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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
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優勝候補と呼ばれるヤツをひれ伏すのはなかなか気持ち良さそうだ





『それでは只今より!第72回武闘大会を開催いたします!!』




お、やっと始まったか。

広いグラウンドにスーツっぽい姿のおじさんがマイクを手に大会の開催を宣言した。

マイク?マイクだと?どうやって音を出してるんだ?魔法か?魔法なのか?



「それでは只今より本選出場者の入場です!拍手を持ってお迎えください!」


司会のおじさんが右手を大きく振りかざすと控室の大きな扉が開いて順番に選手が入場してくる。


トーナメント表の順番通りに入場のようでタカシが先頭でそれに並んで他の出場者も出てくる。


ワアアアアアアアァァァァァァ!!!

パチパチパチパチパチパチ!!

割れんばかりの大歓声だ。観客席は満席でおそらく5千人くらいは入っているだろう。

横に居るおじさんも大声を上げている。


タカシを端にずらりと16人が並んでこちらとは逆側を向いている。その方向にはトーナメント表があり、その上段には貴賓室のようなガラス張りの観客席が並んでいた。その中央に位置するところに他の客の入っていないスペースがあり豪華な椅子ひとつ。その脇には聖騎士団の団長と副団長が並んでいる。

その豪華な椅子に座るのは綺麗に整えられた口髭に王冠。50歳くらいの少し強面のおじさんだ。あの人がこの国の王様なのかな?


「さぁ!!優勝者にはルーシア王直々に優勝賞品が贈呈されます!!この名誉を受けられるのはこの中のたった1人!!皆さまの正々堂々と、そして熱い闘いを期待しております!」


ワアアアアアァァァァァァァ!!!!(大歓声)


「それでは出場者の紹介をさせていただきます!!まずは一回戦第一試合!初出場であり、まだEランクの冒険者でありながら数ある出場者を撃破。昨年の本選出場者も撃破したその実力は本物です!期待の新人タカシーー!!」


タカシは紹介と同時に右拳を天にかざした。

パチパチパチパチ

拍手はまばらだ。

スッとタカシは突き上げた拳を下した。

横で見ていたマサルが笑いを我慢している。


「今大会大本命が早くも一回戦に登場だ!そのスピードは今大会一番と名高い!剣?槍?そんなものは必要ない!この拳が最強の武器だ!全てをその拳で粉砕する、鉄拳のグーーースーーーー!!!」


ワァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!


タカシの時とは打って変わって大歓声が響き渡る。


それにしてもあの司会の人、ノリノリだな。




順番に16人全員の紹介をハイテンションのまま続けた司会のおじさん。

闘技場内は十分に温まった状態でこのまま第一回戦に突入だ。他の選手はそろって控室に戻っていき、その場にはタカシと鉄拳のグースの2人だけが残った。

鉄拳のグースはさっきからずっとタカシを睨んでその視線を全く外さない。

ああ、控室で何かあったんだろうな。大体予想はできる。



闘技場の中央にタカシとグースの2人が5メートルくらいの距離を空けてお互いに向き合った。


「覚悟はいいだろうな?このガキが。死ぬまで殴り続けてやる」

ガンガンと拳と拳を打ち付けるグース。メリケンサックみたいなもんかな?金属製の薄手のグローブを着用している。タカシにも買ってやろう。


「マーシーに本気でやってええって言われてるけど殺してもうたらあかんらしいから、まぁ適度に手加減はしたるわ色黒マッチョくん」

手をブラブラとさせながらタカシは相手を苛立たせるような笑顔をグースに向ける。



「さあ!それでは一回戦第一試合を開始します!今大会優勝候補と名高いグース選手に対してどこまで食らいつくことができるのか!駆け出しの冒険者タカシ!闘いの神はこれが見たかったのか!両者ともに拳を武器とする格闘家同士の闘いです!武器を持たず肉体を極めた男同士の殴り合いに私も試合前から興奮が抑えられません!!」

本当にこの司会はノリノリだな。


グースは前傾姿勢でタカシを見据える。タカシは笑顔でそれを見返している。特にファイティングポーズをとるでもなく手は無造作にブランとさせている。


「それでは始めましょう!!一回戦第一試合!!!!!始めェ!!!!!!」



開始と同時にグースが一直線にタカシに突進。スピード定評があるように、ものの1歩2歩で瞬時に間を詰める。



ズガン!!!!!!


