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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
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タカシであれば決勝戦はこうなる





僕はアルベルトと魔法使い3人を通路に出して扉を閉める


「すみません、少しだけ。少しだけでいいんで2人にしてやってください」

僕はマサルとミレーヌさんを2人にしてくれとお願いした。


「ははは、構わないよ。正直マサルくんが飛び出してくれたのはありがたかった。サイモン選手がなんらかの手段で彼女の動きを封じて弄っていたのは分かっていたからね。試合中だから止めるに止めれず。こちらも申し訳ない気持ちだ」

「アルベルトさん。少し2人だけでお話できませんでしょうか?」

「??構わないよ。それじゃあ後は任せる。彼が出てきたらミラベル選手を頼んだよ」

アルベルトは魔法使いの3人に声をかけると僕と一緒に通路を歩きだした。魔法使い3人の僕を見る目が輝いて見えたが気にしないでおこう。




僕とアルベルトは通路を奥に進み誰もいない階段の踊り場のようなところで足を止めた。

「何かあるのかな?何か要望があればできる限り答えさせてもらうが」

「いえ、お伺いしたいのは・・・『魔族』についてです」

アルベルトの表情が少し強張った。

「魔族・・・・なにか心当たりでも?」

「サイモン選手・・・あれは魔族だと思います。確信は持てませんがそういうのに俺、敏感なんです」

「魔族・・・か。確信は持てないとは言うが君が言うからにはおそらくそうなんじゃないかと思うね」

「魔族の扱いがいまいち分からなくて。存在自体が問題なのか?それともこういった街にはたまにいるものなのか?ちょっと判断つかなかったもので誰にも相談できなかったんですが」

「そうか。よく言ってくれたね。魔族と言えば基本的には悪だ。ただ、話が通じないわけではないし人間を食べるとかそういう危険なものではない。そうだねェ魔族の9割は人間を見れば問答無用で牙を向けるかな?逆に人間の9割は魔族を見れば剣を手に取ると考えていい。お互い存在自体が相いれないんだろうね。実際帝都に入る際に石板で確認しているはずだから帝都に魔族がいるなんて考えられないはずなんだが、巧妙に隠蔽して入ってきたのかな?そうなるとそこまで知識のある厄介な魔族でありここまでなりを潜めていることを考えると何か目的もありそうだね」

「武闘大会の優勝者は国王みずから報酬を渡すんですよね?」

「なるほど。それはなかなかに笑えない話だ。すぐにサイモンの身柄を確保し・・」


僕はすぐに動き出そうとしたアルベルトの腕をとり深々と頭を下げた。

「お願いしますアルベルトさん。大会は中止せずにこのまま決勝戦も進行させてください。それにただの俺の直感だけでサイモンを魔族だと断定もできないと思うんです」

「それはそれでやりようはあるよ。なんらかのマジックアイテムで魔族であることを隠蔽していると考えるならアンチマジックアイテムを使用してもう一度石板でチェックさせることもできるしね」

「すみません、なら言い方を変えます。優勝は必ずウチのタカシがします。だからこのまま大会は続行してください」

僕はアルベルトに真剣な眼差しで訴える。


「・・・・・それは君からのお願いってことでいいのかな?」


あ、意味深な言葉。なんかまずい気がする。

「何かの取引とかには応じませんが、お願いと言えばお願いですね」

「そうか。タカシくんは勝てるのかい?」


「アイツは・・・・絶対勝ちますよ」


「そうか。ならこの話はここで留めておこう。ミラベル選手の件もあるしね。なにより君は信用に値する人物だと僕は考えるよ。貸しの1つくらいは作っておいた方が今後の関係にも良いと思うしね」

「黙っておいてもいいことをわざわざ俺は話したんですよ?貸しにもならないですし聖騎士にもなりませんからね。それでも、何かあった場合の準備と心構えだけはお願いします」


アルベルトはフッと笑うと「やっぱりウチに欲しいな」と呟いた。




それじゃあ決勝戦楽しみにしているよとアルベルトとそこで分かれて僕は観客席に戻った。

僕の席はちゃんと空いたままになっておりどうやら隣のおじさんが見ててくれたようだ。


席について少ししたらマサルが戻ってきた。

「どうだった?ミレーヌさんと何か話したのか?」

「ああ、少しな。マーシーにありがとうって言ってたよ」

「そうか」

いつもとは違った少し真剣なマサルを見て僕はそれ以上声はかけなかった。

マサルを見て周りの観客が少しざわついていたが僕らは気にも留めずに決勝戦を待つ。





広い広い闘技場にゆっくりと司会のおじさんが出て来た。右手にはいつものマイクが握られている。


「さて皆さま大変ながらくお待たせいたしました。只今より決勝戦を開始いたします!!!」


大歓声の中ゆっくりと控室の扉が開き、まずはタカシが入場してきた。


「スピード!パワー!まさに規格外!!こんなルーキーが居ていいのか!!決勝戦が終わるころには彼はこう呼ばれているだろう!格闘王と!」拳を握り唾を飛ばしながらノリノリで叫ぶおじさん。本当に毎回毎回楽しそうだな「武器はその身体!!格闘家として暫定1位は間違いない!これに勝って最強の座をつかみ取れ!!Eランクにして最強の格闘家!!タカーーーシーーーー!!」


