試合前のアナウンスって前もって考えてんのかな?アドリブならすげェ
武闘大会二回戦。
残った選手は8人。
一回戦で優勝候補グースを瞬殺したタカシ。
両腕にごつい手甲をつけた大男グールベル。
1人残った優勝候補黒剣のギル。
鮮やかな居合をみせてくれた十兵衛さん。
まだ実力を全然出していない魔族。
ハゲールという禿げていないおっさん。
こちらも優勝候補を撃退したマサル。
そしてロボだ。
二回戦までを今日やってしまい、残りは明日に続きをするってことだが、今日のみどころはマサルとロボの一戦くらいだな。
一回戦終了後1時間の食事休憩をはさみ今から二回戦に突入する。
「それでは皆様!これより二回戦を始めます!!」
わああああァァァァァ!!
ぶっ殺せ!!グールベルー!!
やっちまえーー!!
優勝候補が減っても歓声は同じように響く。優勝候補を倒して大半の馬券を紙屑にしてしまったタカシにはある程度の罵声が浴びせられていた。
「一回戦で優勝候補グースを撃破!もうルーキーだと侮ることはできない!!一躍優勝候補に躍り出たタカシーーー!!」
わああああァァァァァ!!
死ねー!!
金返せーーー!!
人気はないようだ。うん。
「なんと二回戦も格闘家同士のバトル!!その拳で砕けぬものは無し!パワーなら帝都1は譲らない!グールベルーーー!!!」
やっちまえーーーー!!
グールベルー!!
生かして帰すなー!!
暴言が多くなってきましたね。僕の右隣りのおじさんも一緒になって叫んでいる。
「さあ、格闘家の女神は一体どちらに微笑むのか!!始めましょう!二回戦第一試合!始め!!!」
格闘家の女神ってどんなんなのだろうか?ものすごくムキムキのマッチョを想像してしまう。
ジリジリと両腕にごつい手甲をつけたグールベルがファイティングポーズのままタカシに近づいていく。一回戦のタカシのカウンターを見て一気に距離を詰めるのは危険だと考えているのだろう。
タカシはそちらに目を向けたまま左拳を握り右手はブラブラさせたまま顔には笑みを浮かべている。
ジリジリジリジリと距離は詰まっていく。まだどちらも動かない。2メートルくらいまで近づいた。もうお互い一歩で攻撃の届く距離だ。
厳つい顔をしたパイナップル頭のグールベル。額には汗が噴き出ている。
ほら、いけ、パンチだ、届くぞ、いけ。
グールベルが動いた。
身長の高いグールベルが打ち下ろしの左ジャブをタカシの顔面めがけて放つ。
顔の前に用意していた左拳でタカシはそのジャブをガードするがグールベルの綺麗なワンツーの右拳がタカシのボディを捉える。
ドン!!!
二ヤッと笑みを浮かべたグールベルだったがその顔はゆっくりと驚きの顔へと変わっていった。
打った感触は良かった。
ガードもない腹部への一撃。
本来なら内蔵破裂で悶絶もの。
しかしタカシはケロッとした表情でグールベルを見ている。
「悪いな、パワーでも一番は俺や」
ドン!!!
グールベルの身体が宙に浮いた。100キロを超える自分の身体が打撃で宙を浮かされるなんて初めての経験だった。タカシの拳がグールベルの腹部にアッパーカット気味に入りグールベルは、くの字になりながら宙を舞う。地面に背中から落ちるとそのまま足をバタバタさせながら悶絶している。
同じようにボディを打ってこれだけの差を見せつけられたグールベルは悲壮の顔で腹部を押さえながらタカシを見た。
「ま・・・まいった」
「しょ・・・・勝者!タカシーーーー!!!!」
大歓声が巻き起こる。
観客もバカではない。タカシの強さにはもう十分に気づいている。グースを上回るスピードで瞬殺し、グールベルの拳を受けても無傷でいられるその超人的な強さ。
ここに集まった観客は強さと強さのぶつかる試合を楽しみにしていたものが大半である。その答えは今鳴り響く大歓声で十分だ。
圧倒的強さで相手を地に伏せるタカシに盛大な歓声が送られている。賭けていた選手が敗れて悔しく思うものも多いがそれ以上に多くの観客がタカシの強さに見惚れたようだ。
自身に贈られる歓声に少しビックリした顔をしたタカシは少し笑顔になってそのまま控室へと入っていった。
控室の入り口付近でタカシは十兵衛さんとすれ違う。
「おみごと」
と、十兵衛さんは一言。
「次の準決勝めっちゃ楽しみやわ」
と、タカシも一言。
続く第二試合。
優勝候補黒剣のギル。そして十兵衛さん。双方が闘技場の真ん中で対峙する。
「刀と戦うのは初めてだ。先ほどの試合も見事だったな」
「いやいや拙者などまだまだ。黒剣のギル殿、話に聞くギル殿と剣を交えれるとはこれはありがたい。目一杯胸をお借りしよう」
「フン。胸を借りるという殺気ではないがな」
40近い十兵衛さんが20代前半の若者に胸を借りるというセリフになんだか違和感を感じたが、十兵衛さん的に言う挑発なのかな?
