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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
69/230

ゴッドハンドマーシー





ミレーヌさんの前に立ち魔族を睨みつけるマサル。


あってはならないことだ。


武闘大会。毎年その年一番の強者を決める大会において第三者が勝手に闘技場内に侵入したわけだ。


おいおいおいおい!

なんだなんだ!!

いきなり誰か出て来たぞ!!

アイツ・・・昨日のマサルか!?

試合中だぞ!!


1対1の闘いの最中に横やり入れたわけだからな。最悪この会場内の全員敵にまわす結果になっても文句は言えない。帝都全体、聖騎士やらなにやら全部敵にまわすかもしれないのに。



まぁそうなったら一緒に全部敵にまわしてやるがな。




チラッと控室の窓から見えるタカシの口元が

(チッ、先越された)

と、見えたような気がした。


「ああん?なんだテメーは?今は試合中だろーが?」

魔族は手に持ったナイフをマサルに向けた。

「この人はもう動けねーよ。分かってんだろ?」

マサルは激怒しているようだがその目は恐ろしく冷たい目をしていた。まずいな、きっかけがあればそのまま相手を殺してしまいそうな目だ。

「今からイイトコなんだからどっか行けよ」


あ、ちなみにブラを切り裂かれたミレーヌさんの豊満なバストはマサルの陰になっていて観客席からは見えなくなっている。何人かの男共から「どけよ!」と声が飛んでいる。


控室の窓からは闘技場に出ようとして止められているタカシの姿が目に映った。




ズダン!!


突然だった。突然闘技場に降り立った真っ白な鎧に金髪の髪をなびかせた騎士。


聖騎士団長のアルベルトが闘技場に降り立った。


ア・・アルベルトだ。

聖騎士の団長・・・。

おいおいどうなってんだ?

試合中だろ?


するとアルベルトは剣を抜きマサルと魔族の前に剣を突き出した。

「今は武闘大会の試合中である。にもかかわらず観客の1人が乱入するという事態が発生した。察するにミラベル選手を救おうと侵入したものと見受けられる。よってこの試合はミラベル選手の反則負けとする!!」


そしてマサルを見つめるアルベルト

「神聖なる試合を妨害した君には追って処罰を下す」


アルベルトは次に魔族の方を向き

「というわけでこの試合は君の勝ちということだ。・・・・よろしいかな?」


魔族はアルベルトを睨みつけたまま不服そうな目をジッ向けていた。そしてフンッと鼻を鳴らした。

アルベルトが司会のおじさんに目配せすると魔族の勝利が高々と宣言され魔族はゆっくりと控室へと歩いて行く。



マサルは自分の前掛けをミレーヌさんの胸元を隠すように被せその重量感ある身体を軽々とお姫様だっこをすると

「はやく回復魔法を!!」

「こっちの医務室へ運びたまえ!!」

アルベルトが控室とは別の通路の方へと誘導しマサルはアルベルトと一緒にミレーヌさんを運んでいった。


会場内はザワザワとざわついている。僕の隣のおじさんも「こりゃあ前代未聞だぞ」と腕を組んで難しい顔をしていた。試合中に第三者介入だからな。それがウチの連れだってんだから参ったもんだ。


司会のおじさんが今から1時間後に決勝戦を開始すると宣言した後は今のやりとりについて観客席中であーだこーだと議論している。

まぁアルベルトは中々いい形で試合を終わらせてくれたと思う。そういった点ではマサルが乱入したことは正解だったのかもしれない。





武闘大会控室



控室に入ってきた魔族。入り口付近には十兵衛とゲラハルドに取り押さえられていたタカシの姿があった。


魔族はちらりとタカシを横目に見たが特に気にも留めずにそのまま素通りし奥へと入っていく。その姿をタカシはただ見ているだけだった。


ゲラハルドはタカシを掴んだまま

「ふぅ。殴りかかるかと心配したが」

十兵衛もタカシを掴んだまま

「よく耐えたのう。いや、儂らが抑えておらんかったらどうなっていたことか」


マサルが闘技場に乱入したことに先を越されたと思っていたタカシだったがその後は思ったよりも落ち着いていた。マサルが割って入った時点で特に自分がなにかする必要はないと考えていたようだ。それでも機嫌の悪い表情でその場で立つと咄嗟に十兵衛とゲラハルドに抑えられることになった。間違いなくタカシも乱入するであろうと2人は思ったに違いない。


「十兵衛さん、おっちゃん、大丈夫。俺が手ェ出したらマサルが行った意味がなくなってまうからな。それにもうちょっとしたら俺は遠慮なしにアイツに一発入れれるわけやし」

「うむそうじゃな。後で思い切り一発お見舞いしてやればよい。ついでに儂の分もお願いしようかのう。流石に儂も気分を悪くしたわい」

「まぁ団長さんがうまい具合に納めてくれたな。あのままだったら試合もなにもかもぶっ壊れていたところだろうな」


一息ついてタカシは椅子に腰を下ろした。そして天井を見上げながらただ一言、こう呟いた。



「あとは任せとけ」







観客席で僕は周りの声に耳を向けていると遠くで自分の名前を呼ばれていることに気づいた。

「マーシー!マーシー!」


「なんだよ?」


するとマサルが駆け寄ってくるのが見えた。

やめてください。知り合いと思われるじゃないか。


駆け寄ってきた現在噂の渦中にいるマサルは血相をかえて僕を呼びつけた。

「マーシー頼む!すぐに来てくれ!!」

その真剣なまなざしに僕は返事もせずにすぐに席を立ちマサルに連れられて建物内へと入っていく。



関係者以外立ち入り禁止の通路を越えてベットや薬品入りの棚のあるどうやら医務室のようなところに案内された。


「やぁ来たかい」

そこにはアルベルトがベットの脇に立っていた。

そしてそのベットにはフルアーマーの人物、ミレーヌさんが横になっておりさらに白いローブを着た魔法使いが3人ミレーヌさんに向けて魔法を行使していた。おそらく回復魔法をかけているところなのだろう。


