちらに被害があるわけでもなく前を走る馬車の護衛の人たちがあっという間に収めてしまうため特に僕たちが動くことはなかった。
右手にスーの森を見ながら進んでいると
「スーの森ってめっちゃでっかい森なんやなー」
「30分で歩いて抜けたって言ったら誰も信じないでしょうね」
端の見えない森。
馬車で丸2日かけても端まで行きつかなかった。
夜には野営をするのだが他の馬車も同じタイミングで休憩になるため特に見張りは必要なかった。
御者を勤めてくれているジャイスくんにアイテムボックスから出した料理を振る舞うと喜んでがっついている。自分のリュックに食べるものは入っているが乾パンくらいしかないようだ。
同じ道を行く近くのパーティーが挨拶に来ることもありその度にタカシとマサルの武闘大会の話で盛り上がるというのが日課になる。
スーの森の脇を真っ直ぐ西に2日。そして大きな看板が見えてくるとそこには
『ここから南 魔法都市リア』
そろそろ着くのかな?と思いきやそこからさらに2日かけてやっとのことで目的地に到着した。
このどでかい外壁はデフォルトなのだろうか?
帝都と比べても遜色のない高さと長さ。壁の先が全く見えないな。
帝都はど真ん中に城があってそれが外から見えていたがリアにはそれがないくらいでやっぱり規模は帝都と同等といったところだ。
入り口の門は異様な混雑ぶりを見せていて壁沿いに伸びた列が順番待ちだと聞いて僕たちはため息をついた。
「武闘大会優勝者やから優先とかってでけへんの?」
「多分、1キロくらい並んでません?」
「まだ昼過ぎだが、今日中に入れるんだろうか?」
渋々僕たちは最後尾に並んで順番待ちという名の暇つぶしへと移行する。
特になにかすることもないがやれることはここに着く前にやり切っていた。
しりとりや古今東西など3人でできるゲームはもう飽きた。来る最中であれば外を飛んでいる鳥に向かってタカシとマサルが気功弾を打ったり森に猪でも居ればそれらを狩ったりしていたがこんなところでできることはもう考えつかない。
「マサルマサル。ちょっと横のヤツに喧嘩売ってきてーや」
「タカシが行け」
「マサルの方がええって。『お前何見てんねん!』的な一方的な感じでさぁ」
「タカシが行けよ」
「それかもしくは女の子に声かけて来てーや。こんだけ並んでたら1人や2人べっぴんさんもおるやろ?」
「タカシが行けば?」
「分かった。分かったわ。そんだらオレオレ詐欺ごっこにしよ。ちょっと横の馬車に行って『俺やんオレオレ』って知人の振りすんねん」
「タカシがな」
「・・・・・・2人ともそんな感じで待ち時間潰せんじゃね?」
僕はボソッと2人に言った。
それから2時間くらい待ってようやく僕らの順番がやってきた。
ジャイスくんとはここでお別れらしい。
僕達は3人馬車を降りて門へ。馬車はジャイスくんと一緒に外壁前に並べられた馬小屋へと向かう。
「それでは僕はここまでです。ご飯ありがとうございました。ここからも良い旅を」
「おう、ありがとうな!」
「じゃあなジャイスくん。気を付けて帰れよ」
そして僕たちは門へと足を向ける。
魔法都市リア
帝都と同じように検問を通過して門をくぐると大きな通りが姿をあらわす。帝都のような賑やかさは無い感じだが人は多い。帝都は入ってすぐに飲食店や雑貨屋が立ち並んでいたがリアはそういうこともなく飲食店も所々。本屋や薬を扱っている店が多く感じる。
魔法技術の最先端をいく魔法都市リアはいたる所で魔法が目についた。
料理店で火をおこす
大工が木材を成型する
遅刻しそうな学生がマッハで移動
そしてなによりも僕の目についたのは
エルフ!!
真っ白な肌にとんがった耳。サラサラとした金髪や銀髪。
街を歩くものの中に所々エルフが混じっている。
「ファンタジーの代名詞が今目の前に!」
「あかんな、珍しくマーシーが挙動不審やな」
「エルフって確かに美形だが、おっぱいがなぁ」
タカシとマサルは興味がなさそうだ。
「日本人が米が好きなように!アメリカ人がハンバーガーが好きなように!イタリア人がピザが好きなように!日本人男性はエルフという存在を愛してやまない!そう!エルフこそ至高の存在だ!」
タカシとマサルは少し僕から離れていった。
魔法都市リアは帝都よりも華やかに感じた。帝都よりも僕らの世界に近い建物が並んでいる。それは色合い的なものなのか、帝都は基本石材なので白が基調とされているが、リアはどうもカラフルに見える。
魔術大会の予選は明日から。ギリギリじゃねーか。とりあえずエントリーだけは先に済ませておかないとな。
それからナイトガードの人たちに挨拶に行こう。
「とりあえず冒険者ギルドに行ってみようか。冒険者は困ったことがあったら冒険者ギルドに行くのが一番だろう。大会のエントリーもどこでやってるのか聞きたいしな」
僕は目線をキョロキョロとさせてエルフを目で追いながら2人に話しかけた。
「その不審な態度はやめてもらえませんか?」
「はははは、なんかいつもより目が輝いてんなー。耳がとんがった綺麗なお姉ちゃんってどこがええんやろ?まぁ確かに美人揃いやけど」
「エルフ、、、、そう、、、。エルフってだけでなんでも許せる気がする。耳がとんがっている?それはエルフのチャームポイントだ!胸が慎ましい?ボインのエルフなんて邪道だ!」
「楽しそうやな、マーシー。はははは」
「ボインのエルフも見たことはあるけど。エロ本とかでオークに・・・もごもご・・・・」
僕はマサルの口を鷲掴みにした。
「俺のエルフをそんなエロい目で見るな。エルフはもっと尊い存在なんだよ」
はいはいと僕は2人になだめられ冒険者ギルドへと足を向ける。
都市の中央に位置するところに帝都と同じように豪華なデカい城がそそり立つ。
帝都と比べると高さは無いようだが横に広い。端が見えないほどの長く長く続く壁が城を囲っている。
城自体は中央に位置しているが他の色々な施設がこの城壁内に集まっているようだ。
魔法都市と言われているだけあって魔法の研究所や魔法関連の書籍の集められた図書館などがあるらしい。
冒険者ギルドは城壁のすぐ外側にありその横に並ぶように大きなホテルのような宿泊施設があった。多分この冒険者ギルドの横の宿泊施設にナイトガードの人たちがいるのだろうと後で足を運ぼうと2人に話した。
冒険者ギルドへは僕たちが入ってきた門から城壁のところまで結構な距離を歩くことになるため僕らは美味しそうな店の物色もしながらゆっくりと歩を進めた。
「帝都に比べると線の細いヤツが多いイメージやな?」
「まぁこっちは魔法使いが多い街だからな。筋肉ムキムキの魔法使いも嫌だろ」
「食べる物は大きな違いはなさそう。あそこで焼いてる牛も向こうで焼いてる鳥も美味そう」
魔法使い、魔法使い、魔法使い、戦士
魔法使い、エルフ、魔法使い、格闘家
魔法使い、魔法使い、エルフ、魔法使い
うーーん、やっぱり魔法使いが圧倒的に多いんだな。そして少数のエルフか。職業『平民』がほとんどいないな。一般市民がほぼほぼ魔法使いということか。
魔法使い
魔法使い
エルフ
魔法使い
魔王の娘
ブーーーーーー!!!!
思わず吹いた。