何が起こったのか。


グースがうつ伏せで地面にたたきつけられそのまま動かなくなっていた。



・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


シーーーーン。


場内が静まりかえっている。


「おっちゃんおっちゃん(司会)もう終わりやわ」

マイクを持って放心状態の司会にタカシが声をかける。はっと司会のおじさんはグースに近づいて顔を覗き込み高々と声をあげた。


「しょ・・勝者タカシ!!!」


・・・・・・・・・・。


うおおおおおおおォォォォォォォォォ!!

大歓声が響き渡った。

「なんだなんだ!!」

「グースが負けたーー!!」

「一体何したんだ!!」

「うわああああ!!何してくれてんだ!」

「急に倒れたぞ」

「俺の大銀貨―――!」

「おおおお!すげえ!」



タカシは意識のないグースを見下ろしている

「残念。5秒でも3秒でもなく、1秒でエンドやったな」

そうしてタカシは控室へと下がっていった。





闘技場控室



「いえーーい」

「へーーい」

タカシと焼き鳥を右手に持ったマサルがハイタッチをする。


控室には大きなガラス張りの窓が設置されておりそこから試合会場は見えている。もちろん全員が試合を目にしてタカシへと注目が集まる。


「なんというか、空いた口が塞がらんな」

十兵衛さんが声をかけてきた。

「突進してきたグース殿も速かったが、その倍のスピードで、あれは掌底だったか?」

「ああ。思ってたより速かったから合わせれるか分からんかったけど顎に一発な。拳やったら殺してまいそうやったから掌底一発」

「もぐもぐ、そしてひとりバク宙。グルン、ビタン。ごくん。あわれ瞬殺、フラグ立てすぎでしたね、あの黒いのは」

「カウンター一発。あの相手にああも簡単にやってのけるとは恐れ入った。これでタカシも優勝候補の一角ということじゃな」




「おいおいグースに勝っちまうとはな」

頭を掻きながらゲラハルドが近づいてきた。

「強いとは思っていたが予想以上だな。観客の3分の1くらいはこれでお前を恨んでるかもな、はははは」

「グースに賭けてるってヤツはそれだけ多かったってことか?そんなんこっちは知ったこっちゃないけどな」

「俺も流石に勝つとは思ってなかったよ。たぶんこの控室にいるヤツのほとんどがな」

「そういう期待を裏切るんはメチャクチャ気持ちええな」



そして次の選手が呼ばれ両腕に大きな手甲をはめた大柄の筋肉質の男と背丈くらいの大きな剣を持った鎧姿の若い青年が闘技場に出ていった。二人ともタカシとすれ違う時にチラリと視線をタカシに向けるがタカシは何も言わずにただ笑顔で返すだけだった。


「さぁ、タカシの次の相手になるわけじゃからな。見学しておこうか」

タカシとマサルは十兵衛さんとともに窓から第二試合を観戦する。





「さぁそれでは!一回戦第二試合を行います!去年は予選止まりだった剛腕のグールベル選手!パワーなら今大会1、2を争うハードパンチャーです!対するは若干16歳と今大会最年少のミスマル選手!自分の背丈とほぼ同じ大きさの大剣を自由自在に操るそのパワーとスピードは脅威です!」


2メートル近い大柄のグールベル、圧倒的な大きさの大剣を上段に構えたミスマル。お互いに闘技場中央で睨みあう。


「それでは!一回戦第二試合!!始め!!!」


先に仕掛けたのはグールベル。一直線に直進し、一気に間合いを詰める。ミスマルはそのまま素直に突進してきたグールベルに対して大剣を振り下ろすが、これをグールベルは横に跳び躱すと拳をミスマル目掛けて繰り出す。

が、それよりも早く打ちおろした大剣を横なぎにグールベル目掛けて切り込む。


ガキイイン!!


グールベルの左腕の大きな手甲と大剣が接触し、お互いバランスを崩す。


あのでかい大剣を打ち下ろしと同時に横なぎに仕掛けるなんて大した技術だな、それを瞬時に防いだグールベルってのもなかなかやる。


どうやらスピード自体はグールベルに分があるようでミスマルの懐に入ったグールベルの拳がボディにめり込むと後は動きの鈍ったミスマルは防戦一方でそのままグールベルの勝利となった。


「勝者グールベルーーー!!」


歓声が響き渡る。


グールベルはそのまま控室に入っていったがミスマルは動けないようで魔法使いの人が回復魔法をかけながら兵士っぽい人が担いで控室へ運んでいった。


一発目のボディで骨が何本かイッてたみたいだな。グールベルねェ。


タカシは次も楽勝そうだな。




一回戦は粛々と進んでいく。



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