え?のぞきなんてしませんよ・・・しませんって
召喚魔法。
魔物、魔獣や召喚獣と呼ばれるものを召喚し使役する魔法。初級、中級、上級と召喚魔法にもランクはあり、ランクによりそれに応じた魔物が召喚される。
初級では基本は小型の魔物が召喚される。調査や連絡用に使用されることが多い。
中級になると戦闘でも活躍するような大型の獣も出てくる。
上級はさらに強い魔物が召喚されるが問題がある。
「上級以上になるとーー、意思を持った魔物が出てくることもあるのーー。その場合は主従契約って言ってーー、こっちのお願いを聞いてくれるようにしなきゃいけないのーー」
「基本は力づくになるわ。出て来た魔物を倒して服従させる。そうすれば今後の呼び出しを受けてくれるようになるわ。以前上級を使ったときはフレイムタイガーっていう魔大陸に生息する火を吹く虎が出てきて私たちのパーティーでなんとか倒したのよ」
「はーーい。フレイちゃーーん」
!?
さっきとはひと際大きな魔法陣が浮かび上がりそこから真っ赤な虎が姿を現した。
「バカ!こんなところで呼びだしてどうするのよ!」
ぐるるるるるる
真っ赤な毛並みに鋭く突き出た牙。動物園で見る虎の倍くらいの大きさのフレイムタイガー。
のそのそっとルビーナに近づいていく。
「おおーー、よしよしよし」
ルビーナがそのフレイムタイガーの首周りをわしわしするとその虎はごろごろごろごろと目を細めてその場に寝ころび出した。
「ねーー、かわいいでしょーー」
ルビーナさんそいつは猫ではなく虎ですよ。
気づいたらなぜかタカシがその虎の背中に抱きついていた。
「スゲー、この虎めっちゃ暖かいわ!」
「食うか?うまいぞ」
マサルは焼き鳥を虎の口元に差し出している。
パクンと焼き鳥を口に含んだ虎はまるで猫のように体をグルグルさせてルビーナにじゃれている。
「ねーー、かわいいでしょうーー」
ミズリー師匠はそんなルビーナを一喝して虎を退散させた。なぜか一緒に寂しそうにしているタカシとマサル。
さて、上級であんな魔物が出るのか・・・・・・。
ヤバイな。
召喚魔法LVが5まであるんだよな上級はLV3ってことだからさらに上に2つ。
ドラゴンとか出てきたりすんのかね?
「基本的には召喚魔法は何が出てくるか最初はわからないけれど一度出て来た魔物は自由に呼び出せるわ」
「うんーー、それとーー。意図的にー魔物を選ぶことができる方法があってー。それはー意思疎通のとれた魔物を自身の召喚獣にできるのーー。私のおじいちゃんはーー家で飼ってたワーウルフを召喚獣にしていたのーー」
「ランダムで出てくる召喚をするのか、任意の魔物を現実に選んで召喚獣にするのか・・・か」
「一度試してみるーー?」
「そう・・・・・ですね。やってみましょうか」
詠唱は・・・・いらないか。一応それっぽいセリフくらいは言っておくか。
「顕現せよ」
「プークスクスクス」
「なーに?聞きました?奥さん」
タカシとマサルがたったの6文字に反応した。恥ずかしいからやめて。
僕の目の前に魔法陣が現れた。一応魔力を抑えてはみたが魔力が関係あるのかは疑問だな。
シュン!と魔法陣から何かが飛び出した。
それは空中を飛び回り僕の肩にとまった。
「なんだ?鳥?」
「あら、ウィンドスワロウね」
風・・ツバメ・・・?