ミレーヌさんの表情は真っ青だった。唇が痙攣しているように震えて見える。殴られた顔は痣になっており鼻も少し曲がって見える。胸元にはマサルの掛けた前掛けが乗せられていた。ステータスを確認するが未だ麻痺毒状態で少しづつHPが減少している。残りはほんの1割ほどだ。


「ミレ・・・ミラベルさん回復しないんですか?」

僕は目の前に立つアルベルトに聞いてみる。


「ああ。さっきまでは苦悶の表情だったんだが回復魔法をかけてやっと表情は楽になったが回復までに至らないな。解毒魔法も試したがさっぱりだ」

「で、俺を呼んだってことは?」

「マサルくんが君ならって言ってね。回復魔法も使えるらしいね?」

僕はチラリとマサルを見た。こちらの手の内をそうやすやすと話すなんて、と思ったが今はそれどころではないわけだしな。

「大丈夫でしょうか?私たちでもこの現状を維持するので精一杯なんですよ?」

白いローブの魔法使いの1人がアルベルトに声をかけてきた。

「さて、どうかな?しかしまぁ、彼は大魔法使いミズリーのお墨付きだからね。試す価値はあるんじゃないかな?」

「ミズリー様の?本当ですか!?」

その魔法使いは今度は僕に話しかけてきた。

「お墨付きって・・・ただの弟子ですよ。けれども呼ばれたからには最善を尽くしますよ」


僕はミレーヌさんに近づいた。

このままなら確かにあと数分しかもたないな。


「皆さん、回復魔法はそのままかけていてください。マサル、とりあえず鎧は全部剥ぎ取れ。安静な状態にしたほうがいい」

「お・・・おう」

「裸を見るなよ」

「マーシー、これは事故だ」

「後でミレーヌさんに言ってやろ」


マサルは両腕、両足、腰の部分の鎧は力任せに剥ぎ取り刺さっていたナイフもゆっくりと抜き取って鎧は地面にポイ。ベットにミレーヌさんを寝かせた。うまい具合に前掛けはミレーヌさんの胸元を隠すようにかけられている。


ちっ、うまく見えないようにやりやがった。


さてと、やるか。


ミズリー師匠曰く


魔法は魔力量によって効果は変わる

同じ魔法を使うにしてもMPを1使った場合とMP5を使用して魔法を使った場合ではもちろん威力は上がる。まぁ、そう簡単に魔力を多く使用して威力を跳ね上げることは普通できないが。


2人が同じ魔法を行使したとしても個人の持つ魔力の多さによって威力は変わる。

僕のファイアーボールがバカでかいのはこれによるものだ。

それはもちろん回復魔法にも影響する。


回復魔法のヒールと状態異常回復のキュア。僕の魔力量でさらに目一杯魔力を込めて魔法を使えば並みの魔法使いとは比べ物にならないほどの回復効果を出せるはずだ。


この麻痺毒っていう状態異常が特殊な方法でしか回復できないような代物でなければなんとかなるはず。


「いきます。キュア!!」

僕はミレーヌさんの腹部に手をかざしながら状態異常回復魔法をかける。魔力も遠慮せずに全開で放出だ。ミレーヌさんの身体が大きな白い光に包まれて発光している。


みるみるうちにミレーヌさんの表情は真っ青だったものから血色を取り戻していく。

そして、ステータスから麻痺毒は消え去った。


僕はキュアの魔法を解除し

「ハイヒール!!」

今度はヒールよりも回復力の高いハイヒールを唱える。

あ、詠唱なしでやっちまったが・・・・大丈夫か?周りの魔法使いはキュアの時点で口をあんぐりとさせていたからもう遅いかもな。

ミレーヌさんをキラキラ光る光が覆うと肩やわき腹にあった刺し傷が塞がっていくのが確認できた。そのまま僕は右手をミレーヌさんの顔に持っていき数秒すればミレーヌさんの顔にあった痣もなくなり曲がった鼻や折れた歯まで綺麗になっていった。ミレーヌさんのHPが6割くらいまで回復したのを確認するとすぐに魔法は解除し

「ふう。これでもう大丈夫ですね」

「ナイス、マーシー。流石!」


アルベルトは目を見開き、魔法使いの1人が

「せ・・・聖女さま・・・・」

いやいや、僕男ですよ。


「まさに奇跡の所業か。神官や巫女でもこうはいかないだろうね」

アルベルトは驚いた顔で僕の肩に手を置いた。

「回復魔法、結構得意なんですよ(笑)」

うん、やりすぎたかな。笑っとけ笑っとけ。


「流石ミズリー様のお弟子さんですね!」

はい、まだ弟子になって2~3日程度ですが。



ミレーヌさんの目がゆっくりと開かれるのが目に入った

「おはようございますミレーヌさん。怪我の具合はいかがですか?」

「マーシー君に・・・・マサルちゃん・・・・。うん、大丈夫そう」

「そうですか、良かった。じゃあアルベルトさん、皆さん、行きましょうか」

僕はそう言って魔法使い3人とアルベルトを部屋から連れ出した。もちろんマサルを残してだ。



「マサル、先に席に戻ってるからな」






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