そんなマサルが僕は大好きなのです
ロボの兜を剥ぎ取ったマサルは真顔で固まっている。
今さっきまでバチバチやりあっていた、いや、バックドロップをかました相手がつい先日訪れたクラブ『楽園』で一緒にお酒を呑んだ胸中の女の子であるミレーヌさんであった。
おおおおおおお!!
すげー美人!!
女だったのか!!
会場内はザワザワとしている。
ミレーヌさんは一瞬顔を隠そうとしたがすぐに吹っ切れたかのように膝をついた体勢からマサルに蹴りを放った。
マサルはそれを背後に跳んで躱す。
「ミ・・・ミレーヌさん!!どうしてこんなところに!」
ミレーヌさんは後頭部を押さえながら答えた。
「どうしてって?もちろん優勝するためね」
マサルはあたふたしている。
好きな女の子にバックドロップだからな。今のマサルの気持ちを考えたら同情するな。
ミレーヌさんはサッと大剣を拾いマサルに対して横なぎ。マサルはもちろんこれを躱すがミレーヌさんの攻撃は止まらない。右に左に重そうな大剣を振り、蹴りも交えてマサルに襲い掛かる。
「ミ・・・ミレーヌさん!ちょ・・ストップストップ!」
マサルは受け止めもせずにすべてを躱し続ける。
「何?私が女だから攻撃できないって言うタイプなの?」
ミレーヌさんは大剣を構えてマサルに視線を向ける。
そしてマサルはなにやらこちらに視線を向けた。
おいおい、そんな怖い顔で睨みつけるなよ。僕がロボの中身がミレーヌさんだって言ったとしてもどうしようもなかっただろうが。
「ミ・・・ミレーヌさん。は・・話し合いましょう」
「マサルちゃん、男女差別なんて・・・嫌よ」
ミレーヌさんはさらに攻撃をし続けた。
こういった場合、タカシならどうするか。
アイツなら相手が女性であった場合、基本的に暴力は振るったりはしないが、その相手にしっかりとした覚悟があるというのなら、本気には本気で答える。予選で見せたあのアマゾネスさんへの対応がそれだ。
こういった場合僕ならどうするか。
もちろん僕も基本的には女性に暴力は振るわない。予選で木刀をフルスイングしたがもちろんダメージなんて通らないと分かっていた所業だ。多分僕ならなんとか暴力を振るわずに自分が勝つことができるように試行錯誤するだろう。魔法が使えれば無力化するんだがこの大会ならどうしただろう・・・・・・うん、思いつかないな。まぁ他人事だしな。今回はマサルが大変なだけだな。
そしてマサルならこういった場合どうするか
「俺の負けだ!!勝てるわけあるか!!!」
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
会場が静まりかえる。
観客も司会の人もミレーヌさんもただ驚いてマサルを見た。
「俺は女は絶対に殴らねーー!!それが惚れた女だったらなおさらだ!!!鎧の中身を見ちまったからにはもう俺からは攻撃できねーーよ!だから俺の負けだ!!」
「甘い男ね」
ボソッとミレーヌさんは呟いた。
「マ・・・マサル選手降参!!勝者はミラベル選手!!!」
マ・・・・マジかーーー!!
降参だとーーー!!
男らしいっちゃ男らしいが
甘い、甘すぎるゾ!
色々な意見が飛ぶが、マサルはやっぱりマサルだったな。
マサルは絶対に
女の子は殴らないよ。
マサルは膨れた顔で控室へと戻っていった。
ミレーヌさんはそんなマサルの後姿を見て少し寂しそうな目をしていたような気がした。
大会控室
「マサル。残念やったな。まぁしゃーないな」
「そう、仕方がない。焼き鳥10万本とミレーヌさんを天秤にかけたら尋常じゃないくらいミレーヌさんに傾いただけの話。それよりも俺は今からマーシーを殺しにいってくる」
「はははは、マーシーは知ってたんやろうな。だからロボに勝たへんかったんやろーしな」
「マサル殿、おみごと。おなごに手をかけることをよしとしないその男気。天晴であるな」
「ははははははは、それでもバックドロップはしとったけどな(笑)」
「謝りたい。それはマジで謝りたい」
「それでは皆様!!本日のところはこれまでといたします!!明日のこの時間!ナンバー1の決定する瞬間をお見逃しなく!!また明日お会いしましょう!!」
本日の日程はこれで終了。
明日に備えて選手たちは傷を癒し休息をとる。
僕は会場を出て入り口でタカシとマサルが出てくるのを待っていた。
!?