「ああーー鳥さんだーーいいなーー」
「ツバメや、ツバメが出てきた」
確かに普通にツバメだな。良かった。いきなりドラゴンとか出てきたらどうしようかと思ったよ。流石にそれはないか。
「鳥さんはねーー視覚を共有できるからーーすごく便利――」
「そうなんですか?よし、ちょっと飛んでみろ」
ツバメは器用に部屋の中をグルンと飛びまわった。僕が意識すると視線がツバメに移る。
オエッ、気持ち悪い。
3周くらいして戻ってきたツバメ。
「これは部屋の中では使えないですね。森の偵察とかには使えるかもしれませんが」
しかし僕は索敵をもっているので微妙な感じもするな。
マサルがタカシに耳打ちしている
「視覚共有できる鳥・・・・・やばいですね。女湯覗き見しほうだい」
「なっ!!確かに!!なんて魔法や!しかしそれを一発で引くマーシーが危険やな」
「おい、聞こえているぞ」
その発想はなかったな。よし、頭の片隅に置いておこう。
ジトーとした目でミズリー師匠とルビーナさんが見ていた。
「そ・・・そんなことで使いませんよ!!」
僕はツバメを魔法陣に戻した。今後は今のツバメを意識して呼べるってことか。
「それにしてもーー本当に使えるようになるなんてーー」
「すごいでしょ?私の弟子」
「ミズリーの弟子はーー変な子多いよねーー」
「個性的といいなさい。個性的なのよ」
そんな和やかな2人の姿を見て僕は2人にゆっくりと頭を下げた。
「色々とありがとうございました。これでお別れというわけではありませんが2人のおかげで色々と勉強になりました」
「いつでもまたおいでーー。変わった魔物を使役できたら教えてねーー」
「前にも言った通りにたまに顔出すことだけは忘れないように。それと、これを持っていきなさい」
ミズリー師匠から青い宝石の埋め込まれたシルバーのブレスレットを受け取った。
「これは?」
「魔道具よ。私が作ったもの。私の名前が彫られているわ。一応私の弟子の何人かに持たせてあるものだから出す場所によっては優遇してくれるところもあると思うし」
「ありがとうございます。弟子の証ですか。弟子になって一週間の人間に渡していいものなんですか?」
「日にちは関係ないわ。気に入った人に渡してるものだから。あと、魔道具としては魔力をため込んでおけば魔力の回復にも使えるわ」
「へー、魔力を貯蔵できるってことですね?」
「量に限界があるからマーシーくんの魔力を丸々溜めこむことなんてできないけれど、いざって時のために溜めておけばいいわ」
「ありがとうございます。大事にします」
そして僕たちはミズリー師匠とルビーナさんに礼を言いギルドを去った。
ギルドの並びのホテルに戻り各々自分の部屋で風呂に入り着替えてから3人集合する。
「さてと、ご苦労だったな2人とも」
「せやな、たいへんやったな。帝都とも明日にはお別れかぁ」
「明日の予定としてはここを出てリアに向かうんだが、俺たちと同じように武闘大会からの魔術大会ってのは多いらしい。出場っていうよりは観戦なんだろうがな。あ、忘れてた。フルボッコミーティングーー!イエーーイ!!」
「イエーーイ!」
タカシだけが反応してくれた。
「流石に人目があるからな。移動は馬車になると思う。ちゃんと金を払ってリアまで出ている定期馬車とかがあれば乗ろうと思う」
「馬車かー。なんか冒険っぽくてええな」
馬車酔いがホントに心配なんだよな。
時間は5時をまわったところだ。
ちなみにここまでマサルは一言もしゃべっていなかった。
「さて、それじゃあ予定通り今から南地区へ行くわけだが」僕は視線をマサルに向けた「マサル、どうする?もしもマサルが行かないって言うんなら俺もホテルに残ってもいいぞ」
タカシが、え?いかないの?みたいな顔をしているがとりあえずお前は無視だ。
「いや、もちろん行く」
マサルは真剣な面持ちで答えた。
「よし分かった、好きにすればいい。振られて酒に溺れるのもよし。やけ酒を呑むもよし。自暴自棄になって呑むのもよし」
「あれ?なんだか全部ダメな結果しか見えてこないんですが?」
「気のせいだろ?それじゃあ行こうか」
僕達はホテルを出て南地区へと出かけていった。
道中闘技場もあるわけだが人通りは少ないようだった。昼間のにぎやかさとは打って変わって闘技場はなにもなければただのオブジェだ。
けれど入り口付近にカウンターが設置されているのに気が付いた僕は2人を置いて1人でそこに近づいていった。
「ん?ここは今日の試合の換金所だよ。つってもタカシの優勝に賭けた物好きはここまでたったの6人しかいないが・・・・・・って。ああ!!あの時の金持ちのボンボンじゃねーか!!」
「ああ、これはどうも」
自信満々にズバリ、グースが優勝だって言ってた予想屋じゃねーか。
「あんた確かタカシに賭けてたよな!見る目があるなー、あんた」
僕はタカシの名前の入った木の札を手渡して代わりに金貨25枚と大銀貨5枚を受け取った。
優勝賞金よりも魔族討伐と配当金の方が高いとはこれいかに。
僕は2人のところに戻って合流し、闘技場を迂回し歓楽街へと向かう。