大歓声につつまれた会場内。タカシは屈伸をし、腕をグルグルとまわしていた。

表情は真剣だった。お祭り気分もさっきの魔族のせいで抜けてしまったな。



「対するこちらも規格外!!予選一回戦からのデータをすべて確認したところ。なんとここまで、ただの1発も攻撃を受けていないのです!ここまで無傷の完封試合!決勝戦で完全試合達成となるのか!真っ黒の出で立ちの漆黒の戦士!!サイーーーーモーーーーン!!」


こちらも大歓声が響いたがどうやらさっきの試合の冷酷さもありタカシよりは歓声が少なく感じた。


サイモンは特に変わらない出で立ちで黒いローブに黒いマフラー。腰には先ほど使用していたナイフ。そしてただ黙ってタカシを見ていた。



タカシがサイモンに歩み寄り1メートルくらいまで近寄って行く。


周りの歓声に声がかき消されているため聞こえないがなにやら2人は向き合って会話をしているように見える。まぁだいたい何言っているか予想はつくが。




「あの鎧のネーチャンが身動きとられへんのは分かってたやろ?あそこまでやる必要はなかったんちゃうか?」

「・・・・自分より弱い相手をいたぶるのはスカッとしねーか?それが女なら尚更だ。綺麗な顔が歪んでいくのが俺は好きでな」

「今テメーがここで立っていられるのはマサルがあの時テメーをぶちのめさなかったからや。アイツはアイツなりに俺に譲ったんやろうな。せやから今からテメーをぶちのめす拳は俺の分とマサルの分、それにマーシーとミレーヌさんと十兵衛さんと・・・・・まぁめっちゃ重たいから覚悟しろや」

「・・・たかが人間風情が・・・」

「・・・たかが魔族やろ?」

ニタッと笑ったタカシとサイモン。




お互いに距離をとり5~6メートルくらいの距離で対峙し直しサイモンはナイフを両手に構える。


タカシは・・・・・・・オイオイ。あいつは何やってるんだ?

膝を曲げて中腰に構えるタカシ。左手は腰のあたりに。そして右手はその左手に添えるように拳を握っている。

いわゆる・・・・・・居合だな・・・・・・。


「マサルなんなの?あいつバカなの?」

「・・・・・・居合をやりたいとは言ってましたね」

「素手で居合って・・・・・・あそこからどうするんだよ?」

「タカシならあそこから何かやらかしそうですが」



「さあ!!それでは参ります!!第72回武闘大会決勝戦!!ギリギリの限界を超えた闘いを繰り広げられる期待でワタクシ興奮が止められません!!名誉ある最強の座はどちらの手に!!」

両手にナイフを構えるサイモン

居合のまま動かないタカシ



「始め!!!!!!!」



ドン!!グシャア!!!!



・・・・・・・・・・・・おい。



「え??え???」

と、司会のおじさんは目をキョロキョロ。


会場内はシーーーンと静まり返ったままだ。


説明します。


今の立ち位置。試合開始と同時にタカシは現在サイモンの立っていたところに居る。

そしてサイモンは・・・・・・・・・・・・・壁にめり込んでます。


開始と同時に居合よろしく、サイモンの目の前に瞬間移動した(実際は超スピードで接近)タカシは添えていた右手をサイモンの鳩尾に裏拳一発。そして手を元の位置に戻す。

裏拳を喰らったサイモンはそのままぶっ飛んで壁に激突壁にクレーターをつけてそのまま張り付いて口から血を流して失神。まあ一応死んではいないようだ。


開始コンマ1秒で決勝戦が終了だ。


「決勝戦であんなことします?普通」

マサルが呆れている

「盛り上がりもなにもなかったな。流石タカシだ(笑)」



「ん??ん????」

タカシがキョロキョロしている。ちょっと動揺しているようだ。


サイモンにソロリと近寄って司会の人が目をキョトンとさせていたが、一拍おいて

「勝者!!!タカシーーーー!!!!!」


ちょっと間が空いた・・・・・。


そして大歓声だ。


うおおおおおおお!!

何したんだ!!!

一瞬・・・・だと・・・

スゲーー!!なんなんだ!!


そしてタカシはホッとした表情を見せた


「ははははは、何か悪いことしたみたいな顔しているな」

「勝った方が慌ててた感じ・・・・うける」

僕とマサルはクスクスと笑いながらタカシの姿を眺めていた。

まぁ勝つのは分かっていたがあんな勝ち方するなんてな。タカシらしいっちゃらしい。


壁に張り付いたサイモンにはすぐにローブを着た魔法使いが近寄って行き応急手当がなされていた。






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