むっ、殺気。
「マーーーーーーーシーーーーーーーーー!!!!」
ガキン!!
と、マサルのボディブローが僕のガードに直撃する。
結構本気で殴りにきたな。
「知ってた?知ってたよな?知ってて俺に伝えなかったってこと?マジ?なぜに?バックドロップした時には心で笑ってた?」
「待て待て待て待て。教えたとしても結果は変わらなかっただろうが。兜剥いで顔晒す前に勝てなかったマサルが悪い」
「いやいやいやいや、そういえば兜捕れって言ってたおっさんってマーシーの横に座ってなかったっけ?」
僕は目を逸らした
「ほらほら!!絶対確信犯!!マジで怖い!何よ!何考えてる!」
「しゃーないしゃーない。明日はマサルの代わりに俺が優勝したるからもう諦めや」
「はっはっはっは、儂の前でそれを言うかの?」
「あ、十兵衛さんお疲れさまでした。流石でしたね。あの居合は素晴らしかったですね」
準決勝出場のタカシと十兵衛、そして先ほど盛大に降参をしたマサルの3人が揃っているため周りの目を集めてしまっていた。
「それでは儂はもう行こうかのう。タカシよ、明日は楽しみじゃな」
「ああ、十兵衛さん。ほなまた明日」
十兵衛さんは1人去っていった。
それじゃあ僕らも行きましょうか。
「マサル。今日は肉にしよう。それに酒も付き合ってやるよ。タカシは明日もあるからほどほどにな」
「げっ!!いけるっていけるって!多少呑んでも明日に影響なんかせーへんて!!」
「そうだな。タカシは明日があることだし。今日はマーシーと呑み明かすか!!マーシー!!今日は付き合え!!」
あ、そういえば僕の懐にはあと金貨が2枚ほどしかないが・・・・流石に大丈夫か。
僕達は3人肉と酒を求めて飲食店街へと足を向けた。なんだかんだ時間は5時前であったため早めの夕食をとりタカシは明日があるため早めに今日は就寝しよう。
・・・・・・・・・・なんて考えて店に入ったがマサルに付き合わされてジャンジャン呑み、結果店を出たのは11時をまわっていた。
タカシは途中途中しれっとビールを注文していたがなんとか3杯くらいに抑えさせてあとはサイダーのようなジュースを飲ませていたがマサルに付き合った僕は頭がガンガン響く状態でなんとかホテルまでたどり着いた。
部屋に入ると「もうだめだ」という感じで服装もそのまま風呂も入らずにベットに横になり夢の中へとダイブだ。
フロントにちゃんとモーニングコールだけはお願いしたので明日のことは明日考えよう。
誰かに肩を揺さぶられている。
う・・・うーーん。
目を覚ますとそこにはいつもの女の子の顔があった。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
「それでは今日も良い1日を」
「あ、すみません。昨日は襲撃はなかったですか?」
「はい。ございませんでしたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
そして笑顔で退室していった。
襲撃は無しか。
勝ち残らせたい選手が居て、それにはタカシマサルが邪魔だったと考えると今残ってる選手の関係者ではなかったってことかな。多分優勝候補のどいつかの差し金だったのかな?
さてと、風呂に入るか。
ひとっ風呂浴びてアイテムボックスからオレンジジュースを取り出して飲み干す。
昨日の酒の影響か、少し頭が重いな。
さてと武闘大会も今日でおしまいだ。
タカシ、十兵衛さん、魔族にロボ(ミレーヌさん)
魔族が全然目立ってないのが少々気になるところだな。何か出場する目的でもあんのかね?
そいうえばミレーヌさんって身長は確かに高かったが2メートルもあったかな?あのロボは厚底なのか?
ドンガチャ!
ノックもせずにマサルが入ってきた。
今日は冒険者風の格好ではなくただのグレーのTシャツに前掛け姿だ。
「マーシー起きて・・・・るな。早めに行こうぜ。会場の前に屋台あったし」
「ああ、そうだな。良い席に座りたいしな」
するとタカシもノック無しに入ってきた。
「マーシーマーシー。俺刀欲しい」
「テメーに居合は無理だ。やめておけ」
「ええ!?なんで居合したいって分かんの?」
「だいたい予想できるわい」
それじゃ早いけど行きますか。
僕達は会場へと向かった。