ギルは黒剣を抜き右手に持ち剣先を十兵衛に向ける。
十兵衛さんは刀は鞘に納めたまま右手は刀へ添えた。
「さあそれでは二回戦第二試合を行います!!今大会唯一の刀使いがここまでの快進撃を見せる中最強の剣士はどう出るのか?帝都最強の剣士黒剣のギル対!!それに対するは華麗なる刀技を見せる十兵衛!!それでは・・・・・はじめ!!!」
開始の合図後も2人は動かない。
ギルは身長よりも少し短いくらいの真っ黒な剣を十兵衛に向けたままだ。服装は軽装でグレーの胸当てをつけたくらいで全身動きやすそうな服装だ。
一回戦の十兵衛さんを見たらそんな簡単に踏み込むのは流石にできないか。
対する十兵衛さんも居合の格好でピクリとも動かない。
さて、どっちが先に仕掛けるかな?
10秒、20秒、30秒、観客も固唾を飲んで2人を見つめている。
先に動いた方が負けるってわけじゃないけど2人とも相手に合わせた剣術を使うってことなのかな?
ここで片方が動いた
「ふむ。このままでは時間がただ過ぎていくだけかのう?」
十兵衛さんが居合の型を崩しフウと一息ついた。
対するギルは虚を突かれたようだが剣先は十兵衛さんに向けたまま動かない。
十兵衛さんは腰の鞘から刀を抜き、右手に持ったままスタスタとギルの方へと歩を進めた。
ギルは目を見開き剣を握る右手に力が入る。
1歩2歩とギルに近寄り、もう攻撃の届く範囲に十兵衛さんが入ると思われた時に流石にギルは動いた。
シュシュッと2回3回と黒剣を突き出し十兵衛さんに襲い掛かるが十兵衛さんは右手に持った刀でキンキンッとその剣をはじく。
2人とも動かざるを得ない状況になりギルは左に移動しながら大きく黒剣を横なぎに払う。
十兵衛さんはスッと体を後ろに反らせてギリギリ当たらない位置で剣をやり過ごすと刀を地面に当てながらそのまま振り上げた。
「!?」
刀の振り上げと同時にギルには大粒小粒の石や砂が向かってくる。黒剣を持った右手とは反対の左手で目の辺りを防御するとその瞬間に飛び込んでくることを予想したのだろう、右手の黒剣を左に右に威嚇のように振り回した後十兵衛さんの体勢を見て目を見開いた。
居合の構えだった。
ギルは気づくと同時に右横腹に衝撃を感じ大きく吹き飛ばされる。
ドザザザザザーー
肩から地面に落ちたギルは黒剣は手放しておらずすぐさま膝をついた体勢で黒剣を構える。
が、すぐに目の前に居た十兵衛の刀が下から上に振り上げられるとその黒剣は大きく跳ね上がりカランカランと地面に落ちた。
刀をギルの目の前に掲げて十兵衛さんが言った
「もうよいかな?」
「参りました」
そして大歓声だ。
「勝者は十兵衛―――――!!黒剣のギルをなんと撃破――――!!!」
「ここが戦場であったなら俺は死んでいたのか」
横っ腹を打ったのがみねうちだったな。確かに胴体の上半分と下半分がサヨナラするところだったな。
「まぁ年寄りの経験の差じゃな。あと5年も研鑽すればギル殿なら儂くらいすぐに追い抜けるじゃろう」
「フッ、5年も差はあるということか。それは流石に勝てないか」
十兵衛さんはギルに肩を貸し黒剣を拾って2人は控室へと入っていった。




